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わっちの彼ピは、最強ヴィラン  作者: 弥馬田 ぎゃん


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VSポイリー戦 その2

ポイリーは、大改修でダンジョン並みに広くなった首相官邸内を彷徨う天条誠人の姿を視認し、近づく。

「天条様。ここで何を?天条の間におられたのでは?」

「うむ。少し道をど忘れしてしまってな。天条の間まで、案内してくれるか?」

「かしこまりました」

ポイリーは、目の前の天条に深々と頭を下げると、頭を上げると同時に銃で射撃した。

銃弾は、目の前の天条の胸元にめり込み、天条の顔は、ぼろぼろと崩れて、剥がれ落ち、土となって地面に落ちていった。天条の服もばらばらと土となって、剥がれて次々とその内側を晒す。

そこに立っていたのは、天条誠人ではなく、紫色のセンスの悪いコート姿のセブンだった。

「私の能力には、騙し討ちは、効きませんよ。セブンさん」

とポイリーは、目の前のセブンの心臓のある位置の胸部へと銃口をスライドさせ、言った。

「果たして、本当にそうかな?」

病人のような面のセブンは、銃を向けたポイリーの腕を両手で掴み、そのまま銃ごとポイリーを自らの身体へと深く沈み込ませた。

ポイリーの銃を持った方の片腕は、肘の辺りまセブンの身体に吸い込まれてしまう。

セブンの顔は、ポイリーの目の前でドロドロと溶けるように崩れて、土塊と化し、ポイリーの片腕を包み込んでいる身体も土塊と化し、ポイリーの片腕を包み込んだまま、かちかちに固まった。

「私の能力を使っても、見抜けないとは、さすが、詐欺師と言いたいところですが、こんな茶番で勝ったつもりですか?」

とポイリーは、後ろに立つ人物に振り返らずに言う。

「御影尾道さん」と――。

ポイリーの後ろに立っていた御影尾道は、ミニペットボトルのキャップを外し、ポイリーの頭へと水をそそいだ。

「チェックメイトだ」

御影尾道は、優越的な自信に満ち溢れて、そう言い、

「これで、俺がうんと唱えれば、あんたは、爆死する」

とわざわざ死刑宣告してみせる。

「外の大勢の敵は、佐藤が惹きつけてくれているし、天条誠人も今頃、感知能力の高いフレアが見つけて、焼き殺しているはずだ。唯一の懸念は、そこに誰かの邪魔が入ることだが、ジョンが無線で厄介な敵がいると俺らに知らせてくれたおかげで、それもこうして解決できた」

