06 まさかの提案で、困惑。
『蒼い誓いと紅い秘密、その扉の向こうで』
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
「婚約者であるヴェロのことを、大事にできなくて申し訳ない。ただ、学園にいた頃はなぜか…君のことが嫌いで…いや、違うな。好きなのに、好きでいてはいけない気がして…」
アルト殿下は、どう説明したらいいかわからないという感じだ。
でも、私にはわかる。
それはあれだ、物語の強制力。
アルト殿下は、ヒロインを愛し、悪役令嬢を嫌わなければいけないから。
でも、ちょっとだけホッとした。
アルト殿下に、心から嫌われていたわけではなかったんだ。
だって、最推しなんだもん。
そんな皇太子に嫌われるのは、悪役令嬢役でも辛かったんだもの。
「わかりました、アルト・アズリオン殿下。その謝罪は謹んでお受けいたします。ですからどうか、ミレイア・ノクス嬢と仲良くお過ごしください」
そう伝えると、アルト殿下の顔色が変わった。
「え?…いや、あれと仲良くは無理だろ。あんな腹黒…」
そう言われて、きょとんとした。
あれ?ヒロインと結ばれてないの?
もしかして、私が断罪から逃げたからストーリーが変わったのかしら。
「ミレイア・ノクス嬢は、セレネイド王国の皇太子の婚約者になったと聞いたよ」
そう言われて、驚いた。
そうだった。
隣国の皇太子も、攻略対象じゃん…
皇太子ルートしかやってなかったもん。
すっかり忘れてた。
「そうなんですね…この国の、皇太子の…婚約者」
すぐに、この国から逃げたほうがよさそうな気がしてきた。
「だから…いや、だからってわけでもないけど。俺と一緒にルミナリス王国に戻ってほしい。結婚式をあげよう!」
そう言われて、驚く。
「えっ…私たち、婚約…破棄……もしかして、してないんですか?」
卒業式の断罪で、悪役令嬢はアルト殿下から婚約破棄を言い渡される。
その断罪がなかったから、婚約破棄してない…のか?
「もちろん。君は、俺の婚約者だよ」
そう言われて、驚き過ぎて、意識が飛んだ。
そんなストーリーは知らない。
皇太子ルートも、騎士ルートも、隣国の皇太子ルートでも、悪役令嬢は処刑されていたはずだ。
隣国の皇太子ルートだから、悪役令嬢が皇太子の婚約者のままなんてことはありえない。
どういうことなんだろう。
「もう、ミレイア・ノクス嬢はいないし、君も気兼ねをしなくていいだろう?」
アルト殿下にそう言われて、微笑みかけられて、キュンとする。
最推しの微笑み、いただきました!
ではなく。
それはそれで、とても困るのだ。




