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「ま、まさか! ちょっと待ってくれ!」


 やれやれとお姉さまが携帯を下げた。


「つばめが言いかけたことが分かった気がするわ」


 あいつが?


「――あなた恋が怖いんじゃない?」


「こ、恋が怖いって!? オレが!? まさか! オレはあいつに、こ、恋してるってのに!」


「正確に言うと今の関係が壊れるのが怖いんでしょ」


「そ、そんなことは」


「ない? 本当に? だとしたら、今まで彼との仲が進展しなかったのはなんで?」


 気にしてることをずかずかと踏み込んでくる。


 お姉さまじゃなかったら殴っていたところだ。


「だからこそ、ここで関係を進展させておきましょ」


 再び携帯に耳に当てる。


「ああ、ごめんなさい。あなたの師匠よ」


 師匠……やっぱり義則か!


「え、どうして電話番号を知ってるか? 師匠なんだから当たり前でしょ」


 ま、まさか!


「ところで義則、あなたに聞きたいことがあるの」


 このタイミングで義則に何か聞きたいことなんてあるのだろうか。


「あなたの幼馴染ね。彼女のことどう思ってるの?」


「お、お姉さま!?」


「彼女ね。あなたのこと好きなの」


「お姉さま!」


 もはや悲鳴だった。


 オレは慌ててお姉さまの携帯を奪おうと手を伸ばした。


 しかし、お姉さまは身を翻してオレの手から逃げた。


 酷すぎる!


 告白はオレが自分の意志でやることだ。


 それなのに!


「酷すぎ――」


「え、実は俺も――」


 思わず動きが止まってしまった。


 う、嘘だろ。


 お、俺も!?


 え、え、ええええええ!?


 心臓がばくばくと動く。


 同時に意識が遠くなっていく。


 駄目だ。


 続きを……続きを聞くまでは。


 お姉さまの唇が動いた。


 しかし、それよりも早くオレの意識は消えた。




 全く、困ったことがあるとあの子はすぐ寝る。


「翼は眠ったようです」


「でしょうね」


「……お姉さま、あまりからわないでください。その携帯、つながってませんよね」


 お姉さまが軽く舌を出した。


「あら、単なる実験よ。それにしてもよくわかったわね」


「お姉さまの考えることですから」


「あら、翼はわからなかったのに」


 わたくしと翼ではお姉さまのことを考える比率が違う。


 翼は義則に告白する手段としてお姉さまに従っているだけだ。


「それであなたはどうなの?」


「もちろん、わたくしの好きなとき代えられます」


 だって、わたくしは翼なんかよりも遥かに優れている。


「さすがね」


 お姉さまに褒められた!


 それだけで最高に気持ちいい。


「は、はい!」


「じゃあ、こういうこともできるのかしら。あのね――」


 お姉さまの言葉は到底納得できないものだった。


「お姉さま、できるといえばできますが」


 正直やりたくない。


「あなただって雷門と戦いたいんでしょ?」


「戦いたいといえば戦いたいです」


 だけど、その方法は嫌だ。


「ならいいじゃない」


 お姉さまの瞳にははっかりと面白そうという感情が浮かんでいる。


「……お姉さま、わたくしはわたくしとして雷門と戦いたいのです」


 ささやかな反対。


「そう、でも、それはそれとして。私はあなたたちが二人で戦うところが見たいの」


 お姉さまが目を輝かせた。


 やはりお姉さまの気分次第か。


「だって、そうでしょ。二つの人格に同じ体。どういう戦い方になるか想像もつかないわ」


 短い付き合いだが、こういう面白そうなことは絶対に曲げないとわかっていた。


「なら、お姉さま、わたくしも条件があります」


「何かしら」


「それは――」


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