11 連れ戻されて、絶望。
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
ルージュリス家を飛び出してから、何度も悪夢を見た。
父と母に家に連れ戻されて、アルト殿下が暗殺されて、私が処刑される夢。
いつも、ギロチン台に首を固定されて、刑が執行されるところで目が覚める。
起きることができて、夢でよかったと、泣きながら起きた。
でも、今日は、夢ではないみたいだ。
目の前にいるのは、現実の父で、現実の母。
私を人として見てくれない、血が繋がっているというだけの人間。
従者らしき人が私を羽交い絞めにした。
「何をするんですか?」
声が震える。
「何って…帰るに決まっているだろう」
そう言われて、馬車に押し込まれて、ロクな抵抗もできないままルージュリス家に連れ戻されてしまった。
でも、大丈夫だ。
アルト殿下との婚約は破棄されている。
私がアルト殿下を暗殺することも、暗殺する手助けをすることもない。
そう、思っていた。
ある日の夕食までは。
無駄に広い食堂に、無駄に距離をとって、父と母、私がテーブルについている。
特に話すこともないのに、どうして一緒に食事をするのかわからない。
「喜べ、ヴェロニカ。お前に縁談だ。もう、受けてきた」
父が突然、そう言った。
どうやら私は、どこかに嫁がされるようだ。
この家にいなくていいなら、それもいいかもしれない。
「まあ、よかったわね。で、いつお城に?」
母が上機嫌で父に尋ねた。
ドクンと心臓が波打つ。
もしかして、相手はアルト殿下なんだろうか。
それは…暗殺をするのも手伝うのも嫌。
「私、アルト殿下とは結婚いたしません!」
ガタンと椅子を押し倒して立ち上がる。
父と母は静かに私を見て「ふんっ」と、言った。
「アルト殿下とではない。シエル・アズリオン殿下とだ」
そう言われて、ますます意味がわからなくなった。
「シエル殿下?…シエル殿下は、私の10歳年下ですよ?」
「あら。歳をとれば、10歳差なんて大して気にならないわ」
母がそう言って、笑った。
冗談じゃない。
大人の10歳ならたしかにそうだ。
でも、私。
この世界では19歳ですよ?
シエル殿下は、9歳。
犯罪です…
「それと、お前は正妃じゃない。側妃だ」
父にそう言われて、体から力が抜けた。
側妃…いわゆる、側室。妾。正妻公認の愛人。
9歳のシエル殿下の、側妃。
父と母の考えは、理解できた。
シエル派で大きな力を得るために、私を側妃にしたんだろう。
おそらく、無理矢理。
本当に私は、この人たちにとって道具でしかないようだ。




