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#16 誘拐

「てことはー、私、美優姉と間違えられたってことねー」


 薄暗い、裏社会の奥底の狭い部屋の中で、椅子に縛られた美央がそう尋ねる。


「くそっ、まさかやつに妹がいて、間違ってそっちをさらってしまうとはな」


 レオンという男が、悔しそうにつぶやく。が、それでもあの「剣魔除けのミュー」の妹だ。上手く使えば、それなりに金を得ることも可能だろう。

 そう、この娘を捕まえたことは、すでに手紙で知らせている。ちょうど王都と宇宙港の街を隔てる壁際に、門番がいる。そこにこんな内容の手紙を放り込んできた。

 「ミュー殿をさらった、その命を助けたければ、金貨七十枚を用意せよ。一日以内に、裏社会の店『紫煙館』にこい」と。

 あの時は本人をさらったと思い「ミュー殿をさらった」と書いたが、おそらく今ごろは、その手紙があのミュー本人に届いている頃だ。


◇◇◇


「えーっ! み、美央がさらわれたぁ!?」


 ちょうど納品作業を指示していた時、突然、知らせが舞い込んできた。


「軍も、動き出したようです。が、あまりに情報が少なく、どこに行ったのかすら足取りがつかめないそうです」

「ど、どうしよう……とにかく、金貨七十枚、どうにかしなきゃ」


 ここままじゃ、お母さんに顔向けできない。しかし、どうして単身で王都なんかに……

 ところがだ、動揺する私に、アーシャが告げる。


「金を用意したからといって、必ずしも助かるとは限らんぞ」

「そ、そんなこと言ったって、それじゃどうすれば……」

「とにかく、まずは犯人を見つけることだ。やつは間違いなく、裏社会にいるはずだ」

「どうして、そんなことが分かるんです?」

「金の受け渡し場所を、裏社会にある『紫煙館』を指定しているだろう。そんなことができるのは、裏社会の者だけだ」


 それを聞いた私が脳裏に浮かんだのは、あの人の顔だ。


「マルチェロさん……」

「なんだ、マルチェロが、どうかしたか」

「マルチェロさんなら何か、分かるかもしれない!」


 藁をもすがる気持ちの私は、すぐに王都へと向かう。ちょうど納品に向かうトラックに乗って、裏社会にあるマルチェロさんのいる場所へと向かった。


◇◇◇


 薄暗い部屋には、美央と、その美央を姉の美優と思い込みさらった男、レオンがいる。普通ならば、さらわれた恐怖で口を開くこともままならないはずだが、美央はその性格が災い、いや、幸いし、そのレオンという男と会話を試みる。


「あのさー、誘拐犯さーん」


 この時点でまだ、美央はレオンの名を知らない。というか、誘拐犯が自分の名を名乗るはずがない。


「な、なんだ! お前、捕まってるんだぞ、少しは黙ってろ!」

「そんなこと言ってもさー、私、動けなくて退屈だしー」

「それくらい、我慢しろ!」

「なんでよー。てか、どうして誘拐なんてするのさー」

「決まってるだろ、金を得るためだ」

「お金が欲しければ、働けばいいじゃなーい」


 何かと無神経なこの娘に、レオンは怒り出す。


「働き場所を失ったから、働けないんだよ! だいたい、お前ら、いや、お前の姉のせいでこうなったんだぞ! 分かってるのか!」

「分かんなーい、なんでー?」

「お前の姉が、せっせと売り歩いているものが、何か知ってるか!」

「鍋とかー、フライパンでしょー?」

「そうだ。そいつが王都では大評判だ」

「そうなんだー、そりゃあ良かったねー」

「良くねえよ! その結果、どうなったと思ってる! 俺たち、鍛冶職人の仕事がなくなったんだ!」


 そう、レオンは王都でも腕利の鍛治職人だ。主に調理具や武具の類を作り続けていたが、その大半を美優の会社の製品に奪われてしまった、と言うのだ。


「そうなんだー、じゃあ、美優姉って悪いやつだねぇー」

「それはそうだ。おかげで俺は、この裏社会までやってきて、なんとか生計を立ててきた」

「じゃあ、仕事あるじゃん」

「ところがだ、ミューのやつが裏社会をも変え始めたんだ! 麻薬も奴隷も、なぜだか合法な形に変えやがった! おかげで、俺が細々と作っていた護身用のナイフすらも売れなくなっちまって……」

