VSポイリー戦 その1
「くそっ!チャールズさんから貰った地図と全然、ここ、中の構造が違うじゃねぇか!」
風を操る能力者ジョン・カールソンは、2500万人の手によって、大改修され、大迷宮と化した首相官邸内を高速移動し、一人、彷徨っていた。
そんな彼にピンパラパンポンという音と共に鋭い痛みが走る。
「なんだ!?」
ジョン・カールソンは、思わず、風による高速移動をやめ、急停止する。
見ると、顔面を含めて、全身が細い線のような切り傷だらけになっていた。
全身から不快な耐え難い痺れにも似た鋭い痛みが信号として、走ってきて、彼は、掻きむしりたくなったが、そんなことをすれば、傷口が開いてしまうので、その場で身をよじらせ、悶えるしかなかった。
「あなたの身体をバラバラにするつもりで、仕掛けたのですがね。風の壁とは、そんなにも強力なものだったのですか」
ポイリーの姿が照明を落とした薄暗い首相官邸内で浮かび上がる。
ジョン・カールソンは、その声のがした方へと視線を合わせた。
「何をした?と言いたげな視線ですねぇ。ピアノ線ですよ。ピアノ線をこの広い空間一帯に張り巡らしておいたのです。あなたは、その事を知らずに自ら身体を高速で幾本ものピアノ線へと突っ込ませて行ったのです」
ポイリーは、余裕のあるおどけたような口調を使った。
「あなたを本気で切り刻むつもりなら、ピアノ線ではなく、宇宙ステーションへ行く軌道エレベーターに使う予定の特殊カーボンナノチューブ繊維でも仕掛けておくべきでしたが、さすがにそこまでの事を用意する時間的猶予は、ありませんでした。あなた方が作戦決行日を前倒ししたせいでね。さすが、エージェントチャールズといったところですか」
そう言うポイリーを睨みつけ、ぐるぐると勢いのある風を身体に纏わせるジョン・カールソン。
「もっと強力な空気の壁を作って、強行突破するつもりですか?いいですよ。まだ、この部屋には、たくさんのピアノ線が仕掛けてあります。それ以上、傷を負わずに突破できるか試してごらんなさい」
やたらと自信満々なポイリーに照準を合わせ、ジョン・カールソンは、パン!と前方に向け、手を叩いた。
すると、彼が身に纏っていた空気の渦がさらなるうねりをあげ、強力な密度のかまいたちとなって、前方に飛んだ。
ジョン・カールソンの視界に映るポイリーにそれは、直撃し、木っ端微塵にした。
バラバラと砕け、崩れ落ちるポイリー。
砕ける?
そもそも薄暗い室内でポイリーの姿だけ、しっかりと視認できるのは、不自然である。
それは、最新の大型の電子画面に映った単なる鮮明なポイリーのヴィジョン(映像)であった。
「かまいたちを発生させられる相手に無闇にその身を晒すわけがないでしょう。私は、馬鹿ですか?それとも、あなたが」
とポイリーの声が部屋全体に響いて、白装束達が部屋に殺到。彼ら彼女らの何人かは、ピアノ線で首を落とすも、彼ら彼女らは、それに構わず、手に持ったマシンガンでジョン・カールソンに向け、銃弾を乱射した。
自分に向かってくるそれらの銃弾を全て、ジョン・カールソンは、風で軌道をそらして、躱した。
しかし、白装束達は、四方八方から、同士討ちになる事も構わず、ジョン・カールソンに向け、銃を乱射する。
ジョン・カールソンは、一切の反撃ができない。
「天条様に操られているだけの一般人は、あなたには、殺せないでしょう。ヒーローであることが、あなたの弱点です」
ポイリーの声が無情に部屋全体に響く。
ジョン・カールソンは、堪らず、銃弾を避けながら、上空を飛行し、天井をかまいたちで突き破って、そこから脱出した。
「空を飛べる相手に対して、天井にピアノ線を仕掛けないとは、私が迂闊でした」
たくさんの白装束達に混じっていたポイリーは、そう言って、白装束を脱ぎ去り、次のヒーローを始末しに向かった。
ジョン・カールソン 天条誠人抹殺作戦から戦線離脱。




