↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/50

45 聖女ミレイアの、失脚。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

ドキドキの壮行会そうこうかい

式典は、予定通りに行われていく。

広間の空気は華やかで軽やかで、足音や衣擦れの音までもがやけに響いて感じられた。

ミレイアがキラキラした目で、1番前でステージにいる私を見ていた。

その視線は期待と確信に満ちている。

ここから先の結末がすでに決まっていると信じて疑っていない目だ。


これから、私がギャフンされると思っているんだろう。

…頭の中、お花畑か?

疑わしい瞬間はゴロゴロあったのに、ミレイアは全く疑うことなく、私の前にいる。

なんだろう。

ちょっと可哀想な気もしてきた。

…まあ、カタチ的には私がギャフンされるんだけど。

心の中でだけそう思って手を合わせた。


「それでは、古代の聖女の生まれ変わりであるヴェロニカ様よりお言葉をいただきましょう」

神官の声に体がビクっとなる。

私が話しだすタイミングが、このミッションの最終関門でもある。

アルト殿下がステージにスタスタと上がってくる。

裾の装飾が揺れ、靴音が広間に乾いた音として響く。

堂々とした歩みなのに、誰も止めない。

むしろその動きに合わせて、神官たちが自然に道を開けていく。


もう、この時点で不自然なのに、ミレイアは不思議に思っていないのが不思議だ。

いや、むしろそうなるべき流れとして見ているようですらある。

目が輝いて、ワクワクしてさえいるようだ。

期待に満ちた視線のまま、揺るがない確信だけを抱えている。


「お待ちください、神官様!」

アルト殿下がそう言って式典を止める。

その声は広間の奥まで突き抜け、祭壇の天井にぶつかって反響する。

一瞬、蝋燭の火が揺れたように空気が震えた気がした。

広間が静まり返って、アルト殿下に視線が集中した。

ミレイアだけが、アルト殿下と私を交互に見ている。


「我らが調べたところ、そこにいるヴェロニカ嬢が古代の聖女の生まれ変わりというのは、全くの誤解だということがわかったのです!」

そう言うと「おおっ」とわざとらしく声があがる。

あまりにも整いすぎた反応で、むしろ違和感しかない。

どこか芝居じみた声に、私ひとり、ドキドキとしていた。


わざとらしい声を聞いてわかってしまった。

どういうわけか、ほとんどの人がこの茶番劇のことを知っているようだ。

逆に怖い。

視線の動きまで揃っていて、逆に不自然だ。

「本当の古代の聖女の生まれ変わりは、ミレイアさんでした!」

アルト殿下の紹介が、雑だ。

どうしてそういう結論になったのか、というようなことは、一切なし。

それなのに「おお!」とまた声があがった。

なんだこれ。

違和感しかない流れなのにミレイアはしずしずとステージに上がって一礼する。

裾を整え、視線を伏せ、完璧な聖女の所作を見せた。

ゆっくりと顔を上げる動きすら計算されているようだった。


衣擦れの音を立てながら、誇らしげに背筋を伸ばしてステージから全体を見渡すような仕草をした。

そうして、ドヤ顔で私を見た。

敗者を見る視線。

勝利を確信したような目線が刺さる。

私が何か言おうとして口を開くと、それをアルト殿下が遮る。


「では、そういうことで。ミレイアさん、いってらっしゃい!」

雑。

アルト殿下の退場の指示が雑すぎて、思わず、アルト殿下を見てしまった。

ミレイアは数人の神官に「どうぞどうぞ」「参りましょう」と押されている。

一見丁寧だが、完全につまみ出されている絵だ。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!まだ、ざまぁは終わってないでしょ!」

ミレイアがそう言って、押していた神官の間をするりと抜けて戻ってきた。


「嘘ついたその…偽古代の聖女の生まれ変わりはどうするのよ!」

ミレイアがそう言って私を指差す。

声が裏返りかけているのに、なんか強気だ。

広間の視線が一斉にミレイアへ集まる。

人を指差しちゃいけませんって、教わらなかったんだろうか。

そんな場違いなことを考えてしまうほど、状況は奇妙だった。


アルト殿下が私とミレイアの間に立ってくれた。

さすがに、アルト殿下を指差すのは悪いと思ったのか、ミレイアは指をおろす。

今、この場面だけを見れば、『悪役令嬢』の立ち位置にいるのはミレイアだ。

私はヒーローに庇われている、ヒロインの立ち位置にいる。

なんだか変な感じになってしまった。


あらためて、今、この世界は、ゲームの世界ではないのだと確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。