「うわぁー、可哀そー」


 このやる気のない憐れみを聞けば、普通はイラッとするだろう。レオンも例外ではない。


「何が可哀そうだ! お前の姉がやったことだろう!」


 激高し、ナイフをちらつかせるレオンに、美央はこう返す。


「あのさー、さっきから聞いてるとー、みんな人のせいじゃなーい」

「当然だ、お前の姉がいなければ、こうはならなかった」

「そんなことないよー」

「なぜ、そう言える!?」

「美優姉がいなければ、別の人がやっただけのことだよー」

「な、なに?」

「宇宙港に何人、いると思ってるのさー。美優姉がやらなきゃ、他の人がやっただけのことじゃーん。結局さー、遅かれ早かれ、次の時代の仕事を見つけなきゃいけなかったんだよー」

「うるさい! だが結果的に、お前の姉が俺の仕事を奪ったことに変わりないだろう!」

「じゃあ、聞くけどさー。他の鍛冶職人ってみんな、誘拐してるのー?」

「そ、それは……」


 辛辣なまでの事実を前に、レオンは言葉を失う。空に浮かぶ、無数の宇宙船。そもそも、あれに対抗することなど、どのみち不可能だったのだ。

 それを知って、多くの鍛冶屋が他の仕事を探し、ある者は宇宙港で、そしてあるものは宇宙港がもたらす「仕事」を得て、生活している。

 鍛冶職人にこだわり続けた者だけが、仕事をなくすという憂き目に遭っている。

 たまたま、美優という社員が新たな品を王都に持ち込み、売りさばいただけのことだ。それに対応できなかったのは結局、自分ではないのか。


◇◇◇


「レオンとかいうやつが、お前そっくりの娘の口をふさぎ、裏社会へ入っていったと、目撃した者がいる。で、そいつは裏社会の中ほどにある、『紫煙館』の隣の小さな小屋に入っていったらしい」


 マルチェロさんが、あっという間に美央の足取りをつかんでくれた。さすがは裏社会に通じているお方だ。


「その、紫煙館というところは、どうやって行けばいいんですか!?」

「分かりやすいところにある。裏社会の、南側の入り口からまっすぐ進んだ先にある。で、ミオとやらが囚われてるのは、その左側にある、薄汚れた白い漆喰の小屋の中らしいぜ」

「ありがとうございます! で、そのレオンって人、人さらいが仕事の人なんですか?」

「いや、やつは鍛冶職人だ」

「えっ、鍛冶職人が、なんで誘拐を?」

「当然だろう。お前が売り歩いている鍋やフライパン、それが鍛冶職人の仕事を奪ってるんだ。恨みを持つやつが現れても、おかしくはない」


 それを聞いた瞬間、私はハッとした。それはそうだ、考えてみれば、私がフライパンを売った分、本来ならこの王都でフライパンを作っていた人の売り上げを、下げる結果になるのは当然だ。

 聞けば、私に仕事を奪われた結果、レオンという男はこの裏社会で細々とナイフや胸当ての鎧などを売り歩いていたらしい。が、裏社会も徐々に合法的なものに手を出し始め、そんな物騒なものが不要になりつつある。で、その鍛冶職人さんは金に困っているようだと、マルチェロさんは風の噂で聞いていたようだ。


