トンネル
トンネル
踏み込んだ四人はエレベーター前をあっけなく制圧すると、美優を先頭に施設の最地下を駆け抜けていく。美優は形の良い鼻で二度程周囲の匂いを嗅ぐと、確かな足取りで先導し邪魔する者は横を走る辰雄が蹴散らす。
「結構人が多い。」
「押忍。」
後ろを走る久信は銃を持ち、視界に入った側から相手の持つ凶器を撃ち落として全員のリスクを減らし、勇司は煙草を片手に持ちながら火をつけるタイミングを逃し続け、一人活躍の場を探し続けていた。
「困った。出番がなさすぎて煙草が手汗で湿ってきたぞ。」
「あなたは賑やかし要員兼、人数合わせですので問題ないかと。」
「まあ、出番あったらあったで不満だけどな。」
「我儘言っていると筋弛緩剤をうってここに放置しますよ。」
「それは勘弁だな。俺は脱獄向きの特技じゃないんだから。」
全速力に近い速度で走りながらも、軽口を叩ける二人の体力は確実に増しており前を走る二人についていく。
そして四人の視線の先に壁を突き破る削岩機が目に入り、そこで立ち止まった美優が削岩機を見つめ、再び匂いを嗅ぐ。
「向こうにも逃げてるのがいる。辰雄ちゃんここよろしく。」
「・・・押忍。」
削岩機の隙間から壁の向こうに美優は出ると、そこは岩盤に開けられた未完成のトンネルのように見える。美優に取り残され少し寂しそうな瞳を見せる辰雄を置いて、勇司と久信もトンネルに入っていく。
削岩機の前に立ちふさがる辰雄によって逃げ道は封じ込まれ、操られていた作業員によって脱獄しようとする囚人も、未だ残っていた柄の悪い男達も一人も通す事はなく、まるで何かにあたるかのように拳を振るっていくのであった。
暗いトンネルでは後ろを気にすることなく、三人は再び走り出す。夜目のきく美優と久信は問題なく走り抜けるが、足場の悪い道に勇司は苦戦を強いられていた。
(こいつはマズイ。このままじゃ本当にただの賑やかしになっちまうぞ。少しくらいなら活躍の場が欲しい気分になってきたな。)
少し距離を離されながらもなんとか勇司は二人についていくと、しばらく走った所で突然美優が足を止め振り返る。
「こっちじゃない。匂いがしない。」
一本道を走ってきたはずのトンネルで、少し困ったような表情を浮かべる美優を見て、ついに出番が来たかと勇司は握っていた煙草に火をつけた。
【白煙】
吐き出した白い煙はトンネル内に広がり、その煙を操作してとにかく広範囲に煙を漂わせる。煙の流れを読み取り横壁に不審な動きを見つけていた。
「ここの壁変じゃないか?煙の動きだと横穴があるはずなのに、全く見当たらない。」
「ええ。綺麗に隠蔽されているようですね。よく見てもなお気付きにくいとは厄介な特技です。」
「・・・隠蔽?隠蔽ってもしかして、もしかしなくてもあの人か?」
「またもや出てきたようですね。出てきて欲しくない方こそ出てしまうものですか。」
二人の想像通りの脱獄犯はすでに先を行き、他三人の脱獄囚らと共に横穴を進んでいるのであった。
とりあえず追ってみましょう。そして追いついたら相手の特技わ考えてみましょう。
頑張るんだ、俺。




