《★~ 鬼が暮らす大江山の洞窟 ~》
鬼が暮らす大江山の洞窟は、都の北西方向にあって、そこへ辿り着くには、早馬で駆けて五時間ばかりを要する。
室町カルテットの四人が、各自のお馬に乗って内裏を出立した。後土御門天皇が出掛ける口実として「鷹狩り」と伝えてある。途中に休憩を挟みつつ進み、夕刻が近い頃、ようやく大江山の麓に到着した。
数百年の昔、この辺り一帯で、酒呑童子と呼ばれる凶悪な鬼が暴れ回り、多くの若い女性が酷い目に遭った。ほとんどは食われたけれど、子を宿した者も少なからずいたので、生まれた赤鬼たちの末裔が、今なお大江山に潜伏している。
全世界的知識を豊富に持つパンナコッタは、酒呑童子が宇宙の遥か遠くからきた「牛系統動物」に分類される他星人だということを知っている。さらに、先祖のアンゲランが目撃した奇妙な蝶についても、他星人の一種だろうと推察している。
鬼が暮らしている洞窟はすぐに見つかった。
入ろうとしても見えない壁に阻まれてしまって、三休さんが悩む。
「どないなっとんのや?」
「見え透いた障壁が張られているのです」
「なんやそれ!?」
「入ってくるなという意図を伝えるための壁です」
「鬼が人に対抗しとるんかいな。破れまっか?」
「試してみましょう。開け胡麻!」
パンナコッタが右手を前に突き出そうとするけれど、見えない力に遮られて伸ばせない。
「ああ違ったか。それなら、障壁除去!」
突如、なにかが砕け散るような高い音が響く。見た目は、なんら変化がないけれど、呪文の効果があったらしい。
「これで中に入れますよ」
「あ、ほんまや!」
三休さんが一歩前へ進む。
しかしながら、洞窟の奥から出てきた赤鬼に怒られる。
「こりゃオメエ、障壁壊しちゃおえまあ!」
「違います、壊したんあの人や」
三休さんがパンナコッタを指差した。
「鬼の器物を損壊しよるたあ命知らずな輩じゃて。ただじゃ済まされまあ?」
「申し訳ありません」
パンナコッタは、深々と下げた頭を戻して理由を話す。
「実は、どうしても探し出したい代物がありまして」
「なんねえ?」
「時空間交信器という道具です」
「ほやったら最初からそう言やええが?」
「はい、言おうと思って中に入ろうとしたのです」
「そんで器物損壊かえ?」
「結果的にそうなってしまいました……」
「弁償せえよ」
「おいくらでしょうか?」
「金貨五十枚じゃ」
「もう少し負けて頂けないものでしょうか?」
「ちっ、ほやったら四十枚」
「分かりました。それと、時空間交信器のことですけれど」
「欲しいんなら持ってきゃええが。オラについてけえ」
「はあ、分かりました」
パンナコッタは、三休さんたちに「ここで待っていて下さい」と言い残し、赤鬼と洞窟の奥へ向かった。
二分くらいで、彼が箱を大切そうに抱えながら戻った。
三休さんが問い掛ける。
「それが時空間交信器でっか?」
「はい、そうです」
「やけにあっさり手放すもんやなあ」
「赤鬼たちにとっては無用の長物だったみたいです」
「まあ、戦わずして戦利品を得たちゅうことやな。へへへへ」
目的を果たしたので、急ぎ近くの村まで戻った。
すっかり夜の帳が下りてしまっている。今宵は月明かりが乏しく、都への帰還は朝を迎えてからということで、皆の意見が一致した。
兎も角、お代を支払えば宿泊させてくれるような民家を探す。