「よくそんな人のことまで御存知ですねぇ」

「この裏社会に一歩でも入ってきたやつの名は、忘れねえ。ミュー、お前も含めてだ」


 なんだか睨みつけられてしまった。いや、別に私、マルチェロさんには何も悪いことはしてないよ。そのレオンって人には、しでかしたかもしれないけど。


「はっ! それどころじゃなかった! すぐに美央のところへ行かなきゃ!」


 私は慌てて走り出す。とにかく、美央がいそうなところは分かった。ならば、助け出すまでだ。


「おい待て、私も行くぞ!」


 そんな私の後を、アーシャさんが追ってくる。

 早く助け出さないと。私はその一心で、美央がいるであろう『紫煙館』の脇に立つ小屋へと向かった。


◇◇◇


「うう……お、俺だって、もうちょっと器用だったら……」


 泣き出すレオンに、美央は相変わらず緊張感のない声を投げかける。


「泣いたってー、しょうがないじゃーん」

「うるさい! これが泣かずにいられるか! 妻と子一人、どうやって養って行きゃあいいんだ……」

「簡単じゃーん。働けばいーのよー」

「おい、俺は人さらいしたんだぞ! そんなやつを、誰が雇うというんだ!」

「人さらいって、雇ってくれないのー?」

「当たり前だ! 見つかれば即、処刑だ! ましてや国王陛下とつながりのある者の、その妹となれば……」


 だったら、最初からやらなきゃいいのに。何を今さらと思う美央だったが、それでもこう答える。


「あのさー、おそらくだけど、もうそろそろ美優姉がここに来ると思うよー」


 それを聞いたレオンは、美央に尋ね返す。


「どうして、そんなことが分かる!?」

「だって、自分で門にいる衛兵のところに、手紙を置いてきたんでしょー?」

「そうだ」

「だったら、どー考えても、ここに来るでしょうがー」

「いや、指定した場所はこの隣にある『紫煙館』だ。こっち側に来るはずが……」


 そう、レオンが答えかけたその時だ。

 いきなり、扉がバンッと音を開く。


「美央!」


 いきなり現れたそっくりな姉を見て、レオンは尋ねる。


「お、お前が噂のミューだな!」

「あんたがレオンね! ちょっと、なんだって妹をさらったりしたのよ!」


 一緒にいる時間の長い妹ですら知らない自分の名前を、この姉はいきなり言い当てた。やはり、ただものではない。そう感じたはずだ。

 が、レオンはひるまない。


「ふん、ならばお前を捕まえるだけのことだ。その分、身代金が増えるってもんだ」


 そういいながら、ナイフを片手に美優に迫るレオン。だが、その背後に現れた人物を見て固まる。


「たいした度胸だ。ミューに手を出そうなど、この王国騎士団長である私が許さぬ!」


 なんと、ともに現れたのは、かの有名な女騎士団長のアーシャ・カライだ。とてもナイフ片手に敵う相手ではない。咄嗟にやつは、椅子に縛り付けた美央の首元にナイフを当てる。


「う、動くな! この娘の命が、どうなってもいいのか!?」

「その娘の首元に、そのナイフが触れた瞬間、お前の首が飛ぶぞ。その覚悟はあるのか?」


 まさに一触即発。互いに、剣とナイフを構えたまま膠着した。どちらかが動けば、悲劇が起こる。美優も、どうしていいか分からないで途方に暮れている。

 が、そんな緊張感に包まれたこの薄汚れた小屋の中で、まるで緊張感のない声が響き渡る。


「あのさー、美優姉。この人、鍛冶職人さんで、仕事ほしいんだってさー」


◇◇◇


 喉元に、ナイフを突きつけられているんだぞ。しかも自身は、木製の椅子に縄で縛られて動けない。

 そんな状態で、言う言葉か?


