22年目の春、ベアトリーチェへの手紙~夜の都の統治者から~
ベアトリーチェの元に夜の都の統治者マルファスから手紙が届く。
内容は始祖の森の視察をしたいというもので──
子ども達が三歳になり、いろいろとおしゃべりするようになった頃。
光はルカくんに熱烈アピールをして、ルカくんも同じように返していた。
「仲が良いですねぇ」
「本当ですねぇ」
真実は知っているが、知らぬが仏と言うことが前の世界である。
なのでレベッカさんたちには光とルカ君が仲良し過ぎる理由は喋らない。
「ぎゅー!」
「ぎゅー‼」
ハグし合っている二人を見て、私は微笑ましくもどこか遠い目をしてしまう。
これちゃんと約束果たせるよね?
神様嘘つかないよね⁈
そう不安になる。
『だから心配症じゃなぁ梢は』
呆れた神様の声が聞こえるがどうしようもない。
心配症は治らないのよ!
「……」
ある春の夜、ベアトリーチェさんが渋い顔をしていた。
クロウも渋い表情。
「あの、どうしたんですか?」
「マルファスの事は話したか?」
「えっと、確かベアトリーチェさんの後釜で、今アエトス家が統治している夜の都を統治者ですよね」
「うむ、そのマルファスがな」
「?」
「クラウスの叔母に統治を一度任せて始祖の森の見学に来たいと」
「ちょ、急にですか?」
「飲まずとは言え吸血鬼が他の種族と一緒に暮らしていると聞いたのだ、興味がわかない訳がない」
「あー……」
「断ったら断ったで、色々とまた手紙でグチグチと言われそうだしな……」
「何でですか?」
頭にハテナマークが浮かぶ。
「私がマルファスを強引に統治者にしたからだ」
「え⁈」
説得とかしてやったんじゃないの⁈
「真面目かつ、他者にも自分にも厳しい彼奴を強引に統治者にしたのだ、妻子は突如立場が代わり困惑していると今も文句を言い続けている」
「奥さんとお子さんは?」
「夜の都を出て万が一があったら困るから留守番だそうだ」
まぁ、そうだよね。
興味はでるし、私も興味対象だろうしね。
でも、外の世界は吸血鬼に厳しいからそうなるよね。
とか、考えていたらクロウが口を開いた。
「仕方あるまい、見学を許可しよう」
「いいのですか?」
「お前が強引に統治者にしてしまったのだ、我が儘と愚痴位聞いてやれ」
「……申し訳ございません」
ベアトリーチェさんの顔がすっごいしわしわに。
覇気が無いというのはこの事か。
「おもてなしの用意でもする?」
「我がするからお前はブラッドワイン出すだけにしておけ、あと味見」
「分かった」
そんなこんなで、マルファスさん来訪歓迎の準備は進められた。
そして、当日──
馬車が森の入り口にやって来たのを感知。
私は着替えていたので、即座家を飛び出し、入り口に向かう。
ベアトリーチェさんとクロウも居た、シルヴィーナも。
「マルファス様、お出迎えが」
御者の方がそう言うと、黒い髪に、赤い目に真っ白な肌、そして黒い貴族服の男性が下りてきた。
「ベアトリーチェ様お久しぶりでございます。そして愛し子様、エンシェントドラゴン様、従者の方、初めまして。現在アエトス家の都を統治しているマルファス・アエトスと申します」
「ようこそお越し下さいました」
私は丁寧にお辞儀を返す。
「愛し子様、お気遣い感謝いたします」
「まったくだ、本来なら愛し子様は畑仕事などに勤しんでいる時間なのにお前ときたら……」
「……本当に畑仕事なさっているのですね?」
「手紙で何度も書いただろう『愛し子様は吸血鬼だが、神々の加護で畑仕事などができる』とな」
マルファスさんが私を見る。
「あ、あははは……普段はこんな綺麗な格好しないんですが、いつもは畑仕事や、家畜の世話なんかをやっています……あと子どものお世話とか」
「御子様がいらっしゃるのですね?」
「ええ、まあ」
「そうですか……」
「言っておくが幼児以外の全員に相手はいるからな」
クロウがくぎを刺すように言う。
断言したのはいいけど、私音彩しか知らんのよお相手!
晃と肇お口チャックなんだもの!
晃と肇の気配をたどれば分かると思う。
でもそれは私はしたくない。
子ども達の信用を損なうし!
それだけは絶対やだ!
「そうですか、それは残念です」
「言っておくが私もアエトス家の者は紹介せんぞ」
「分かってます。そう言えば、クラウスは確かフィリアーネ王国の元正妃と結婚したと聞きましたね」
「そうだ」
「あの、クラウスが……」
マルファスさん驚いているようだった。
「どうしたんです?」
「いえ、どの女性にも魅力を感じないから男性に魅力を感じるのではと疑われたりしていたものですので」
「それ極端過ぎません?」
「ですね」
クラウスさんはクロエさんという運命と遭遇した。
愛したい、側にいたい、最期を看取りたいと言う運命に。
「長旅で疲れたでしょう? 料理を用意しています、御者の方もどうぞ」
「ありがとうございます」
「何から何まで感謝するしかありません」
マルファスさんと馬車は森の村の敷地内に移動し、来賓の館に招いた。
御者さんは人だったのにで、人用の料理を。
マルファスさんには吸血鬼用の料理を。
「これは美味い……! ブラッドフルーツとブラッドワインでこれほど料理を作れるなんて……!」
「ああ、美味しい……体にしみる……」
御者さんにはスープとサンドイッチを用意した。
スープはオニオンコンソメスープ。
「今日は休んで明日村を見て回りませんか?」
「そうですね、そうしましょう。それでいいね?」
「はい、マルファス様」
御者の方は頷き、マルファス様と御者さんは来賓の館で休んで貰うことにした。
「さて、本番は明日だな」
クロウが言う。
「何か緊張するなぁ」
私は怯え、ベアトリーチェさんが方を叩く。
「大丈夫ですよ、愛し子様。私が主体でやりますから」
「は、はい……」
明日何もないようにと、祈るだけだった──
梢、実は内心びくびくしています色んな意味で。
偉い人が来たどうしよ!
子ども達の話どうしよ!
嫌われたくない!
等など、色んな箇所でびくびくしています。
心配症というかビビりといいますか。
クラウスにそんな事情があったりとか、マルファスの統治者なった理由がアレとかでベアトリーチェさんも色々アレなところがあります。
次回は視察回?になりそうですね。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
反応、感想、誤字脱字報告等ありがとうございます。
次回も読んでくださるとうれしいです。




