10 お別れをして数年、悲劇。
『蒼い誓いと紅い秘密、その扉の向こうで』
ヒロイン ミレイア・ノクス 光魔法
皇太子 アルト・アズリオン 水魔法
悪役令嬢 ヴェロニカ・ルージュリス 炎魔法
皇太子弟 シエル・アズリオン 風魔法
アルト殿下には、ルージュリス家のことを正直に話した。
殿下は私の話を最後まで聞いてくれた。
話を遮ることなく最後まで聞いて「わかった」と小さく言葉を発した。
「それが、君が俺と結婚できない理由なんだね」
アルト殿下がそう言って寂しそうに下を向く。
「はい。家のことで、アルト・アズリオン殿下にもご迷惑をおかけいたします」
そう言って頭を下げた。
「私との婚約が破棄になったからと言って、ルージュリス家がアルト・アズリオン殿下の暗殺を諦めるとは思えません。どうか、お気をつけください」
そう伝えると「ありがとう」と言われてしまった。
私は何もできないまま、アルト・アズリオン殿下と別れることとなった。
ここから先は、アルト殿下に頑張ってもらうしかない。
私は私で、この世界でなんとか生きていかないといけないもの。
お別れというとき「あなたが最推しだったんです」と言おうか言わないでおこうか悩んだ。
もう2度と会うことはないのだし、伝えてもよかったかもしれない。
でも、それは自己満足にしかならないからやめておいた。
アルト殿下と再び別れてから、3年が過ぎた。
平和につつがなく暮らして…いたかったのだけど。
世の中は大きく変わっていた。
1年前、突然始まった戦争。
私が住んでいるセレネイド王国が、アルト殿下のいるルミナリス王国に戦争を仕掛けたのだ。
結果、ルミナリス王国が勝利。
私が住んでいるのは市街から離れた郊外も郊外だったから、直接的な被害はなかった。
でも、物価は上がるは、物は入ってこないわで生活は一変していた。
セレネイド王国は、全土をルミナリス王国の支配下にするという条件で降伏したらしい。
逃げてきたのに、結局、ルミナリス王国の住人となってしまった。
災難だったのは、私が住んでいた地域が郊外も郊外で、ルミナリス王国の支配下になったのを知ったのが、ルミナリス王国の支配下となってからずいぶん経ってからだったということだ。
いつものように、ありものでパンを焼いていると、カランカランとベルチャイムが鳴った。
「いらっしゃいませ。今日もね、食パンくらいしかないのよ」
そう言って振り返ると、父と母が立っていた。
驚き過ぎて、何も言えないまま立ち尽くす。
カツカツと父が近づいてきて、頬を思いきりぶたれた。
頭がパニックになっていたこともあって、体を支えきれずに、床に崩れ落ちる。
「この、親不孝者が!こんなところで何をしてるんだ!」
そう言われて、ようやく頬がジンジンと痛み始める。
残念なことに、これは現実に起きていることらしい。




