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異世界旅行を終わらせる為に頑張る男の冒険譚  作者: Latte


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3/4

3 冒険者に見えない

 冒険者協会と呼ばれる大きな建物の入り口の前に二人は立っていた。


「大きいな」

「この世界で一番大きい協会だ。なんせこの都市がでかいからな」

「なるほど」


 大きな扉を開け、中に入るとたくさんの人がいる。飲み食いしてる人たちがいるのをみるに軽い食事処にもなっているようだ。

 二人が受付に向かうと周りのざわめく声がより一層大きくなり全員の視線を集めている。だというのにセスとギルはまったく気にしていない表情だ。実際視線に慣れているから気にも留めていない。


 いくつかあるうちの受付が埋まっているから空いている男性の受付の元まで向かう。


「初めましての方と……鬼人ですか、依頼の受付ですか?」

「鬼人?」

「貴殿の後ろにいる人のことです」


 セスがギルのほうを振り向くと、嫌な顔をされた。どうやら本人がそう名乗ってるわけではなく周りの人間が勝手に彼をそう呼んでる名称なのだろう。


「依頼じゃなくて冒険者の登録なんだけど」

「(なんの冗談だ)」

「(……とでも思ってそうな顔だな)」


 セスはそんなに冒険者に見えないのかなと自分の服装を見るが至って普通だ。平民でも着そうな服ではある。

 そんなセスを見かねたギルは横から口を出す。


「本当に登録だ、こいつは貴族じゃない。必要なら推薦状書くが」

「そうですか。なら書いてください、鬼人が保証人となれば誰も文句は言えないので」

「ギルってほんとにすごいんだ」

「おい」


 バシ、とセスの後頭部を叩くが全く痛くはない。

 

 そんな光景をみた受付の男――リーエンは表情には出さなかったが驚く。

 まず誰かと一緒に協会に来たこと自体おかしな光景だというのに推薦、だなんて真似考えられるだろうか。


 鬼人――まさにその名の通り鬼のように強く、人に関心を抱かない冷酷人。それがギルバートが周りにつけられた印象だった。

 

 その男が貴族みたいな秀麗な男を連れている。しかも割と仲がよさそうだ。

 推薦の書類を机に出し、サインをもらってるときにリーエンは疑問を口に出す。


「かなり前からの付き合いなんですか?随分親しい様ですが」

「……そうだな」

「そんな様子今までなかったのに」

「僕、遠く離れたところから来たんだ。今まで知らなかったのも無理はない」


 探りを入れられたことに気づきセスはさり気なく会話に入る。

 

「パーティー申請はしますか?」

「いや、それはしない」


 セスがきっぱり断るとリーエンは驚いたようで少しだけ眉が上がる。仲がいいならギルのAランクという評価にあやかるとでも思ったんだろう。

 

「まぁですよね。鬼人が誰かとパーティーなんて考えられませんし」

「俺はコイツとなら構わないが」

「ギル」

「はいはい」


 セスの一言でギルは笑って素直に引く。

 リーエンは今すぐ冷水を浴びたい気分になった。冷徹な鬼人がおかしくなった。いや、自分の耳がおかしくなったのだろうか。

 その考えは自分だけじゃないようでこの会話に耳を傾けていたこの協会にいるみんなが驚きの表情を浮かべている。

 

「情報これでいいか」

「確認します」


 名前は――セス。平民らしくないまるで貴族が書くような達筆でサインされてる。

 冒険職――魔法。この世にほとんど存在していない魔法使い。


 リーエンは疑うような目でセスを見る。冒険者協会でみるこの項目はほとんどが剣士だ。

 たまに調子に乗った馬鹿が魔法使いを名乗るがすぐに噓がばれる。なぜかというとダンジョンに潜ったときに剣を携えているから。


 嘘をつくような男には見えない。だがどこか胡散臭い雰囲気があるのも確か。

 でもなによりもギルバ-トがこのセスという男を推薦してる時点で信憑性が高まる。


「もし剣士ならここの項目後日変更されますからね」

「……?」

「お前剣扱えるのか?」

「一般的には」

「使わないのか?」

「なぜ使う必要がある?」


 眉を顰め、本気で聞いてるセスにギルは確かに、と納得する。

 魔法師なら剣より魔法のほうが早い……はずだ。あまり魔法というものを見てこなかったから知らないが。


 リーエンはすぐに出来上がったカードを机の上に差し出す。


「これが冒険者を証明するカードになります」

「へぇ」


 セスはもらった自分のカードを軽く上にかざす。光に透かすようにカードを数秒見るとセスは関心の声を上げた。


「魔法が希少と言われる割には魔法陣みたいなのはしっかり使われてんだな。偽造防止の魔法に――」

「失礼」


 リーエンは咄嗟に机から身を乗り出しセスの口を抑えた。


「企業秘密なもので」

「あぁ、それもそうか。悪かったな」

「いえ、私も突然すみませんでした。しかし本当に魔法が分かるなんて……」

「……まぁそのぐらいのはな」


 こんなの魔法使いなら誰でもわかる、と言ったら面倒くさいことになりそうだ。セスは余計なことを言わないようにしようと心に決め、カードをポケットにしまい込んだ。


「もし依頼を受けたい場合、壁際に貼ってある依頼書を受付まで持ってきてください。受けられるランクは自分のランクより一つ上までです。セスさんの場合、今ランクがEなのでDランクの依頼まで受けられます」

「失敗したら?」

「あまりにも続くようなら降格、または剝奪です。よっぽど理由がない限り剥奪は無いですが。最低ランクの方が失敗するような依頼はないので大丈夫ですよ」

「ランクがあがる条件は?」

「依頼をこなした件数や評価次第で私たち職員が判断して上げます。あとは推薦や実力があればすぐに上がる方もいます。隣にいる男も実力派ですよ」


 ギルバートはそうだろう。この男がちまちま依頼をこなしていたらそれもそれで面白い光景になりそうだ。


「それと、有効期限――あるみたいだが」


 さっき陣を読み取ったときに時間に関する魔法がかけられていた。あまり大きな声で言わないようにすればリーエンは察したように頷く。


「最後に依頼を受けてから1年間なにもしなければ冒険者資格が剥奪されます」

「あぁなるほどな」

「説明は以上です。何かほかに聞きたいことありますか?」

「いや、大体わかった。何かあればまた聞きに来る」

「はい。それではよい冒険を」


 ギルと一緒に依頼書が貼ってある場所に行くと周りの冒険者が二人を避けるかのようにはける。だがそんなこと気にしない二人は依頼書に目を通して会話を始める。


「低ランクは主に採取や手伝い系が多いのか」

「討伐もあるけどな」


 ビンジラビットの討伐

 【討伐数】二十体

 【報酬】銀貨二枚

 【依頼主】冒険者協会


「冒険者協会から依頼が出ることもあるのか?」

「こういう弱い魔物や数が多くて害獣になりえるものは国から討伐依頼が出されるんだ」


 一通り目を通したセスは踵を返して出口に向かう。


「依頼はいいのか?」

「今日はいい。他に行きたいところがある」

「まぁ初日だしな」


 そうして少しだけ冒険者協会を騒がせた二人は静かに出て行った。





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