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ネイムレスの蝶系統動物効果  作者: 水色十色
思念量子波の無免許使用
16/25

《★~ 鬼が暮らす大江山の洞窟 ~》

 鬼が暮らす大江山の洞窟は、みやこの北西方向にあって、そこへ辿り着くには、早馬で駆けて五時間ばかりを要する。

 室町カルテットの四人が、各自のお馬に乗って内裏を出立した。後土御門天皇が出掛ける口実として「鷹狩り」と伝えてある。途中に休憩を挟みつつ進み、夕刻が近い頃、ようやく大江山の麓に到着した。

 数百年の昔、この辺り一帯で、酒呑ドランカド童子(‐チャイルド)と呼ばれる凶悪な鬼が暴れ回り、多くの若い女性が酷い目に遭った。ほとんどは食われたけれど、子を宿した者も少なからずいたので、生まれた赤鬼たちの末裔が、今なお大江山に潜伏している。

 全世界的ユーニヴァーサル知識(‐ナリヂ)を豊富に持つパンナコッタは、酒呑童子が宇宙の遥か遠くからきた「牛系統動物」に分類される他星人エイリアンだということを知っている。さらに、先祖のアンゲランが目撃した奇妙な蝶についても、他星人の一種だろうと推察している。

 鬼が暮らしている洞窟はすぐに見つかった。

 入ろうとしても見えない壁に阻まれてしまって、三休さんが悩む。


「どないなっとんのや?」

見え透いた(トランスペアレント)障壁(‐バリア)が張られているのです」

「なんやそれ!?」

「入ってくるなという意図を伝えるための壁です」

「鬼が人に対抗しとるんかいな。破れまっか?」

「試してみましょう。開け(オウプン)胡麻(・セサミ)!」


 パンナコッタが右手を前に突き出そうとするけれど、見えない力に遮られて伸ばせない。


「ああ違ったか。それなら、障壁除去バリアフリー!」


 突如、なにかが砕け散るような高い音が響く。見た目は、なんら変化がないけれど、呪文の効果があったらしい。


「これで中に入れますよ」

「あ、ほんまや!」


 三休さんが一歩前へ進む。

 しかしながら、洞窟の奥から出てきた赤鬼に怒られる。


「こりゃオメエ、障壁壊しちゃおえまあ!」

ちゃいます、壊したんあの人や」


 三休さんがパンナコッタを指差した。


「鬼の器物を損壊しよるたあ命知らずな輩じゃて。ただじゃ済まされまあ?」

「申し訳ありません」


 パンナコッタは、深々と下げた頭を戻して理由を話す。


「実は、どうしても探し出したい代物がありまして」

「なんねえ?」

()()()()()()という道具です」

「ほやったら最初からそう言やええが?」

「はい、言おうと思って中に入ろうとしたのです」

「そんで器物損壊かえ?」

「結果的にそうなってしまいました……」

「弁償せえよ」

「おいくらでしょうか?」

「金貨五十枚じゃ」

「もう少し負けて頂けないものでしょうか?」

「ちっ、ほやったら四十枚」

「分かりました。それと、時空間交信器のことですけれど」

「欲しいんなら持ってきゃええが。オラについてけえ」

「はあ、分かりました」


 パンナコッタは、三休さんたちに「ここで待っていて下さい」と言い残し、赤鬼と洞窟の奥へ向かった。

 二分くらいで、彼が箱を大切そうに抱えながら戻った。

 三休さんが問い掛ける。


「それが時空間交信器でっか?」

「はい、そうです」

「やけにあっさり手放すもんやなあ」

「赤鬼たちにとっては無用の長物だったみたいです」

「まあ、戦わずして戦利品を得たちゅうことやな。へへへへ」


 目的を果たしたので、急ぎ近くの村まで戻った。

 すっかり夜の帳が下りてしまっている。今宵は月明かりが乏しく、都への帰還は朝を迎えてからということで、皆の意見が一致した。

 兎も角、お代を支払えば宿泊させてくれるような民家を探す。

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