02 森へ逃げたら、迷走。
『蒼い誓いと紅い秘密、その扉の向こうで』
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
逃げていいのか、お前はよくても、親はどうなるんだ。
そう思う方もいるかもしれない。
だけど、安心してください。
ヴェロニカ・ルージュリスは、親からも嫌われていた。
ルージュリス家は、ルミナリス王国の中でもお金持ちの貴族の家柄だ。
だから、お金で困ることはなかったけれど、親からの愛情は一切受けられなかった。
光魔法を重んじるルミナリス王国では、光魔法が使えるものが重宝された。
ヴェロニカは、光魔法が使えなかったから。
ただ、それだけの理由で両親からは愛されなかった。
悪役令嬢だから、こんなに冷遇された設定なのか。
理由はわからなかったけど、ともかく、ゲームの中ではヴェロニカが断罪されると、両親はあっさりヴェロニカをルージュリス家から切り捨てた。
きっと、私が逃げたらすぐに私は切り捨てられる。
もうルージュリス家に頼ることはできないだろう。
だから、自分を守るために、持ち出せるお金を持ち出せるだけ持ち出した。
ヒラヒラとした重い服は邪魔だから、使用人の服を拝借する。
異世界転生している私は、キャンプの知識もある。
使えそうなものをリュックに詰めて、いざ、と出発した。
目指すは、セレネイド王国だ。
隣国まで、逃亡する。
夜中のうちに家を抜け出し、日が昇る頃にはずいぶんと遠くまで来ていた…と、思う。
だいたいの地図は頭に入っているから、できるだけ人に会わないで済むように、林や森があるほうに進んだ。
1日を乗り切ればなんとかなる、なんとかなる。
そう、自分に言い聞かせながら進んでいると、森に入ったようだ。
太陽の位置を確認して、方角を確認しながら進んだ。
日が落ちると、洞穴を探して身を隠す。
どこまで来ているのかわからない。
もう、セレネイド王国に入れているかもしれないけど、油断できない。
明日の朝が来るまでは…
カサっと音がするたびに、誰かが私を捕まえに来たんじゃないかと怯えた。
今は野獣より、そっちのほうが怖い。
ほとんど眠ることができないまま、朝を迎えた。
…朝。
卒業式が終わった。
全身の力が抜ける。
なんとか、断罪イベントを回避できた…と、思いたい。
フラフラと立ち上がって進んでいくと、森から抜けることができた。
道を歩いていた人に、ここがどこか尋ねてみる。
「ここはもう、セレネイド王国だよ。…あんた、大丈夫かい?」
そう言われて、泣きながら「大丈夫です」と答えた。
ルミナリス王国からは逃げ切ることができたような気がして、本当に嬉しい。
そこからは少し休憩しながら歩いて、市街地を抜け、郊外まできた。
ルミナリス王国から見ると、セレネイド王国の端の端。
ここまでこれば大丈夫だろう。
持ち出したお金で、小さな小さな家を購入できた。




