44 アルト殿下の作戦の裏側と、腹黒。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
「あの…アルト・アズリオン殿下…あのっ…」
ミレイアと話した後、アルト殿下は私の手をとって歩き出した。
礼拝堂みたいなところを出て、私の部屋までくる。
よく私の部屋をご存知で。
「アルト…アルトって呼んで。…アルでもいいよ」
アルト殿下がそう言って、私を抱きしめる。
色々伝えたいことが多すぎて、1度、深呼吸をする。
「…ミレイアさんに、嘘をつきましたよね」
古代の聖女の生まれ変わりは、チヤホヤされてるわけじゃない。
恐れられて、忌まわしがられている。
それに、祈りの島とは地の果て。
1度行ったら帰ってこられない。
一生、働く必要はないけど、贅沢ができるわけでもない。
「嘘…言ったかな。覚えてないや」
アルト殿下がそう言って、私を抱きしめている。
「アルト・アズリオン殿下…これは、よくないことです」
嘘をついて、私の代わりに地の果てに送るなんてできない。
「ミレイアが君の代わりになってくれれば、俺たちは結婚できるんだよ?」
「誰かを犠牲にして、幸せになれると思いますか?」
「思うよ!…じゃあ、ほかにどうすればいい?どうしたら、ヴェロを地の果てに送らずに済むんだい?」
アルト殿下がそう言って、私をはなしてくれない。
「アルト・アズリオン殿下。…また、光の、扉で、会いにいきますから…」
嘘をついた。
アルト殿下の体が、ピクリと動く。
上手く騙せるかもしれない。
「…うん。ヴェロは嘘をつくのが下手だね。光の扉は、もう出ないんだろ?」
そう言われて、バレたかと……ん?
「どうして、知ってるんですか?」
「光の扉がパンパン出るなら、ヴェロはもっと前から使ってるだろ?」
アルト殿下にそう言われて「そうですね」と笑った。
「それにね、ヴェロ…」
アルト殿下がベッドに座るようにうながしてくれる。
「ミレイアは…自分の私欲のために戦争を引き起こしてる。…あれを聞いたとき、はらわたが煮えくり返る思いだった」
アルト殿下がそう言って拳を握る。
「あの戦争で、多くの民が苦しんだ。王は…俺の父は、大切な部下も失った。光魔法が使えることを差し引いても、死罪が適用される重罪だ」
アルト殿下が何かを思い出しているのか、苦しそうな顔をした。
私も戦争の起こっていた時期は、戦争に巻き込まれることこそなかったが、食べるものがなくて苦労した。
郊外の郊外に住んでいた私ですら大変だったのだ。
市街地に住んでいた人達は、それは大変な思いをしたことだろう。
「…それを、終身刑にしてやろうっていうんだ。悪くないと思わないか?」
アルト殿下は、やっぱり腹黒いんじゃないだろうかと思った。




