ボクサー
「え、ええええええ!? ま、まじで!? 『昨日から体が火照って困ってます』だって!」
「耳も悪いなんて。かわいそうに。そんな耳いらないわよね」
「いででで! す、すみません! ジョークです!言ってませんでした!」
お姉さまが義則の耳を引っ張った。
あほなこと言うからだ。
「とにかく、さっきの指示通りにやってね」
「そ、そりゃ、あんたには助け舟を出してくれた恩があるからやるけどさ」
「ねぇ、もういいかしら。とっととヤりたいんだけど」
「やりたいって戦いたいってことだよな! 他の意味なんてないよな!」
「そこは雰囲気次第で掘ったりすることもあるわね」
「ライブ感で俺の尻を狙わないでくれ!」
しぶしぶと義則がマラドンナと対峙する。
観客たちが二人を中心に輪を作る。
即席のリングの完成だ。
「お姉さま、一体何をいったんですか?」
お姉さまがいかにも悪だくみしてますといわんばかりににやりと笑った。
「ちょっと踊ってっていっただけ」
「え、そ、それだけ?」
「いいえ、それだけよ」
何を考えてるんだ。
まぁ、いい。
どうせ負けは確定だ。
「お姉さま、約束してください。あの男が負けたら次はわたくしと戦わせてください」
お姉さまはじっとわたくしの顔を見つめた。
「あなた、デートなんて形だけで本当はここに戦いに来たんでしょ」
「も、申し訳ありません」
やはり気づかれていた。
「いいわ。どうせ勝つのはあの子だから」
馬鹿な。
「お言葉ですが、お姉さま。それは不可能だと思います」
「あら、どうして?」
「あのオカマ、おそらくは――」
「筋肉の付き方から見てボクサーね、それもシューズの形からみてアウトタイプね」
シューズ? 確かに普通のスニーカーと違って革製だ。
確か革製の靴はゴム製のものよりも動きやすいと聞いたことがある。
ボクサーであることはわたくしも予想していたが、シューズでここまで判断するとは。




