二対二
二対二
何かが自分の特技を破り追われている事に黒山は気付いていた。
「勘のいい追手です。杉山、野本任せましたよ。では紗季子お嬢さん行きましょう。」
「あんた達、ここは頼んだよっ。その内帰っといで、部屋は残しておくからね。」
金髪に派手なスカジャンを着た杉山とスキンヘッドで体格のいい野本は頭を下げ見送ると、その場に留まる。
狭い横穴は二人が並ぶのがせいぜいの大きさであり手にしていたランタンを地面に置くと、杉山と野本は捕まる事も辞さない覚悟をいつでも持っていた。二人は今となっては古株の彗星会の組員であり、長い間元組長の娘である紗季子の護衛を務め上げ、今その任を解かれる。
「よしっ、こんなのはひさびさだな。やるぜっ。」
「杉山、張り切り過ぎるなよ。」
スカジャンのポケットからバタフライナイフを取り出し、刃を出し入れしながら少し興奮を見せる杉山を宥めながらも、野本はアロハシャツの前のボタンを全て開き自分の少し出た腹を拳で叩き気合いを入れていた。
待ち構える二人のもとに、あまり時間を置かず三人はやってくる。
一目見るなり美優は駆け出し、野本の腹に拳を打ち込むが少し下がるだけで衝撃に耐え、野本から振られるバタフライナイフをトンネルを飛び下がって躱す。
「少しだけ時間かかるかも。」
美優からの初弾を耐えた二人の姿を見て、久信と勇司が同時に前に出た。
「ここは我々が、美優さんは先を。」
「だな。ここなら多少明るいし、もうちょい活躍したい気分もあるんで、どうぞお先に。」
二人の言葉に美優は小さく頷き、駆け出した。手を伸ばす杉山と野本の腕に軽く触れ、駄賃代わりに少し生気を奪うと小さな身体で縫うように走り抜けていく。
慌てて追おうとする二人の背に、久信が銃を抜き照準を合わせる。
「行かせませんよ。というよりも、我々も通していただきます。」
「そうだそうだっ!って俺なんか賑やかしっぽいな。ついに来た第二の活躍のチャンス掴ましてもらうぞ。」
すでに姿の見えなくなった美優を追うことを諦め、振り返る二人は向けられた銃を見ても焦る事なく余裕のある態度を見せる。
「早くあっち追わなきゃ後からどやされちまうぜ。」
「そうだな。じゃあこっちから片付けるぞ、アニキ達の邪魔する奴は全部敵だ。」
前に出る野本の巨体に隠れるように杉山は後ろに立つ。前へと足を出す野本に久信は銃を撃つが、胸へとまともに当たった銃弾は皮一枚撃ち抜けず地面に落ちる。
すると後ろからは見当違いの方向へとバタフライナイフが投げられると、意志を持つように方向を変え久信の銃を狙う。直ぐ様久信は自ら銃を手放しロングコートの中から特殊警棒を抜くと、またも軌道を変えたバタフライナイフを打ち払っていた。
【銀煙・ダーツ】
出番を作ろうと勇司の火をつけ吐き出した銀色の煙が無数のダーツ状となり、野本は腕を上げ顔を守ると全身を狙われるが、全てのダーツを全身で受け止め刺さる事なく煙に戻っていった。
「刺さらないな。そりゃあ銃効かないなら、ダーツなんてはなっから無理か。」
「そうですね。ですが初手としては八十点を差し上げましょう。」
「おおっ、案外と高得点。だけどお前に採点されても嬉しくないな。」
分かりやすく尚且つ強力なコンビネーションを使う相手に対し、真似するかのように久信は勇司の後ろに回り込んで指示を出す。
「では行きますよ。盾として立派に努めを果たしてください。」
「俺が前列なのか?まあ、悩んでる暇もないし行きますかね。」
二組の一列縦隊がお互いに迫ろうとした時、奥から爆発音が響き爆風と衝撃が四人にもはっきりと伝わってくる。
「何かあったようですね。とりあえず急ぎますよ。」
「それがいいみたいだな、じゃあ行きますかね。」
勇司は銀色に輝く煙草を取り出し、火をつけるとその煙を纏い甲冑姿となる。
そして四人はどちらかがトンネルの奥へ進むかを決めるべく、真っ直ぐ進んでいくのであった。
とりあえずまだしばらくトンネル内です。ちなみにはっきりと出てくる事はないと思いますが、相手方の特技は【バタフライナイフ】と【ボディガード】となっております。




