謎のローソンウーマン
「おい、ガキ! 俺と戦え!」
「ふざけんな! 俺だ!」
今度は義則に群がる。
「いや! 乱暴がやめて! 事務所を通して!」
義則は相変わらずわけがわからない。
「待ちなさい。その子のお尻は私のものよ」
ミスマラドンナが義則の前に立ちはだかってかばった。
「ち!」
「くそ!」
男たちが諦める。
「いや、尻は誰にも上げてないから! あんたが言うと冗談に聞こえない!」
「冗談じゃないもの」
極めて真面目な顔だ。
「そこは冗談であってほしかった」
さすがの義則も辟易しているようだ。
男同士の醜い奪い合いだ。
「ねぇ、ローソンウーマン」
「なに? ミスターロビンソン」
「マラドンナよ。……質問なんだけど、人類災害みたいなあなたがどうしてこの子に肩入れするの? まさか、善意じゃないわよね」
「人類災害とは失礼ね。ただの善意よ」
果てしなく嘘くさい。
「それにこの子は私の弟子なの」
「あなたの……弟子!?」
場が騒然となる。
「マジで!? 俺、弟子だったの!?」
「……あなたの弟子も驚いて埴輪みたいな顔してるんだけど」
「ほんとよ。必要なことはすべて叩き込んだわ。もはや免許皆伝」
「マジで!?」
「……あなたの弟子も驚いて土偶みたいな顔してるんだけど」
やはり怪しんでいるようだ。
無理もない。
お姉さまは一体、何を考えているのだろう。
「わかったわ。その子と戦えばいいのね。ふふ、それでランキング上位者と戦えるなら安いものね」
「……今の私はローソンウーマンであってランキングとは関係ないわよ」
「それでもいいわよ。勝ったという事実が重要なの」
「随分と強気ね。……いいわ。あなたが勝ったら約束は守る」
ローソンウーマンは満足そうに頷いた。
「あ、あの変態仮面。助けてくれてありがとう」
「サンクス仮面よ」
「いや、ローソンウーマンですよね」
設定ガバガバだ。
「そのあたりはアドリブで」
言ってることがベテランの芸能人みたいだ。
「戦う場はセッティングしたけど、正直あなたに勝ち目はないわよ」
お姉さまの言う通りだ。
義則は特に格闘技を習っているわけではなく、力や体格だって特に秀でているわけではない。
「それでも、女の子に戦わせるわけにはいかないから」
こういうときだけ真面目だ。
「――気に入ったわ」
「お姉さま?」
嫌な予感がする。
「もっと面白くなりそうだから私が力を貸してあげる」
「何をするつもりですか? 戦うのは今ですよ。こんな短い時間にできることなんて――」
「大丈夫。すぐに終わるわ。ちょっとこっちに来なさい」
お姉さまが手招きする。
なんとなく怪しい。
「え、いや、でも」
その気配を感じ取った義則も戸惑う。
「いいことしてあげるから」
蠱惑的な笑み。
「二人で遠い国に行こう! そこでアダムとイブになって股間に葉っぱつけよう!」
義則が鼻息を荒くしながらお姉さまに近づいた。
「股間に葉っぱをつけたからアダムとイブになったのかしら。それともアダムとイブだから股間に葉っぱをつけたのかしら」
お姉さま、そんな無駄なことで悩まなくても。
「鶏が先か。卵が先か。って深い話のやつだ!」
「あら、意外と教養あるのね。せいぜい文字が読めるだけで精一杯だと思ってたわ」
「お姉さま、一応は小学生じゃないんですから」
「とにかく、私とあなたがなるのはアダムとイブじゃないわ。ベムとベラよ」
妖怪人間!?
「どういうこと!? ベロは!?」
「そっち!? それは問題じゃないですよね」
嫌な予感が止まらない。
「それはね――」
お姉さまが義則の耳元に顔を近づけた。
小さな声で何かを伝える。




