第15話 今夜も襲われる
東棟にある、オリフタンの部屋に引きずりこまれる――。
「きゃあ!」
ベッドに押し倒された。
「な、何をする気ですか」
「夫婦がベッドですることなど、言わずともわかるだろう」
「私たちは、まだ夫婦ではありません」
「ふん、減らず口め」
自分のシャツを脱ぎ捨てると、ベッドに上がってきた。
「あ、明日は結婚式ですよ」
「だからなんだ?」
「神の前では、純潔でありたいのです」
オリフタンは嘲笑った。
「おまえが、本当に純潔か確かめる」
「ですから、私は本当に――」
「カシスタンの世辞に、女らしく頬を染めていたな」
「え?」
まさかの嫉妬?ここで?
そういえば、政人も嫉妬深かった。
少しでも他の男性に興味を示すと機嫌を悪くする。それもレストランのスタッフに笑顔を向けたとか、俳優を褒めたとか、どうしようもない小さなことで。
その夜は、決まって夜の扱いが荒くなる。
一方的な行為と無理強いが、自分が満足するまで続く。
男を知らないアリアンディの身体。
だけど、生々しい不快な記憶で震えだす。
「カシスタンに惚れたか」
「バカなことを」
「出会ったばかりのカシスタンにも色目を使う、とんだ尻軽女だな。さては、ポーラディアには男娼を囲っていたか?」
「なんてひどいことを言うのですか」
必死に抵抗するが、びくともしない。
「そ、それより、マルゼンダ伯爵夫人に、宝石の訓練校の話はしましたか?」
「ああ」
「どうでしたか?」
「慈善事業の真似事など、マルゼンダには無用だと――笑われた」
予想通りの残念な結果。
「オリフタン様も、そのように思われたのですか?」
オリフタンはわずかに躊躇するように視線を彷徨わせたが、すぐに吐き捨てるように言った。
「ああ、くだらないな」
「そうですか……。それは、とても残念ですわ」
オリフタンの目には、わずかな諦めが混じっていた。
私の提案が却下されたことへの怒りだけでなく、母親に抵抗できない自分自身への苛立ちだろうか。
「俺の、意見など不要なんだ」
鬱屈した影が宿る。
政人も時々、同じような顔をしていた。
それは、愛花も感じていたはず。
「私は、共に街の未来を話し合えたことが、嬉しかったのです」
「……」
「このマルゼンダに嫁ぐことに、意味を見出せると思いました」
オリフタンの心の中に、少し触れた気がした。
かすかな同情を覚えた。
「オリフタン様は、何も感じなかったのでしょうか?」
「俺は……」
「カシスタン様も、きっと協力をしてくださるのではないですか?」
その名前が出た途端、オリフタンの顔が曇る。
「そんなことは、どうでもいい!」
そう叫ぶと、オリフタンは再び乱暴に組み伏せてきた。
「明日の結婚式、なぜ花嫁が赤いガーベラを持つか知っているだろう」
この国の、古くからの風習だ。
花嫁は白いドレスに、赤いガーベラを持ち参列する。
初夜が終わると、ガーベラは窓から捨てられる。
それが一連の儀式。『純血を夫に捧げる』そんな意味らしい。
「赤いガーベラが必要かどうか」
スカートの中に手が入ってくる。
「先に確認しよう」
「んっ……!」
噛みつくようなキスをされ、破るような勢いで、服を脱がされた。
ぎゅっと目をつぶる。目を開けたら、夢だったらいいのに。
少しでも、オリフタンに同情した自分が嫌になる。
転生してまで、こんな身勝手な抱かれ方をするの?
オリフタンも政人も、どっちも嫌。
前世からの悪夢が続くようだ。
どうして、どうして私はこんな人生ばかりなのか――。