「ちょ……美央、あんた、何を……」

「いや、だからさー、この人、仕事がほしいんだってぇー」

「は?」


 何を言っているんだ。仕事じゃなくて、金貨七十枚を要求してきたのだから、欲しいのは金の方だ。仕事が欲しくて誘拐するやつが、いるわけないだろう。


「あのさ、美央。あんた、今の自分の状況が分かって……」

「分かってるよー、要するにこの人、美優姉が鍋やフライパンを売るから、仕事なくなっちゃったんだってー。だからさ、美優姉が仕事を探してあげれば、万事解決じゃーん」

「ななな、なんてことを……」

「おい、ミオよ! 人さらいは重罪人だ! そんなやつが、仕事どころじゃないだろう!」


 アーシャさんが叫ぶ。が、私はふと、別のことを考えていた。

 そういえばこの人、鍛冶職人だと言っていたな。

 私はずかずかと、そのレオンという男のもとへ向かう。


「な、なんだ! お前、俺に刺されに来たのか!?」

「そうだ、ここの鍛冶職人に、作ってほしいものがあるの!」

「「はぁ!?」」


 私の言葉に、当のレオンも、そしてアーシャさんも同時に呆れ声を出す。


「おいミューよ、こんなやつに、何を作らせるというのか!?」

「そうだ! お前のところで作れなくて、俺が作れるものなんてあるのかよ!」

「あるのよ、それが!」


 そうだった。たった一つだけ、どうしても作ることができないものがあって、それでアーシャさん共々、悩んでいたものがあったのだ。


「おい、出まかせを言うんじゃない!」

「あのさー、美優姉はあまり頭よくないけどぉー、嘘や出まかせは言わないよー」

「妹であるお前をさらった相手に、出まかせを言わないとは限らないだろう! なんだよ、その作ってほしいものというのは!」

「剣!」

「は? 剣?」

「そう! 剣!」


 私の言葉に、驚きを隠せないレオンだ。それは当然だろう。鍋やフライパン、そして鎧すらも自在に作れるのに、剣が作れないなんてこと、あるはずがない。


「そんなわけないだろうが。剣なんて、お前らなら簡単に作れるはずだ」

「そう! 包丁を大きくするだけだから、作るのは簡単! でも、ダメなの! 売れないの!」

「は? 作れるのに、売れない?」

「そう、売れないの! 宇宙港の街では、民間企業が王都に、武器を撃っちゃいけない決まりなの! だから、うちでは王国騎士団に卸せる剣がなくて、困ってたのよ!」


 鍛冶職人にとっても、想定外だっただろう。無論、少し前の私にとっても想定外だった。ちょっと前に剣の試作品を作っていざ、門の外に出ようとしたら、没収されてしまったからだ。

 それで私は、宇宙港の街で作った剣が売買できないことを知る。鎧はOKだったのになぁ。


「だけどあんた、王都で鍛冶職人してるんでしょ!?」

「あ、ああ、そうだ」

「だったら、剣の一本や二本、簡単に作れるよね!?」

「一本、二本どころじゃねえ! 俺はこう見えても、何十、何百と剣を作ってきたことのある職人だ!」

「だったら、うちの会社で、専門の鍛冶職人として、雇おうじゃないの」


 それを聞いたアーシャさんが、慌てて止めに入る。


「おい待て! お前、今の状況が分かってるのか!? 自分の妹の喉元に、刃を向けている男を雇おうとしているんだぞ! おかしいだろう!」

「ちょっと聞くけどさ、鍛冶職人って、人殺せるの?」


 それを聞いたレオンの腕が、急に震え出した。そして、ナイフを堕とす。


「ほら、やっぱり。騎士ならともかく、人を殺めたことのない人が、いきなりナイフで人を切りつけるなんて、できっこないよね」


 それを見たアーシャさんが叫ぶ。


「おい、その場を離れろ! 今からそいつを斬りつける!」


 だが、私はこう答える。


「アーシャさん、ちょっと待ってよ。これはアーシャさんにとってもいい話なんだから」

「はぁ!? 私にとっても、良いというのか!」

「だって、鎧は良いものが手に入るけど、剣だけは今まで通りだってぼやいてたじゃん」

「そ、それはそうだが……」

「うちが用意する材料で、この鍛冶職人に剣を作ってもらう。そうすれば、欲しがっていた『伝説の剛剣』が手に入るんだよ」

「は? いや、そんなことは、他の鍛冶職人でもできるだろう!」

「そりゃそうだけどさ、さっきも言ってたじゃん。この人、剣を何十、何百も作ったって」

「そんなやつは別に、そいつじゃなくても……」

「それに、私の大事な妹の命を狙ったんだよぉ? ただで返すわけないじゃん。その分、しっかり借りを返してもらわなきゃね」

「ひえええぇっ!」


 よほど私がおっかないと見える。冗談じゃない、私はそこまで非道な人間ではないぞ。だから私は、こう答えた。


「てことで、前金として金貨十枚! んで、毎月三千ユニバーサルドル、つまり金貨にして三枚! これで、私の支社と契約する! 納品された品によっては、追加の支払いもする! これでどうかな!?」

