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わっちの彼ピは、最強ヴィラン  作者: 弥馬田 ぎゃん


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全員、自己中!?最強ヒーローチーム、まさかのバラバラ!?

その夜、フレア・カモニークスキーとジョン・カールソンと御影尾道とセブンと佐藤 実の五人は、天条誠人の自宅となっている首相官邸の庭の茂みに隠れて、天条誠人抹殺の段取りの打ち合わせをしていた。

が、フレアが

「こんなに能力者が、雁首(がんくび)揃えなくても、催眠術師ごとき、私、一人いれば、充分よ」

と言い出し、カールソンが、

「何、言ってんだ。ここは、五人の中で一番、スピードのある風の能力者の俺に任せるべきだろう」

と張り合い、まるで話し合いとして、まとまっていなかった。

「風?風でどうやって、人を殺すの?そよ風でも、吹かして、奴を風邪にでもするつもり?私の炎なら、首相官邸ごと、いっぺんに焼き払って、それで終いよ」

「おい、やめろよ。首相官邸には、天上の民と呼ばれる一般人もたくさん出入りしてるんだからな。一般人は、巻き込むな。俺達は、ヴィランじゃないんだ。ヒーローなんだぞ。それに、俺の風の能力を二度と馬鹿にするな。俺のかまいたちは、殺傷能力もスピードもお前の炎より上だ」

「風なんて、私の炎をより広げる為に使えばいいじゃない。あんた、私のサポート役に回りなさいよ」

「俺がサポート!?何、言ってんだ。お前の炎なんて、俺の強力な風で簡単に吹き飛んじまうよ」

「バカね。私の炎は、普通の炎と違って、魔法の炎なのよ。あんたの風なんかじゃ消えないわ。相手になるわけないじゃない」

「なんだと。やるのか?いいぞ、かかって来い!お前の炎で風が焼けるもんか!」

フレアとカールソンの相性は、最悪だった。

「二人とも馬鹿なんじゃないですか?」

と5人の中で一番、最年少者の佐藤 実が言う。

「なんだと!生意気な!偉そうに!テメェは、どんな能力を持ってるんだよ!」

「そうよ!あんた、私達に勝てるだけの能力を持っているって、言うの!」

フレアとカールソンの怒りの矛先は、佐藤 実に向いた。

佐藤 実は、

「馬鹿なんじゃないですか?」

とまた言った。

「そんな風に能力者が、簡単に自分の能力をひけらかして、どうするんですか?自ら、弱点を晒して、相手に対策を練られるのが、オチですよ」

と子供らしくない冷ややかな佐藤 実の態度に

「同感だな。仲間とはいえ、自らの能力を晒すのは、能力者にとって、危険な行為だ」

と同意するセブン。

「いや、共同戦線を張る以上、お互いの能力は、ある程度、把握しておくべきだろう」

と反対意見の御影尾道。

それに対し、セブンは、

「我々が味方なのは、今回限りの話だろ?これからの人生の方が長いし、重要だ。リスクを最小限にする為にも、互いの能力は、晒すべきじゃない。少なくとも、俺は、ごめんだ。だから、御影、俺の能力をこいつらにべらべらと喋るなよ」

と言って、御影に釘を刺す。

「深く同意します。僕もいつか、敵になるかもしれない人達に自分の能力は、知られたくありません」

と佐藤 実。御影は、

「しかし、それでは、作戦の立てようがないぞ」

と困り果てる。

「いいんじゃない。それぞれ、勝手に天条を殺しに行けば。誰か一人でも、奴を殺せば、それで任務達成でしょ。私は、能力的に共同戦線よりも、単独行動の方がやりやすいわ」

とフレアは、自分勝手な意見を続け、

「だいたい、このパーフェクト・ノイズ・キャンセラー。PNCだっけ?これも本当に必要?」

と自らの両耳と両目を覆うスキーのゴーグルのような形のものを叩く。

パーフェクト・ノイズ・キャンセラー。通称PNCは、アメリカ軍が開発した天条誠人の催眠術の効果を無効化する装置である。具体的には、天条誠人から、発せられる催眠対象の脳に向けての何らかの視覚的・聴覚的命令信号をAIが自動的に分析し、その信号を催眠対象の脳に到達する前に遮断する装置である。当然、実戦配備は、今回が初めてである。

