第85話 偵察
リカード隊長が目的の島に近くなったと言いに来てくれたため、亀様は船内の部屋でゆっくりすると言って去るのを私は見送った。
亀様に気を使わせてしまったようで申し訳なかった。
船を止めると怪しまれるため、2隻ともこのまま子爵領に向かって走行を継続する。
気持ちを切り替え、私は船から海に飛び込んだ。
地図に書かれていた島2つ。
まずは遠目でも目視できる一つ目の島に近づく。
島を一周したが船が停泊している気配も、桟橋っぽいものもなさそうだったので、もう1つの島を目指して東に進む。
しばらくすると島らしきものが見えてきて、一度海上に顔を出す。
やはり島だったが、地図上では島と島の間隔はまだあるように思っていたが違ったようだ。
ただこの島からは、はっきりとわかる煙が立ち上っているのが2か所ある。
この島は私が開発中の島よりも、もっと陸地から離れているため、人が住むには不便な場所だと思う。
もしかして海賊のアジトか?
私は海の中に戻り、島に向かおうとすると海底から光がチカチカと点滅しているのが見えたため、寄り道をして確認することにした。
近づいた先は大きな岩場で、光って見える場所は岩と岩の隙間だった。
そこに飛び込むと見えていたはずの光が消えてしまった。
目を一度つぶり、すぐに目を開いてみても光はなかった。
私は不思議に思いながらも方向転換して岩の間から出ようとしたら、岩の上を大きな物体が横切った。
もう一度、下を覗くが光はなく、私は横切った物体を追いかけるために岩から出て泳ぐとクラーケンだった。
しかもクラーケンに襲われている人間の集団、人数的には5、6人いたが私は近づかずに離れた。
本来なら助けないといけないのだが、どう見てもあれは以前襲ってきた海賊の一味のように思えた。
おそらく例の魔道具を使って、海の中で訓練していたのではないだろうか。
もしかして海賊たちの訓練場?
本拠地かとも一瞬思ったが、海賊でも一部の者しか本拠地には行けないと聞いていたから違うと考え直した。
さらに東に進むとまた島らしきものにぶつかったが、こちらには人がいる気配はなく、私は船に戻ることにした。
2か月後、私たちは私が見つけた人が住んでいそうな島へ向かっている。
今回はカーセル侯爵領のベルクさんの船、そしてナビア王国のグレン会長率いる船2隻、私たちの船2隻の計5隻で向かっている。
この事が決定するまでの2か月の間も、私は忙しかった。
島に戻ればブレナンたち大工職人と話し合い、グリフォンたちが安心して子供を産める獣舎を至急作るように指示する。
最初にこの島にやってきたグリフォンがいる獣舎では狭すぎるからだ。
土地も畑方面の土地を整地して建てることになった。
一時的とはいえ、人間が住む場所に近いところはお互いにストレスになるだろうと、我々の住まいから少し離れたところで建てることになった。
グリフォンはセドとナディーヤを気に入っているようなので2人に任せ、私は王都に報告をしに行った。
こんなに王都に出向くことが多くなるなんて、最初に子爵領へ来た時はまったく思わなかった。
王都滞在は数日だけだが、今も実家で寝泊まりしている。
父上が一度倒れかけた後に会った際、私が成人するまで王都に来た時は伯爵家に滞在するようにと言ってきたからだ。
最初は子爵家の屋敷に人を入れるつもりだったが、あまりにも色々なことが起こって手が回っていない。
そして兄上も父上が倒れかけてからは仕事を一部任されているようで、私にちょっかいを出してこなくなったのもあるから、素直に甘えている。
宰相様に報告した後、ナビア王国とアルム王国が戦争になる可能性があることを聞いた。
だからナビア王国にゴーレムや魔獣を従える魔道具の話をするとのことだった。
死の森で亀様は国名をあえて口にしなかったが、私は子爵領に戻った時に冒険者ギルドで、死の森のゴーレム山がある国を尋ねたらアルム王国と聞き宰相様に報告したためだ。
あと宰相様からは、私が見つけた海賊のアジトかもしれない島へ、私たちの船も討伐派遣指示が出る可能性があることを言われたため了承する。
子爵領に戻ると領内と島を行き来して過ごしていたら、1か月ほどして例の島が海賊のアジトだったら討伐するようにと王命が出た。
ただし今回はカーセル侯爵家とナビア王国から派遣される者たちと協力するようにとのことだ。
ナビア王国と子爵領の間にあるカーセル侯爵領か、ナビア王国での集合だと思ったら、アルム国から一番遠い私の子爵領が集合場所とのことだった。
そして準備をしているとやって来た船は、ベルクさんとグレン会長だったのだ。
グレン会長がやって来たのは貿易で来たと思っていたら、海賊のアジト討伐に一緒に行くと言われたときには驚いた。
「ナビア王国には海軍ありましたよね」
「あります。しかし今はアルム国と緊張が高まっていますからね」
私の問いにグレン会長が答えてくれた。
どうやらアルム国との境界に近い海域で巡回するので精一杯らしい。
「グレン会長、いくら元騎士とはいえ国からの無茶ぶりに反論しなかったのですか?」
条件が良く、我々との共闘だから引き受けたとか。
「今回連れてきた者たちは海賊討伐も何度か経験ありますから、足を引っ張ることはないはずです」
フェリクスと話していた憶測は当たっていたようだ。




