オレの敵
どこの学校も校舎裏は静かなものだ。
建物の裏という雑草が生い茂って何もない場所であることが原因だろう。
「ここなら当分は二人きりよ」
お姉さまと対峙する。
返答によっては、もう姉と呼ぶこともなくなるだろう。
それほどの覚悟だ。
「どうして義則を戦わせた?」
「あら、彼が望んで戦った結果よ」
お姉さまは変わらず飄々としていた。
「それは知ってる」
「なるほどね。つばめから聞いたのね」
「あいつは……義則はあほで変態で犯罪者予備軍というか犯罪者といっても過言じゃない」
「散々ね」
「エロい女がいるという噂だけでアメリカまでいったことがある」
「国境を越えてまで探してたの?」
「『雨ニモマケズ
風ニモマケズ
エロ本ヲサガシモトメル
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ』って言ってたよ」
「役に立たない宮沢賢治ね」
「でも、優しいんだ」
「別に優しいからってそれだけのマイナスがプラスにはならないわよ」
そう言われればそうだけど。
「本当は戦いなんて嫌なんだよ」
お姉さまはため息をはいた。
「……つまり何が言いたいの?」
「あんたなら戦うことをやめさせられただろ」
「つまり、面白いからそのまま戦わせたかも、ということね」
「どうなんだ? 返答によってはただじゃおかない」
緊迫した雰囲気が張り巡らされた。
知らず知らずの内にオレは拳を握っていた。
お姉さまも今までの余裕そうな態度を改めて、真面目な顔で見つめた。
「……結論からいえばそうよ」
「そう、か」
思わず天を仰ぎ見る。
なら、答えはひとつしかない。
「世話になったな」
拳を構える。
ここからお姉さまはオレの敵だ。




