47 久しぶりのお城で、迷子。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
「なによ、それ!なんなのよ!!」
ミレイアは納得いかないと私に歩み寄ろうとしたけど、大人たちに連れていかれた。
それが、私がミレイアを見た最後となった。
ミレイアはアルト殿下の予定通り、祈りの島という名の地の果てに追いやられた。
泳いで海を渡る根性があれば別だか、あの島から出ることはできないだろう。
壮行会での出来事があんなにスムーズだったのは、来ていた人のほとんどが、あの茶番を知っていたからだ。
アルト殿下が2日間で説明し、説得に回ってくれたのだ。
神官へも説明して、説得してくれていた。
言葉で言えばそれだけだが、それがどれほど大変なことだったかは想像に難しくない。
光の扉がもう現れないことを納得しない人もいたはずだ。
それを、根気強く説得してくれたアルト殿下はすごい人だと思う。
そんなわけで、神殿からお城に帰ることとなった。
魔法はこれからも学ぶ予定だけど、それほど大きな力はもたないほうがいいだろうというのが、神殿の判断だ。
私もアルト殿下も、それを受け入れた。
それにしても。
だったら壮行会なんてやる必要がなかったのでは、とも思う。
ただ、民には古代の聖女の生まれ変わりが現れたと伝えてしまっている。
だから、カタチだけでも祈りの島へ行く聖女が必要だったのだ。
「それに、2日前だよ。もう各国のお偉いさんが神殿に来てたんだ。なにかやるしかないだろ」
アルト殿下はそう言ったけど、私はアルト殿下が公開プロポーズをしただけだったんじゃないかと思ってる。
ただ、私がアルト殿下の婚約者として歓迎されたのはあの公開プロポーズのおかげであることはいなめない。
あれだけ大々的に発表してしまったら、反対していた人たちも認めざるを得なかったというところだろう。
「ヴェロニカ嬢!」
元気な声が聞こえて振り向くと、リリアーヌ嬢がいた。
少し背が伸びただろうか。
子どもの成長は早い。
「もう、大変だったのよ!あなたがいないから、私ひとりで王妃教育を受けていたのよ」
「…それは申し訳ありませんでした。では、リリアーヌ嬢から教えていただかなくてはいけないことが多いですね」
そう言うと「まあ、教えてあげてもいいわ」と言われた。
本当に可愛い。
「アルト兄様っ!」
そう言って、シエル殿下がアルト殿下に駆け寄っていっている。
お互いの母親の問題は残っているけど、この2人の仲はいいみたいで安心した。
ふわっとした風が吹く。
ああ、戻ってきたんだなと思えた。
それぞれに挨拶をして、部屋に戻ることにする。
ちょっと気になっていた。
…なぜ、アルト殿下もついてくるんだろう。
「…あ、大丈夫ですよ。久しぶりですけど、迷わずに行けますから」
心配性なのか?
それとも…部屋でキス…キスとかしちゃうのかな。
そんなことを考えながら部屋に向かう。
「そっちじゃなくて、こっちだよ」
アルト殿下に言われて、戸惑う。
たった数日、帰ってこなかっただけで、私ったら部屋の場所を忘れてしまったようだ。
「すみません…うっかり。えっと、ここは右…」
「左だよ」
おっと?そうだっけ…
もしかして、色々あって、記憶喪失…いや、記憶障害にでもなったんだろうか。




