他人
世代も違うし、親戚として関わってきてもいない。
突然5年前に会った見知らぬ中年の女と10歳の小学生だった。
でも今は誰より大事な大事な人なのだ。
「バ…バカ〜ッ!」クマ用スタンガンで声が出せないはずの霧子が声を出した。
死ぬ事より、今この場に1番現れて欲しくない昂輝の声がしたからだ!
こ、こんなの!子グマを囮にして母グマをおびき寄せる囮猟( おとりりょう)と一緒だ。
最も危険なのだ。
「霧子!霧子だな?良かった、まだ生きててくれたあ〜」昂輝が茂みから無防備に出た瞬間、おじいさんがアルミ缶の粉を缶ごと昂輝へ投げた。
犬達はさっきからずっとこの瞬間を待っていた。
後から猫又刑事が飛び出し警棒で缶をはたき落としたが2人共粉をかぶってしまった。
「太郎!GO!」おじいさんがコマンドを叫ぶとずっと霧子を見つめてたドーベルマンもどきの子が昂輝に襲いかかる。この子が太郎で野犬のリーダーのようだ。
昂輝は肩掛けの学生カバンでガードしてドーベルマンを防いだが、足に2匹同時に噛みつかれた。
「うぐっ!」思わず前傾姿勢で倒れそうになる。
「皆、撃て!」猫又刑事が手を挙げた。
急所を外して皆一斉に犬に発砲する。犬の悲鳴が響き動きが止まる。野犬たちは銃の怖さを知ってる。
ハンターが山には入るからだ。
猫又刑事が昂輝を抱えて後方へ引く。警察隊が銃を構えて犬達の方へジリジリと迫る。
おじいさんがワンテンポ早かった。
洞窟の中の霧子の首にサバイバルナイフを当てる。
80代とは思えない機敏さだ。
「それ以上来るな!殺すぞ!」あの温厚そうなおじいさんとは思えない大きな声だ。
「や、やめてくれ…僕が代わりに人質なるから…」昂輝が刑事の制止を振り切り前にヨロヨロと出てきた。
両足の太ももからダラダラと制服のズボンに血が溢れてるのにロクに歩けないのに昂輝が犬達に近づいていく。
匂いがするから食いたい犬達が唸りながらヨダレを出してる。もう完全に人間の味を覚えた野犬達なのだ。
それも見るから手負いだ。
犬達は食べたくて食べたくて仕方がないが、リーダー犬の太郎はおじいさんの合図を待っている。
「ふん、今の君じゃ人質なる前に犬達の夕飯になっちまうよ!警察にこれだけ囲まれたら君を殺す意味も亡くなった。
お姉さんがそんなに大事なのかい?親なのか?」おじいさんは前から霧子と昂輝の関係が気になっていたのだろう。
「いや、母親は自殺した。父親には別に家庭がある。その人は母の妹だよ。僕を引き取って育ててくれたんだ!絶対、絶対守りたいんだ!」大人びてても16歳の少年なのだ。昂輝は話しながらボロボロ泣き出した。
「ふん!大事な人を危険にさらして探偵ごっこしてたのか?バカなガキだな!」おじいさんがなぜか破顔で笑い出した。
「太郎、カム!」とおじいさんが号令を掛けた。犬達が一斉に洞窟の中に入って行く。
「霧子!」昂輝が悲鳴を上げる。
おじいさんが液体を撒いたと思ったら車のバァンパーで作った盾で霧子を押し出したと思ったら中から爆発音がした。
昂輝は霧子に飛びつき抱きしめ爆風から守った。




