《☆~ 後土御門天皇の覚醒 ~》
アデライード合衆国に「ポンチュー市場調査」という名のマーケティングリサーチ会社がある。そこが毎年実施している「アデライード合衆国の十四ある従属国のうち、あなたはどこに住みたいですか?」というアンケート調査で、今年はジパングが二位に急上昇した。去年が十三位だったから、今年の結果は、ジパング人に勇気と希望を与えてくれた。
どうしてそんな大躍進ができたかについて、異口同音で「義政公が頓智を捨て去り、将軍職に打ち込んで下さっているお陰です」という声が上がっている。
この朗報を耳にした後花園上皇は、気分よく過ごしていたけれど、ある日、おそろしい予知夢を見てしまう。
空から「鬼の金棒」のようなものが落ちてきて、とんでもない大爆発が起きてしまい、都の建造物がすべて跡形もなくなるくらいに焼けて、それでもなお、灼熱の炎だけは残っているという。しかも、難を逃れるために向かった先々で、同じような酷い事態に見舞われ、ジパングの全体が「大焦熱地獄」になり果てる。
夜中に目を醒ました後花園上皇は、それから一睡もできず、朝を迎えるや否や、アデライード合衆国の大使館に人を遣って、全権大使補佐の立場にあるパンナコッタ‐ポンチューを邸に呼び寄せた。全世界学者にして錬金術者だという前途有望そうな若者である。
後花園上皇は、見てしまった予知夢のすべてを包み隠さず打ち明けた。
するとパンナコッタは、やや神妙そうな表情で見解を述べる。
「鬼の金棒の正体は、強化発破弾だと考えられます」
「それ、なんでおまっか?」
「通常の発破弾は、山から岩を切り出したり、採掘のために穴を掘ったりするのに使います。強化発破弾は戦争で使うために火薬の量を増やしたものです。ただ、それを一つ落としたくらいで、この都を焼き尽くせません」
「わてが夢で見たんは、結局なんやねん?」
「ずっと先に作られる高度な強化発破弾でしょうね。現在のところ、アデライード合衆国が持つ技術の粋を集めても、とうてい製造不能です。これから数百年、技術を磨き抜いた上で、製造が可能になると思います」
「そしたら今はまだ、あの悪夢が現実にはならへんのやな?」
「仰せの通りです。しかしながら、かくかくしかしか、まるまるうまうま」
「へえへえ」
「じぇらーとふらっぺ」
「ふんふん」
「いたちのさいごっぺ」
「ええっ!!」
後花園上皇は、とてつもなく大きな衝撃を受けた。
おそろしい陰謀によって、ジパングだけでなく、この世界全体が滅亡の危機にあるのだと知らされたのだから、これは無理もない。
「今のうちに対策が必要です。勇者を選んで下さい」
「勇者?」
「はい。この国で最も力を持つ人物が相応しいでしょう」
「今上天皇やな。わての息子ですし、話してみますわ」
「お頼みしました。またきます」
パンナコッタは大使館に帰る。
後花園上皇も腰を上げ、一振りの立派な刀を携えて内裏に赴いた。今上天皇つまり後土御門天皇がいる清涼殿に入り、単刀直入に話を切り出す。
「勇者になってくれ」
「え、なんでやのん??」
「実はな、かくかくしかしか、まるまるうまうま、じぇらーとふらっぺ、いたちのさいごっぺやからや」
「げえっ!!」
「勇者になってくれるやろ?」
「仕方ないなあ……」
「これをやる、伝家の宝刀や」
「おおきに。うっおー、力が漲るわ!」
宝刀を手にして、後土御門天皇は覚醒状態に達した。




