《★~ 時空間交信器の使い方 ~》
室町カルテットの四人が、時空間交信器を持って内裏の清涼殿に戻った。
早速、アデライードに婚約破棄される前のアンゲランと交信して、妖しげな蝶の駆除を頼むことにする。
しかしながら、時空間交信器の使い方が、パンナコッタにすら分からない。これを受け取る際、赤鬼に尋ねたけれど「知りゃあせん」の一言だったという。
「どうしたものかな。三休さん、なにか方策を思いつきませんか?」
「いや、あんさんが分からんもん、拙僧が分かる訳ないやろ」
「三休さんは頓智が凄く得意だとか、後花園上皇から聞き及びましたよ」
「頓智は得意やけど、道具の扱い方を思いつくんは、頓智でもなんでもないわ。それより、誰がこんなけったいなもん、酒呑童子に渡したんやろか?」
「さあ、どうなのでしょうねえ」
パンナコッタは、時空間交信器をジパングに持ち込んだ張本人が酒呑童子だと知りながら、言葉を濁した。三休さんたちに他星人の存在を明かさないのは、アデライード合衆国の機密だからではない。ジパングの民たちの大多数は、地球が球形だという初歩的な知識すら、今はまだ持っておらず、そんな彼らに「宇宙のなんたるか」を説いている暇はないと思うから。
後土御門天皇が、唐突に伝家の宝刀を掴んだ。
「絡繰りを知るために、かち割って中を見るのはどうかのう?」
「ああっ、いけません!」
パンナコッタが咄嗟に止めようとする。
「それは一番やってはならない手段です」
「なに、そうであるか?」
「はい。しかも、伝家の宝刀というのは、最後の最後に抜くものです」
「確かにのう。はっははは!」
後土御門天皇が宝刀から手を離す。
パンナコッタは、胸の内で「やれやれ、危うく壊されるところだった」とつぶやき、次は富子に尋ねる。
「女の勘はどうでしょう」
「え、わたし!?」
「はい」
「そうですねえ。お話を伝えたいのでしたら、まずは相手に呼び掛けませんと話になりません」
「なるほど。やってみましょう。もしもし」
》毎度、カークーイーツです《
「へ!?」
「なんやなんや??」
「ほう、箱が話しておる」
「あらまあ、面妖な!」
時空間交信器の中から男性の明るい声が響いてきたものだから、四人が驚くのも無理はない。
「え、あの、アンゲランさんではないのですか?」
》カークーイーツ新宿六号店の小林です《
「あ、済みません!」
》番号お間違いになりましたか《
「え、あの、はい……」
》ではまたのご利用お待ちしております《
小林と名乗る男性との交信が途切れた。
三休さんが疑問を口にする。
「今のなんやったんや??」
「どうやら、見当違いの人に交わったようです」
「パンナコッタはん、しっかりしてんか」
「はい。今度ばかりは細心の注意を払います。ノルマンディー公爵家の庭園で別人のようになったアデライード‐ノルマンディーさんに婚約破棄されたアンゲラン‐ポンチューさんは厳寒の季節だというのに妖しげな蝶が舞っているのを見掛けたそうですけれど、そこから十五分ばかり以前のアンゲランさん、もしもし」
》えっ、僕の頭の中で話してるの誰だ《
「あなたの遠い子孫、パンナコッタ‐ポンチューです」
》なんだ子孫か、驚いて損したよ《
「驚かせて済みません」
》僕になにか用でしょうか《
「今ノルマンディー公爵家の庭園にいますね」
》いますけど《
「近くに厳寒の季節だというのに妖しげな蝶がいるでしょうから、それを駆除して下さい。そうしなければ、あなたは十五分後に婚約破棄されます」
》ええっ、それは一大事だなあ、妖しげな蝶を駆除すればよいのですか《
「はい、必ず駆除して下さい」
》承知しました《
アンゲランとの交信が途切れた。