「それは、絶対に外すなよ。フレア・カモニークスキー。5人の中の誰か一人でも、これを外せば、今回の作戦は、失敗する」

御影尾道は、フレアに強く念を押す。

フレアを含め、御影尾道、セブン、ジョン・カールソン、佐藤 実の五人は、全員、PNCを装着していた。

「おい、あんた。さっきから、勝手にこのエクスエレメンタル5(ファイブ)のリーダーぶるなよな」

とカールソンに言われ、御影尾道は、

「なんだ?そのエクスエレメンタル5というのは?」

と訊ねる。

「何って、俺らのヒーローチーム名だよ。かっこいいだろ?」

とカールソンは、平然と言う。

御影尾道は、困惑の色を顔に浮かべ、

「誰が、そんなのいつ、決めたんだ?チャールズさんか?」

とカールソンに訊く。

カールソンは、闊達(かったつ)な笑みを浮かべ、

「俺が今、名付けたんだよ。かっこいいだろ?」

と同意を求める。

「ダサい」とフレア・カモニークスキー。

「不採用」とセブン。

「センスない」と佐藤 実。

御影尾道は、無言でカールソンの正気を疑った。

「なんでだよ!?かっこいいだろーが!!」

カールソンは、地団駄を踏んで、癇癪を起こした子供のように怒る。

「ちょっと待って。アホな会話してる間に敵に囲まれている」

フレアが四人にそう伝えた瞬間、早くも銃弾が四方八方から飛んで来て、ヒーロー達五人を襲う。

が、放たれた銃弾は、五人に当たる寸前の空中で全て止まる。

「空気の壁?」とセブン。

「ジョン、お前か?」と御影尾道は、カールソンに訊ねる。

「俺は、何もやってねぇよ」と腰を抜かしているカールソンは、答える。

「じゃあ、誰の能力よ、これ?」と勝ち気なフレアの声に不安と困惑が混じる。

「僕ですよ」と答えたのは、両腕を大きく右、左に伸ばし、両手を広げて、額の血管を浮き上がらせている佐藤 実だった。

「ふん!」と佐藤 実が両の拳を力強く握った瞬間、空中に止まった銃弾は、放った者達の元へと来た時と同じスピードで戻る。

五人のいる茂みを取り囲んだ白装束達の何人かが、それで血飛沫を上げ、倒れる。

そう、五人は、すでにマシンガンを持った白装束を着ている者達にぐるりと周りを囲まれていた。

「なんだよ。こいつら、日本政府のセキュリティは、全員、白装束なんか来てるのか?」

カールソンは、彼らの異様な雰囲気に動揺した。

「おそらく、天上の民とかいう奴らだろう」

辛酸を舐めたような表情の具合の悪そうなセブン。

「この人達、魂の熱を感じない。本当に生きてるの?」

フレアは、警戒心丸だしで周りを見渡した。

「厄介だな、この数は」と御影。

白装束達は、御影達をただ取り囲んでいるだけではない。その後ろにも、たくさんの白装束達が控えているのだ。アイドルの握手会どころの数ではない。

「フレア。全員、焼き殺せるか?」

と御影は、躊躇なく、訊いた。

「おい、やめろ!一般人を殺す気か!」

と言うカールソンに御影は、

「そんなことを言ってる場合か!」

と怒鳴る。

フレアは、御影に向かって、

「無理よ。あんたらが邪魔で」

とはっきりと言いきった。

「燃える炎と燃えない炎を同時に出して、精密動作するのは、無理。自分だけ燃えないようにするのは、簡単だけど、あんたらが燃えないように、避けながら、周りの白装束達だけを燃やすのは、無理」

