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破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


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43/50

43 提案する作戦に、絶句。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

礼拝堂みたいなところを出て、私の部屋までくる。

よく私の部屋をご存知で。

「アルト…アルトって呼んで。…アルでもいいよ」

アルト殿下がそう言って、私を抱きしめる。

腕の力は強すぎるわけではないのに、逃がさないという意思だけがはっきりわかる。

夢ではないアルト殿下の体温に、少し、気持ちが揺らいだ。

このまま、イチャイチャしててもいいんじゃないだろうか。

そうも思ったけど。


色々伝えたいことが多いから、1度、深呼吸をする。

「…ミレイアさんに、嘘をつきましたよね」

古代の聖女の生まれ変わりは、チヤホヤされてるわけじゃない。

神殿で語られてきた記録や噂話の断片が頭の中に浮かび、胸の奥がざわつく。

恐れられて、忌まわしがられている。


それに、祈りの島とは地の果て。

地図の端に小さく描かれるだけの、何もない島。

1度行ったら帰ってこられない。

一生、働く必要はないけど、贅沢ができるわけでもない。


「嘘…言ったかな。覚えてないや」

アルト殿下がそう言って、私を抱きしめている。

覚えていないのも、嘘。

「アルト・アズリオン殿下…これは、よくないことです」

嘘をついて、誰かを私の代わりに地の果てに送るなんてできない。


「ミレイアが君の代わりになってくれれば、俺たちは結婚できるんだよ?」

「誰かを犠牲にして、幸せになれると思いますか?」

「思うよ!」


言い合っていた言葉が、途切れる。

アルト殿下に、ヒドイことをさせているという罪悪感に襲われた。

これは私が、両親からアルト殿下の暗殺の手伝いを命じられたときの。

あれと同じなんじゃないだろうか。

私の幸せのために、アルト殿下にヒドイことをさせるなんてできない。


「…じゃあ、ほかにどうすればいい?どうしたら、ヴェロを地の果てに送らずに済むんだい?」

アルト殿下がそう言って、私をはなしてくれない。

むしろ少しだけ腕の位置を変えて、より逃げにくい距離に調整された気さえする。

「アルト・アズリオン殿下。…また、光の、扉で、会いにいきますから…」

嘘をついた。

言葉を区切るたびに自分でも苦しくなるような、拙い嘘だった。

アルト殿下の体が、ピクリと動く。

上手く騙せるかもしれない。


そう思っていたら、アルト殿下に真っすぐに見つめられた。

あまりにもまっすぐだったから、すっと目を逸らす。

「…うん。ヴェロは嘘をつくのが下手だね。光の扉は、もう出ないんだろ?」

そう言われて、バレたかと肩を落とす。

…ん?

「どうして、知ってるんですか?」

「光の扉がパンパン出るなら、ヴェロはもっと前から使ってるだろ?」

アルト殿下にそう言われて「そうですね」と笑った。

「それにね、ヴェロ…」

アルト殿下がベッドに座るようにうながしてくれる。


「ミレイアは…自分の私欲のために戦争を引き起こしてる。…あれを聞いたとき、はらわたが煮えくり返る思いだった」

アルト殿下がそう言って拳を握る。

「あの戦争で、多くの民が苦しんだ。ルミナリス王国の民はもちろん、セレネイド王国の民も」

そう言われて、郊外だったけれど物がなくて困ったことを思い出した。

あのときの空腹や不安の記憶が、今になってじわじわと蘇る。

郊外の郊外に住んでいた私ですら大変だったのだ。

市街地に住んでいた人達は、それは大変な思いをしたことだろう。


「王は…俺の父は、多くのものを失った」

アルト殿下は静かにそう言って、視線を伏せた。

「長年仕えてくれた大切な部下も失った。戦で命を落とした者もいれば、責任を取って去った者もいる」

掠れた声だった。

責任…

きっと、その人が悪かったわけじゃないんだろうに、命をとられてしまったのね。


「残された部下たちも、無事だったわけじゃない。家を焼かれた者もいたし、家族を失った者もいた」

私は黙って耳を傾ける。

「崩れた街を立て直すにも金がいる。兵を維持するにも、食料を配るにも、全部金が必要だった。だから父は税を上げた。上げるしかなかった」

その言葉には、責める響きも、誇る響きもなかった。

ただ、どうしようもない怒りを感じた。


「光魔法が使えることを差し引いても、死罪が適用される重罪だ」

そう言ったアルト殿下の顔を見れない。

これまで、ゲームでは見なかった顔を色々と見てきたけれど。

きっと、悲しい顔をしているだろうから。

そっと、アルト殿下の背中を撫でる。

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