「うわー、さすがは美優姉。上手いこと、考えるねー」


 それを聞いたレオンは、しばし考える。が、私にこう尋ねてきた。


「おい待て、そう言ってだますつもりじゃないだろうな!?」

「だますつもりだったら、ナイフを落としていた時点でアーシャさんを止めずにぶっ刺してもらってたわよ。ちゃんと使い道があるから、止めたんじゃない」

「つ、使い道……いや、俺はこの通り、すでに人さらいをやった身だぞ? 表に出られる身じゃないんだぞ? 分かってるのか!」

「そんなのさー、私がさらわれたって言わなきゃ、それで済む話じゃないー」

「は?」

「そうだよねぇ。だからさ、ほら、そのナイフ使って、さっさと美央の縄をほどく!」

「お、おう……」


 そう言いながらレオンは、美央の縄を切り、そして美央はようやく解放された。


「さて、それじゃあ仕事の話をしましょうか。こんなところじゃなんだから、あなたの鍛冶場に行きましょう」

「は、はぁ……」

「おい、本当にいいのか!? お前の妹がさらわれたんだぞ!」

「えー、別にさらわれてないよー」

「ほら、本人がそう言ってるんだから、いいじゃないですか」


 で、結局、私と美央、そしてアーシャさんとレオンの四人は、裏社会を出て平民街を歩き、その先にある鍛冶場へとたどり着く。


「うわーっ、いかにも職人って感じのところで、面白ーい」


 ついさっきまで、椅子に縛り付けていた相手の職場を見て、美央のやつ、やけに興奮してるな。


「……んで、俺はどうすりゃいいんだよ」

「ああ、今から律君が材料もってくるから、それで剣を一本、作ってほしいの」

「は? いまから、剣を作れって?」

「さっきも言った通り、まずは前金で、金貨十枚。出来がよければ、そのまま毎月二千ユニバーサルドルで雇う。もちろん出来高制で、いい品ができればその分、給料も上がる。良い話でしょ」


 もはや断る理由なんてないだろう。レオンは訝しげな顔で私を睨み、そして頷く。その時、律君がやってきた。


「も、持ってきましたよ、倉田さん」

「ああ、律君、ありがとう」

「それはいいですけど、こんな合金、何に使うんですか?」

「例の伝説の剣をね、作ってもらうの」

「は? 剣を作る? でもそれはこの間、ダメだって言われたばかりじゃ……」

「それは宇宙港の街中だからダメだったんでしょ? でも、宇宙港の街の外、王都の中で剣を作るのは別に違法ではないわけだし」

「……まさかこの合金を使って、この鍛冶職人に剣を作ってもらうと、そう考えたんですか?」

「ま、いろいろとあってね」


 その「いろいろ」には、本当にいろいろなものが含まれる。美央と、鍛冶職人のレオン、この二人の命がかかっていたこと。そして、アーシャさんがまさに欲していたものが提供できるかもしれない、千載一遇のチャンスを得たということだ。

 炉に火を入れて、律君が持ってきた金属の塊を打ち始めるレオン。その光景をしばらく見ていたが、完成するのは明日だというので、今日はそのまま帰ることとなった。


「うふふ、今日はなんだか、身体中が硬いですね。まるで一日中、縛られていたみたいに」

「みたいじゃなくてさー、その通りなんだけど……あーっ!」


 無論、今日も美央がアミラと共にベッドに入る。今日はほぼ半日の間、椅子の上で縛られっぱなしだったからな。アミラよ、ちゃんときっちり全身を、ほぐしてやってくれよ。

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