夜の都の統治者視察中~梢が思うこと~
マルファスの村の視察に、梢は同行する。
色々な会話のなかで、梢は色々と思い返す──
夕方。
マルファスさんに村を案内した。
事前に夜の都からのお客様とクロウが通達してくれたのでスムーズに交流できた。
途中でクラウスさんたちと会い、何か色々と話していた。
なんかクラウスさんは最期拒否の姿勢を見せていた。
「クラウスも始祖の森の心地よさに浸っていたようですね」
「心地良いと思ってくださるのは嬉しいですが……」
「お陰で私の息子とクラウスの娘の結婚は一端拒否されましたよ、この子にも何か運命があるはずだと言われましてね」
まぁ、そうなるね。
クラウスさんはクロエさんと出会って運命を感じた。
そして結婚してファラちゃんが産まれた。
なら、自分達の子どもであるファラちゃんにも、運命と呼べる出会いがあるかもしれない。
そう思ったのだろう。
「ファラちゃんはダンピールですが、もし結婚したらその辺どうなるんですか?」
「何も起きませんよ、次の統治者の夫人になるか、それとも違う形になるか、それは息子しだいですからね」
「息子さんはどうなんですかね?」
「ああ、息子は私と妻にそっくりだと言われていますよ。お陰で上に立つ者の素質は十分だとベアトリーチェ様もおっしゃっています」
「……」
ベアトリーチェさんは統治者だったのだけど、婿養子だったからベアトリーチェさんは統治者だったのかな?
「ベアトリーチェ様の夫が婿養子だと思っていますね」
「な、何故それを」
「顔に出てますよ、エンシェントドラゴン様の言う通り分かりやすい御方ですね、愛し子様は」
「うぐ」
クロウめ、余計な事を。
だって、ここだと顔色うかがって暮らす必要ないんだもの!
マリア様たちも顔色うかがう必要無いって向こうから言ってくれたことあるし!
「愛し子様は、自分の立場を分かっているようで、あんまり気にしてませんね」
「うぐ」
気にしてない。
うん、その通りだ、耳が痛い。
「良い事だと思います」
「良い事、ですか?」
「それ故貴方を皆が慕うのでしょう。貴方の為に何かするのでしょう」
「……そうですね」
言われてみるとそうかもしれない。
クロウは私の為に、色々としてくれている。
アルトリウスさん、アインさん、ティリオさんも。
晃、肇、音彩も。
村の人達みんなも。
私に頼りっぱなしじゃない行動をしている。
私が忙しいと手伝ってくれるし、苦手な書類仕事は全部やってくれる。
有り難い事この上ない。
「一応代表って言われてますが、それをやってるのはクロウなので……」
私は苦く笑って言う。
そう、クロウが特に色々やってくれる。
誰かを助けるときも、私の頼みを聞いてくれる。
私が思いもしないことをしてくれる。
だから、私はこうしてのんびりできるのだ。
「それも貴方の良さにちがいないでしょう」
「その通りだ、梢はお人好しにも程があるからな」
クロウがやって来て言う。
「其処までお人好しじゃないよ私!」
「どの口が言う」
クロウは呆れて言った。
「普通なら王族や国のトラブルなんかに首を突っ込もうとしないし、貴族のトラブルにも首をツッコむなどせんぞ、普通の感覚なら」
「ぐむ」
否定できない。
ドミナス王国はルキウス君関係の。
ムーラン王国は国の。
ブリークヒルト王国は、ロゼッタさんたちの。
他にも一杯ある。
かなり大きなトラブルはドミナス王国のトラブルだ。
イザベラちゃんが誘拐され奴隷に落とされたのをレイヴンさんたちが連れてきて助けてあげたのが全ての始まり。
いや、全ての始まりはアルトリウスさんだっけ?
やべぇ、記憶が曖昧だ!
「アルトリウスの件も、イザベラの件も、お前は善意で動いた。打算などなく」
「打算する理由が分からないよ」
「そこだ」
クロウは私を指刺す。
「お前は報酬も恩賞も求めなかった、ただこの森で暮らし続けるのを認めて欲しかっただけだ」
「そりゃそうだよ」
「だからだ、他の者なら見返りを求めるのに、お前は求めない」
「見返りは求めるほど困窮してないもの」
「そういう考えだから皆、お前に従い、お前を気づかっているのだ」
「むぅ……」
そう言われると否定できない。
最初の頃はたくさん無理をしていた。
無自覚に。
やがて指摘され、無理をすると棺桶にダンクシュートもといぶち込まれたり。
まぁ、色々あった。
だから今は無理をしないし。
「梢様は良き親友にめぐまれた」
「友というかお目付役というか……」
「まぁ、我は神々の使い、使徒でもあるしな」
「そういやそうだね」
私は思い出したように言う。
「これ以上梢は此奴の相手をせんでいいぞ、色々ボロがでる」
「助かる」
「ボロがでるとは?」
「お人好しの塊だからな」
「なるほど」
クロウの説明にマルファスさんは納得したようだった。
私は帰る途中で、クラウスさんとクロエさんの家に行くことに。
「あーぶぅ」
「ファラちゃん、可愛いですね」
「ええ、とても幸せです。本当に離婚してよかった」
「私はこの森に来て良かったです」
そうだろうな。
その二つが無ければこの幸せはなかっただろうに。
「ところで、マルファスさんが結婚話を出したとか」
「まだファラは赤ん坊ですもの」
「そうです、自分の意思決定もないのに勝手に決めるような親にはなりたくありません」
「ははは……そうですね」
私はいい親をやれているだろうか?
家に帰ると、晃たちが食事の用意をして待っていた。
「母上お帰りなさい」
「母さんお帰りなさい」
「お母様お帰りなさい!」
私に抱きつく子どもたち。
「ねぇ、皆にとって私はちゃんとお母さんなのかしら」
そういうと、三人そろってあきれ顔をした。
「またちょっとしたことで悩んだんですね」
「大丈夫ですよ、母さんは母さんですから」
「そうよ、お母様は私達の大切なお母様だもの!」
子ども達にそう言ってもらえて少しだけほっとした。
「「「まぁま! だっこ!」」」
光たちがよたよたと歩いてきて足にしがみついて、言う。
私は三人を抱っこする。
キャッキャとはしゃぐ光たち。
お母さん、私ね、幸せなの。
見ているだろう母に、そう思いを伝えるように心の中で思った──
マルファスの視察と、梢の今までの歩みをちょっと振り返るお話でした。
最期はマルファスの前でボロを出す前にクロウに言われた通り家に戻り子ども達を抱きしめます。
幸せな時間、自分が幸せだと神々の所に母に伝わるだろうかと心の中で考えています
ここまで読んでくださりありがとうございました!
誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




