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破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


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18/50

18 図書室で相談して、想起。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

「ああ、そうか…いや。最近、図書室で見かけないから…体調でも崩したのかと思って」

言い直すように、視線を少し逸らしながらそう言う。

なるほどと思った。

「王妃教育が…忙しくて。ご心配いただき、ありがとうございます」

軽く頭を下げると、アルト殿下の表情がわずかに緩んだ。

結局、挨拶できていないけど、まあいいだろう。

それよりも今日は、最難関のミッションがある。


「あの…アルト殿下に、大変…その…図々しいお願いがあるのですが」

言葉を選びながら、慎重に口を開く。

私がそう言うと、アルト殿下は少し固まって、首を傾げて、目を輝かせた。

表情が順番に変わっていくのがはっきりわかって、ちょっと面白い。

「なんだい?なんでも言ってごらん」

どういう心境でそのセリフ?

まるで、父親が娘におねだりをされて、喜んでるみたいな声色になっている。


「その…シエル殿下にお願いをしていただきたくて…」

そう言うと、ちょっとアルト殿下の肩が落ちた気がした。

気のせいかな?

「シエルに…何をお願いしたいの?」

そう尋ねられて、リリアーヌ嬢を運動させよう作戦を説明した。

アルト殿下にシエル殿下の婚約者の話をしてもいいんだろうかとも思ったけど。

途中で自分でも少し突拍子もない作戦だと思いながら、それでも最後まで言い切る。


「…状況はわかったけど、君も参加する必要はあるの?」

アルト殿下がつまらなそうに言う。

「一応…そうですね」

短く答えながら、視線を少し下げる。

シエル殿下の側妃になる予定ですからと言いそうになって、なんとなくやめた。

あらためて考えると、私ってヒドイ経歴だ。

廊下の窓から差し込む光に一瞬目を細めながら、頭の中で自分の立場を整理する。


アルト殿下の元婚約者で、シエル殿下の側妃予定。

そりゃあ、侍女や他のご令嬢たちから嫌われるはずだ。

実は、王城にきてからというもの、1度もご令嬢たちからお茶会に呼ばれたことはない。

廊下ですれ違うことはあっても、声をかけられることはほとんどなかった。

一応、シエル殿下の側妃候補なのに、だ。


シエル殿下のご両親に挨拶すらさせてもらえていない。

もしかしたら、王や王妃、現王の側妃にも嫌われてるのかな…

これが悪役令嬢の定めなのか。

でも、ここまで嫌われなくてもいいのに。


ここで少し、整理をすると。

アルト殿下とシエル殿下の父は、現在の王である。

アルト殿下の母は正妃、シエル殿下の母は側妃だ。

ただ、シエル殿下の母、つまり側妃のほうがかなりお若い。

そのため、王は側妃を溺愛されているという噂だ。

本当かどうかは、知ったことではないけどね。


正妃にも側妃にも、次期王となりうる皇子がいる。

だから、正妃と側妃は仲が悪いと言われているのだ。

ただ、私は正妃にも側妃にも挨拶ができていないから、その噂が本当なのかどうかを確かめたことはない。

正直、どうでもよかったし。


「…シエルには、俺から言っておくよ」

アルト殿下は少し考えて、視線をほんの一瞬だけ上に向けたあと、そう言ってくれた。

私は心の中で呟いた。

ミッションコンプリート。


「ありがとうございます!…それでは」

軽く頭を下げ、踵を返そうとして一歩踏み出したところで「今日は本を読んでいかないの?」と呼び止められた。

背中越しにかかる声が、図書室の静けさにやけに響く。

うっかり、ミッションコンプリートで満足してしまった。

どうしようかなと悩んで、1度、小説を手に取る。


表紙の質感を指先で確かめながら、無意識にページを開く。

パラパラとページをめくって、残りのページを確認した。

指先で紙の端をなぞるたび、終わりが近いことがはっきりしていく。

これを読んだら、ここにくる意味がなくなるんだな…


「もう少し…いえ。今日は、失礼させていただきます」

まだ、自分でこの時間を終わらせる覚悟ができなくて、本を棚に戻した。

ゆっくりと背表紙が並ぶ列に差し込むとき、少しだけ名残惜しさが残る。

いつか、ちゃんとこの気持ちにケリをつけるから。

もう少しだけ時間をください。


誰にお願いしているのかはわからないけど、心の中でそう思った。

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