ときっぱりと断言した。

その間もマシンガンが鳴り響き、銃弾が次々と御影達に向かっていたが、その全てを佐藤 実が能力で止めていた。

「どうやら、俺達が一緒にいても、お互いがお互いの能力の発動を邪魔して、存分に力を発揮できないようだ」

御影尾道は、決断する。

「ここは、フレアの案を採用し、一旦、バラバラになって、それぞれ、単独での天条抹殺に向かおう」

御影尾道のその提案をフレアとカールソンとセブンは、無言でうなづき、受け入れた。

「え?え?ちょっと待って」

一人、動揺したのは、佐藤 実だった。彼は、能力を発動していて、その場を動けない。

しかし、そんな彼を無視して、御影は、

「散開!!」と言い放ち、

フレア・カモニークスキーは、炎をブーストにして、飛行し、その場を離れ、ジョン・カールソンは、風をブーストにして、飛行し、その場を離れ、セブンは、土を操り、地中に潜って、移動し、その場を離れてしまった。

御影尾道だけは、残るかと、佐藤 実は、期待したが、御影尾道は、ミネラルウォーターの入ったミニペットボトルを3本取り出し、そのうち一本を頭上に投げ、

「吽!」と唱えて、爆散させ、その水しぶきと水蒸気を目眩ましに自らの進行方向にも、ミニペットボトルを2本続けて、投げ、「吽!」と唱えて、爆発を起こし、爆発と共に姿を消した。

一人、取り残された銃弾を止める役に回った佐藤 実は、

「あいつら〜、俺を置いてきやがった!見捨てやがった!」

と怒りの感情を露わにした。

佐藤 実に銃弾が効かないと見るや、白装束達は、手に持つのをマシンガンからナイフに変えた。

一人ずつ、二人ずつ、三人ずつ、一人ずつ、三人ずつ、二人ずつ、タイミングをずらして、ナイフで斬りかかってきた。

佐藤 実は、能力自体は、常人をはるかに超越しているが、戦闘に関しては、ド素人であり、ただの背の低い子供である。

そのうえ、銃弾のような直線的な動きと違い、人間の動きは、複雑である。

こんな人数、(さば)ききれるかぁあああ!!!

彼は、キレて、自らの能力を最大限まで発動し、(むら)がってくるナイフを持った白装束達を自らを中心に反撥させ、隕石が落ちたようなクレーターを発生させ、周りごと吹き飛ばした。

視界に映る大勢の白装束達は消え、数秒、遅れて、何体かの白装束達が空から落ちて来るが、すでに動かぬ骸となっていた。

佐藤 実の周りに静寂が訪れる。

が、それもほんの数十秒。首相官邸の方から、すぐに新しい大勢の白装束達が軍隊蟻のように彼に向かって、叢がってくる。

「いったい、何人いるんだ?」

2500万人以上である。

アメリカによる天条誠人抹殺作戦の情報は、すでに天条サイドに漏洩していた。

この日、天条誠人は、自らを守る為の戦力として、天上の民を首相官邸及びその付近、地下に至るまで、めぇいっぱいの数を集結させていたのだ。

能力的にではなく、精神的に佐藤 実の手に負える数ではなかった。

継続的に能力の精密動作を行い、相手する数として、今回の敵は、あまりにも多過ぎた。

精神の摩耗。それが佐藤 実の敗因となった。

佐藤 実は、百何体目かのナイフを持った天上の民に捕まり、パーフェクト・ノイズ・キャンセラーを外された。


佐藤 実 天上誠人抹殺作戦から脱落。



その頃、首相官邸内の天条誠人は、配下のポイリーから報告を受けていた。

「天条様。どうやら、彼らがやって来たようです」

「うん、では、手筈通りに頼むよ。ポイリー」

「かしこまりました」

天条誠人に指示され、ポイリーは、首相官邸内のローマ宮殿のような広さと作りの天条の間を出て行く。日本首相官邸は、すでに2500万人以上の天上の民達の手によって、大改修され、どこもかしこも、そのようなスケール、作りになっていて、もはや、ファンタジー異世界の大迷宮かつ人工的なダンジョンと化していた。

「ポイリーに任せて置けば、間違いないだろう。あの男に任せて置けば、確実に能力者のうち、一人は、始末してくれるはずだ」

天条誠人のこの独り言通り、ポイリーの手によって、ヒーローチームのうちの一人が殺されることとなる。

ラスボス前哨戦、VSポイリー戦が始まる。

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