15 図書室でうっかり、熟読。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
婚約者 リリアーヌ・マーロウ 雷魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
先生 カサンドラ
不自然な体勢でお辞儀をしながら、アルト殿下の言葉を待つ。
「…っ、あ、ああ。そうか。いや…そんなに、かしこまらないでくれ」
アルト殿下がそう言ったので、とりあえずは頭を上げる。
「そういうわけには。ここは学園でもありませんし、アルト・アズリオン殿下は我が国の王族でいらっしゃいますから」
学園では身分を問わないというルールがあった。
王族やら貴族の階級で、暗黙の了解的に挨拶の順番とかは決まっていたものの、学園内では簡単な挨拶で許されていた。
パン屋さんをしていたときは、私は一応、隣国の住人で、アルト殿下は隣国の王族であったから挨拶をすっとばしていたのだ。
今、この場所で、堅苦しくない挨拶などしたら、首が飛ぶ。
「…本を、読みにきたのかい?」
アルト殿下は私の言葉を無視して質問してきた。
「はい。久しく読んでいなかったので。…ですが、アルト殿下のお邪魔になるようですので、私はこれで」
そう言って礼をして去ろうとして、本を渡された。
「これを、読みにきたのかと思って。…邪魔じゃないから、読んでいくといいよ」
そう言われて本を見ると、たしかに私が読みたかった本だ。
少し悩んだけれど、アルト殿下に差し出されたものを無下に断っていいのかわからない。
「…あ、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて少し拝読させていただきます」
そう言って、少し歩いたところにあるテーブルで読むことにした。
するとなぜか、アルト殿下が私の後ろの席で本を読み始めた。
テーブルはあちらこちらに、たくさんある。
わざわざ少し歩いたところにあるテーブルを選んだのに、なぜ近くに座るのか。
シエル派の私のことを見張るため、かもしれない。
そう思ってチラッとあると殿下を見たけど、普通に本を読んでるっぽい。
ちょっと読んで、部屋に帰ろう。
そう思い直してページをめくる。
読んでいるのはもちろん、恋愛小説だ。
乙女ゲームが好きな私のことをご存知な方ならわかるだろう。
キュンキュンしたいの。
現実ではこんな風にキュンキュンできないもん。
せめて、小説の中だけでも好きだの嫌いだのって気分に浸りたい。
そんなわけで、うっかり没頭する。
ちょっと読むだけのつもりが、すっかり遅くになってしまった。
そろそろ帰ろうかなと立ちあがって振り向くと、まだアルト殿下が本を読んでいる。
アルト殿下は、剣を振ってるイメージしかなかったから熱心に読んでいるのが意外だった。
何も言わずに立ち去るのもと「お先に失礼いたします」と声だけかけてみた。
アルト殿下はチラっと私を見て「ああ」と言うと、視線を本に戻す。
よっぽど面白い本なのだろう。




