07 結婚はできなくて、困苦。
『蒼い誓いと紅い秘密、その扉の向こうで』
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
異世界転生して、自分が悪役令嬢だとわかったとき。
意味のないことはやめようと思ってしまったのだ。
具体的には、王妃教育…
どうせ、私はアルト殿下の妻にはなれない。
だったら、王妃教育なんて意味ないじゃん。
そう思った。
勉強も苦手だったから、これ幸いと思ったのも事実だけど。
だから、いまさらアルト殿下と結婚なんてできない。
全部、覚えてない。
覚えようとしていなかったから、頭の片隅にも残ってない。
もしもこれがゲームで。
私はコントローラーを持って画面を見ているプレイヤーだったら。
『嬉しい。私もアルト殿下と結婚したかったの』という選択肢を選んでた。
そうして、『2人で仲良く暮らしましたとさ』というエンドロールを見て満足していただろう。
でも、これは現実だ。
もしも、アルト殿下の申し出を受け入れたら。
私はうる覚えの王妃教育の知識でアルトの隣に立つことになる。
そんなことをしたら、アルト殿下の評価はダダ下がり。
タブロイド紙には『今世紀最悪の皇太子妃誕生!』なんてタイトルが躍るかもしれない。
それに…それだけじゃない。
無理だ。
「アルト・アズリオン殿下…申し訳ありませんが、そのお申し出はお受けできません。私は町人として暮らしていきたいのです」
勉強しないで、好きなことして暮らしたいです。
そういう意味合いで伝えた。
アルト殿下が、ぐっと下を向いて考えている。
「…そうか。ならば、俺も町人になろう」
空耳か?
アルト殿下が乱心したようなセリフが聞こえてきた。
「え?」
耳をかっぽじる。
「俺も、町人として君と一緒に生きよう」
聞き間違いではなかった。
アルト殿下は、とうとうご乱心になったようだ。
「あの…アルト・アズリオン殿下は、王族です」
「ああ。だが、安心するといい。俺には弟がいる。王位は弟が継げばいい」
アルト殿下の弟は、シエル・アズリオン。
だけどまだ、幼かったはずだ。
それに、アルト殿下とシエル殿下は母親が違う。
母親同士は仲がよくないと耳にしたことがあった。
「アルト・アズリオン殿下のお母様は、それをお許しになるでしょうか?」
「許すも何も、俺が戻らなければ自然とそうなるよ」
アルト殿下は自信満々にそう言った。
王族らしい、なんとかなる感。
世界は俺を中心に回ってる感。
ゲームをしていたときは、これもカッコいいって思ってたけど。
現実には「どーにもならないこともあるんだよ、ぼくちゃん?」って感じだ。
ふうっと息を吐いた。




