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破滅エンドが確定しました。悪役令嬢ですが知ったこっちゃない、逃げる。  作者: 西園寺百合子


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13/50

13 正妃と側妃で、問題。

悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法

皇太子  アルト・アズリオン    水魔法

皇太子弟 シエル・アズリオン    風魔法

婚約者  リリアーヌ・マーロウ   雷魔法

ヒロイン ミレイア・ノクス     光魔法

先生   カサンドラ

じゃあこの、リリアーヌと呼ばれた女の子は、誰?

前回の王妃教育は1人で受けたから、当然1人で受けるものだと思っていたので、先生でもない女の子の出現に目をぱちくりとさせた。

「今日は、お互いの自己紹介が必要なようね」

すらりとした女性は私の反応を見て察してくれた。

「私は、カサンドラ。王妃教育を担当する講師です。カサンドラ先生と呼んでくださいね」

カサンドラと名乗った女性は、主にリリアーヌにそう言った。


声の調子は柔らかいが、私への悪意がにじみ出ている。

「カサンドラ先生。私は、リリアーヌ・マーロウです。シエル殿下の婚約者ですわ」

可愛い女の子が、そう言って胸を張った。

小さな体を精一杯大きく見せるように、顎を上げている。

髪がふわりと揺れて、本人の自信をそのまま形にしたようだった。

この子がシエル殿下の婚約者だったんだ。


え?正妃と側妃が、一緒に妃教育を受けるの?

まばたきが増える。

この子、私が側妃ってわかってるのかしら。

その前に、側妃がなにか、わかってるんだろうか。

どう見ても、幼い。


「えっと…ヴェロニカ…、ルージュリスです…」

声がうまく出ていかない。

なんて続けたらいい?

正妃に、側妃ですって言うべき?

正解が浮かばず、助けてくれるはずもないカサンドラ先生をチラッと見た。


「はい、では、この3人で勉強していきましょう」

カサンドラ先生が、パンパンと手を叩いて挨拶の終了を促してくれた。

この雰囲気からするに、リリアーヌ嬢もカサンドラ先生も私が側妃だということはご存知なのだろう。

そうなると、ますます私がここで妃教育を受ける理由がない気もするんだけど。

そう思った30分後。

なぜ、私がこの王妃教育に参加することになったのか、少しわかった気がした。


「はい、リリアーヌさん。休憩はそこまでにして…そこまでにして、そろそろ…」

カサンドラ先生が困っている。

視線をお菓子の皿と少女の間で往復させながら、言葉を選んでいる。

勉強を初めてすぐ、リリアーヌ嬢は飽きてしまったようで、お菓子を食べ始めた。

小さな手が遠慮なく皿へ伸びていて、口元にクッキーの欠片が少しついているのが、妙に子どもらしい。

歳をうかがわなかったけど、シエル殿下と同い年なら7歳。

長い時間の勉強は疲れるんだろう。


ここに呼ばれた理由が、私が思っている通りだとすれば、私がやらなければいけないのは王妃教育じゃない。

リリアーヌ嬢に、王妃教育を受けさせることだ。

「カサンドラ先生」

そう言って、手を挙げる。

「え?…あ、はい、ヴェロニカさん」

そう言って、律儀にカサンドラ先生は私を指名してくれた。

「もしよろしければ、カサンドラ先生がご存じのアズリオン王家の歴史をお聞かせいただけませんか?リリアーヌ様も、アズリオン王家のことは興味がおありではないでしょうか」

そう言うと、カサンドラ先生は私が言いたいことがわかったようだ。

一瞬だけ目が合い、わずかに頷く。


アズリオン王家、つまり、シエル殿下のことなら興味があるかもしれない。

アズリオン王家の歴史とはつまり、ルミナリス王国の歴史でもある。

教科書の内容をただ読むのは、たしかにツライ。

それとなくシエル殿下のことをはさみながらで伝えれば、歴史を覚えてくれるかもしれないと思った。

実際に私も、歴史とか小難しいことは苦手だったが。

推しのアルト殿下のことだと思うと、するするとルミナリス王国の歴史が頭に入ってきたものだ。


「まあ、シエル殿下のことなら、私も是非、うかがいたいですわっ」

思った通り、喰いついた。

それからときどき、カサンドラ先生に助け舟を出す。

授業の流れが途切れそうになるたびに、無理矢理、シエル殿下を結びつける。

私がここに呼ばれた理由は、やっぱりこれなんだなと悟った。

リリアーヌ嬢の侍女が、こっそり私に頭を下げている。

いいんですよ、これくらい。

そんな気持ちになった。


なんやかんやと手を尽くして、なんとかしているけど、リリアーヌ嬢は勉強嫌いだ。

私も好きな方ではないけど、輪をかけて嫌っている。

嫌いな教科のときには頬を膨らませたり視線を逸らしたりと、分かりやすく態度に出てしまう。

王妃になる人が、これはよくない。

まだおそらく7歳。

このあたりは、礼儀作法の先生にどうにかしてもらうとして。


歴史やアズリオン王家の歴史ということでクリアした。

言語はラブラブなラブストーリーで、なんとか学ばせることができている。

カサンドラ先生が身振り手振りを交えたり、恋愛劇の一節を例に出したりしながら説明すると、リリアーヌ嬢は頬を赤くしたり笑ったりして興味をもっているようだった。

最近では諸外国の恋愛小説が入ってくるので、それを題材にすることで、さらに興味を持ってもらえたようだ。


問題は、算数。

数学なんて難しいものじゃない。

足して、引いて、割って、かける。

それだけでいいのに、これを全く覚えようとしない。


「リリアーヌ様、ご覧ください。りんごが2つと、桃が3つ。合わせるといくつでしょう?」

カサンドラ先生が必死に食べ物で興味をひこうとしている。

手元には本物の果物が用意され、机の上に並べられているが、リリアーヌ嬢は椅子の背にもたれ、興味なさそうにそれを見ている。

「私がりんごを1つ食べるわ。あとは知らない」

そう言って、リリアーヌ嬢はりんごを剥いてと侍女に差し出している。

これは、お手上げだ。

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