御影達は、無線機能も搭載しているパーフェクト・ノイズ・キャンセラー、PNCのおかげでポイリー撃退の策を講じることができたのだ。が、それは、完璧ではなかった。

ポイリーは、全く余裕を崩さずに振り返らずに言う。

「今頃、天条様は、焼き殺されているはずだとあなたは、(おっしゃ)いましたが、果たして、本当にそうでしょうか?」

御影尾道は、ポイリーの余裕の意味がわからなかった。

が、ポイリーの身体にかかった水滴が一滴残らず、ポイリーから離れていくのを見て、事態が自分に決して優勢ではないと察する。

瞬間、凄まじい爆発音がして、御影から見て、左側の壁が崩落。

その崩落と共にフレア・カモニークスキーが吹き飛ばされて、首相官邸内に入ってくる。

「こいつ、強すぎる……っ!!」

と倒れたままの姿勢でフレア・カモニークスキーは、言った。

御影尾道がフレアの視線を追い、外に目を向けるとそこには、宙に浮いた佐藤 実がいた。

「おい、どうした!?もう、俺らが勝ったんじゃないのか!」

激しい崩壊音にジョン・カールソンが心配して、空を駆けて、戦線に復帰する。

「こいつ、キャンセラーが外れているぞ!」

とジョン・カールソンは、佐藤 実を見て、言う。

「操られているのか?」

御影尾道の予想通り、佐藤 実は、すでに天条誠人の催眠能力により、敵側の支配下に置かれていた。

ポイリーの身体に付着した水分を全て取り除いたのも、佐藤 実の能力によるものである。

「天条は、何処(どこ)だ!?操ってるなら、近くに奴がいるはずだろ!!」

吠えるようにジョン・カールソンは言い、飛んで辺りを見回すが、天条誠人の姿は、見えるところの何処にもなかった。

その間にポイリーの片腕を捕らえていた土塊は、佐藤 実の能力によって、ポイリーの片腕から反撥して、剥がれて離れていく。

解放されたポイリーは、振り返って、

「実くん、セブンさんは、地中にいますよ」

と指示を出す。

すると、地中に隠れていたセブンは、首相官邸の床や土ごとくり抜かれるように浮上し、引きずり出された。

フレアは、立ち上がり、敵味方など関係なく、佐藤 実に向かって、魔法の炎を発生させ、放射するも、魔法の炎は、すぐに逆流して、佐藤 実に近づけない。

魔法の炎を燃えない炎にフレアが切り替えたから、御影達は、助かったが、危うく逆流した炎に飲み込まれ、味方に焼き殺されるところであった。

「佐藤の能力は、反撥か引き寄せか、いや、その両方か。彼の能力がここまで強力とは。彼一人を残していったのは、失敗だったか」

御影がそう言っている間にセブンと剥がされた床と土は、佐藤 実の能力によって、ジョン・カールソンに向かって、吸い寄せられるように土竜(どりゅう)のようになって、飛んでいっている。

それをジョン・カールソンは、風の力で空中を滑空して避ける。

「ジョン!どうやら、君の風は、佐藤は、操れないようだ!かまいたちで佐藤を攻撃しろ!」

そう指示を出している御影やフレアの身体も佐藤 実の能力によって、すでに浮き上がっている。

「そんなことしたら、佐藤が死んじまう!」

空中を逃げまわりながら、言うジョン・カールソンに

「そんなことを言ってる場合か!このままでは、全員、PNCを破壊される!全滅するだけならいいが、俺達、全員が操られたら、世界は、終わりだ!」

と御影尾道は、怒鳴りつける。

「ようは、実を止めりゃいいんだろーが!操ってる天条が見えないって事は、実に指示、出してんのは、そこのおっさんだろ!」

ジョン・カールソンは、飛びながら、ポイリーに照準を合わせる。

ポイリーは、それを笑みを浮かべて、眺めている。

「ダメ!そいつを攻撃しちゃ!この魂の熱の形は、きっと!」

とフレアが叫ぶも、すでにその時には、ジョン・カールソンは、ポイリーに向け、かまいたちを放っていた。

フレアの魂の熱の伝導によって、ポイリーの能力が仲間全員に遅れて伝わる。

ポイリーは、かまいたちでその身を引き裂かれ、血飛沫を上げ、絶命し、同じようにフレアも身体を大きく切断され、血飛沫を上げ、絶命した。

何が起こったのか、御影尾道とセブンとジョン・カールソンの三人は、すでにフレアから送られたメッセージで理解していた。

しかし、それで事態が終息するわけではない。

佐藤 実の催眠状態は解けず、佐藤 実は、己の能力を行使し続け、三人を襲い続けていた。

「うぁああああ!!!!」

ぷつんと何かが切れてしまったように、ジョン・カールソンは、獣のような咆哮をあげ、暴風を浴びせ、佐藤 実を吹き飛ばした。

佐藤 実の能力の行使が解かれ、自由となり、空中から自らが土で作った大きな手の平に着地するセブン。

御影尾道は、ジョン・カールソンが空中で拾いあげ、地面へと降ろす。

「殺したのか?」

とうなだれるジョン・カールソンに佐藤 実のことを訊く御影尾道。

「いや、風で遠くまで吹き飛ばしただけだ。風のクッションを付けてな。死には、しないだろうが、簡単には、帰って来れない」

とジョン・カールソンは、答え、涙声になる。

「俺のせいかな?」としゃがんで、フレア・カモニークスキーの遺体に触れる。

「しょうがないだろ。あの時点の君は、あの男がテレパシストと知らなかった。まさか、自らの死も他者に伝達して、相手を死なせることができるなんて、そんな能力、予想しようもないよ」

御影尾道は、ジョン・カールソンの肩にそっと手をつける。

「お前の能力で生き返らせれないのか?」

と土の手の平から土の階段を作って、降りてきたセブンが訊く。

はっと顔を上げて、御影尾道を見るジョン・カールソン。

「期待に応えられなくて、申し訳ない。ここまで出血の酷い大きな傷では、無理だ。生き返らせても、死になおすだけだ」

という御影尾道の答えにジョン・カールソンは、顔を伏せる。

「行こう。彼女の死を無駄にしない為にも、我々は、我々の倒すべき敵を倒さなくては」

御影尾道のその言葉に納得したわけではないが、ジョン・カールソンは、力強い目で立ち上がり、涙を拭う。

ヒーローごっこではないのだ。とジョン・カールソンは、この時、初めて思い知る。

彼の生きるスポーツの世界でも全員が納得したうえで、終わる戦いなどない。

この戦いが終わった時、勝者は、どれだけいるだろう。

三人は、重い足取りで天条誠人の元へと向かう。


フレア・カモニークスキー 天条誠人抹殺作戦から、脱落。


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