第27話 本当の白い結婚
ルートベアでの生活が始まった。
カシスタン様は、多忙な領主でありながら、常に私のことを気にかけてくれた。
毎朝、共に朝食をとり、領地の話をしたり、たわいもない会話を楽しんだ。
昼間は庭園を散策したり、書斎で書物を読んだり、時折、領民の暮らしを見に、街へも出かけた。
マルゼンダの街を見たときと同様に、前世での知識を活かし、領地の産業や教育について、カシスタンと共に考え、提案することもあった。
彼はいつも、私の意見を真剣に聞いてくれ、共に未来を築いていくことに喜びを感じた。
山岳地帯の部族に会うこともできた。
「赤い瞳とは縁起がいい。カシスタン様、この地の繁栄は約束されましたなぁ」
長老はそう言うと目を細めた。
彼らとの会話は新鮮で、私はこの世界の文化や歴史を深く学ぶことができた。
そして、夜になると、カシスタンは私を抱きしめる。
私は彼の腕で幸せの絶頂に辿り着き、たくさんの愛の言葉を聞きながら、心地よい眠りにつく。
満たされた日々が、穏やかに過ぎて行く。
私は、故郷のポーラディア領の両親と兄にも、手紙でこの地の様子を伝えた。
マルゼンダ家との縁談が破談になったことを心配していた母も、カシスタンの人柄と、私が心から幸せに暮らしていることを知って、心から喜んでくれた。
父と兄も、カシスタンの領主としての手腕に感銘を受け、ルートベア領との交易が始まることになった。
オリフタンの様子は、モズリンからの手紙で知った。
マルゼンダ伯爵の指導のもと、領主としての務めに真剣に取り組んでる。
オリフタンは、マルゼンダ伯爵夫人が抱え込んだ私財を全て投じて、街に宝石加工の職人を育てるための施設を作ったらしい。
地元の貴族たちからは反発もあったようだが、彼の真摯な姿勢と、領地の発展を願う心が通じたらしい。
以前よりも、街は活気づいているようだ。
『オリフタン様は、私がしっかりと教育します!どうぞご安心ください。やりがいしかないですわ』
モズリンが言うなら、何も心配はないだろう。
そして、マルゼンダ伯爵夫人は、王都の警官隊によって連行された後、その悪事が裁かれることになった。
今は、王都の牢獄で、己の罪と向き合う日々を過ごしている。
そして、私とカシスタンは結婚式を挙げた。
前世での政人と、オリフタンと、そしてカシスタンとの3度目の結婚式。
ルートベア辺境伯領の教会は、温かい陽光が差し込んでいた。
家族と領民の祝福を受け、私たちは神の前で永遠の愛を誓った。
私の手には、純白のガーベラが抱かれていた。
「白いガーベラは『希望』を意味する。アリアンディと僕らの未来に、ぴったりの花だ」
カシスタンの優しい言葉に、私は胸がいっぱいになった。
これまでの、愛のない白い結婚とは違う。
これは、私とカシスタンの、愛と希望に満ちた、本当の白い結婚だった。




