愛とは
おじいさんはガソリンを撒き野犬達と共に自殺したのだ。車のヴァンパーで作った薄い鉄板で洞窟を内側から蓋したが、そんなのほとんど消し飛んだ。
霧子を身体で爆風と炎から守った昂輝は、ヒドいヤケドと背中に刺さった金属片で手術を繰り返した。
が、面会謝絶が解除すると取材が押し寄せる。
警察はワザとか言うほど、連続殺人を解決に導いた男子高校生の活躍と協力に感謝したのだ。
多分、警察が毎日巡回していたフードコートに犯人が居たことや
大型ショッピングモールも警備員に不審者が紛れ込んでいた事に気付かなかったセキュリティ問題など責められる要素が多過ぎるのをごまかすためなのかもしれない。
病院でボロボロの姿で人質に取られた叔母を命懸けで助けたのもインスタ映えではないが、記事として美味しい。マスコミが飛びついた。
それとは反対に犯人の動機は自殺したことで分からなくなり、桜子が責められる事態にはならなかった。
そう多分、おじいさんは大事になり生きて捕まれば…桜子に迷惑が掛かることに気付いたのだろう。
命懸けで霧子を助けに野犬の前に身を晒す昂輝を見て、桜子のために死ぬ事を選んだのかもしれない…
さすがの桜子も自分の生き方が、年金生活の老人を殺人鬼にしてしまった事。
猫又刑事から話を聞いたのだろう。
そして自殺したのも多分生きて捕まれば、桜子が社会から誹謗中傷される事になるため死んだのだと聞かされて、寝込んでしまったようだ。
酒が飲めない状態になってしまった。
昂輝が学校に復帰したら、警察から感謝状が贈られ校長や県警とまた写真をマスコミに撮られまくった。
勝手にテレビで高校生探偵として放送され…ゴシップ誌に探偵マンガの編集者の隠し子である事もスッパ抜かれた。
「すまないが担当離れて貰えないか?」編集長から通告された。
長年先生と探偵マンガアニメを作ってきたが、その作家から苦情があったらしい。
漫画家と不倫して隠し子を設け、認知はしたものの放置。そのうえ、その女性漫画家は自殺してしまった。
あまりにマンガの世界観を損なうからだ。
雑誌編集から外され百科辞典へと局異動することとなった。
「クソッ、本当の事件に顔突っ込んで大けがするとかバカじゃないか!私生児が目立つな!」昂輝の父がいらだつ。
それでなくても、昂輝の母が自殺した事で妻との間もおかしくなってしまった。
「子供のために離婚しないだけだから。」と言われてしまった。
そんな息子達も上の子は家を出て一人暮らしを始めた。
父親と関わりたくないのだ。それでなくてもアニメのせいで友達や先生にも彼女にも父親が何者かバレてる。
今までは自慢だったが、今は出来るだけ隠したい。
下の子は、高校生だ。
まさかの父に隠し子がいて、高校生探偵として華々しくデビューするとは。
学校でからかわれ、部屋に引きこもってしまった。
妻は、恨めしそうに昂輝の父を見る。
「私だけじゃなく子供にまで恥かかすんじゃ無いわよ!
良い大学出て、大手出版社で編集やってるから結婚したのに!」妻が小言をいう。
「ふん、そんな姿勢で結婚家庭やってるから子供もこれぐらいで引きこもるんだろ?
とんだけ敷かれたレールしか歩めないんだよ?」ついいつもの調子で毒づく。
編集者は頭が良いので切り返しもキツくて早い。
漫画家はクリエイターなので、こういう切り返しになかなか対応できない。
ポジティブ思考で攻撃力はすべて創造へ振れてるタイプが多いのだ。
売れない作家は、この攻撃でだいたい心を病んで壊れて消えていく。
「アナタは昔からそう!担当した作家さんがスゴイだけじゃない!
アナタが何したって言うのよ!
先生が頑張ってすごい物を作ったのよ!
アナタは何もしてないの!
ただの金魚のフンなのよ!漫画家の寄生虫じゃない!」妻も長年の鬱憤をぶちまける。
愛って、親子や家族や恋人や夫婦だけの間に存在するものじゃ無いんですよね。
何なら、形や器があるだけで…そこには愛がない親子や家族や恋人や夫婦の方が多いんだろな…と思って世の中見てます、はい。




