理由
理由
人々の流れに乗りながら、勇司は駅の近くにあるコインロッカーにきていた。防犯カメラの死角にあるコインロッカーを久信から受け取った鍵で開けると、中には小さめのボストンバッグが入っている。
ロッカーからバックを取り出し、チャックを開くと中に入っていたものは薄いグレイで迷彩柄のロングコートであった。
「・・・これ着ろって事なのか?」
羽織っているジャケットをボストンバッグに仕舞い、ロングコートを身に纏い襟を高く上げると、逃走犯気分が高まってくる。
「うーん、なんというかジャストサイズ。んっ?ポッケに何か入ってるな。」
ゴソゴソとポケットの中を漁ると、可愛いキャラのプリントされたポチ袋が発見され、中身は五百円玉一枚であった。
静かに五百円玉を中に戻すと、封を閉じる。
「・・・小2のお年玉かよ、っても最近の子だともうちょい貰ってるか。たまに棟上げでも降ってくる金額だな。」
ボストンバッグを持ちコインロッカーから立ち去ると、再び人混みに紛れ逃走の思案にはいる。
財布を特局に置いてきたことに勇司は気付き慌てるが、ポケットで存在感を放つポチ袋によって少しの安心感を得て歩き出すのであった。
その頃特局では久信が、局長室で父である勝義にやんわり詰め寄っていた。
「父さん、一応指示通りに進めましたが、説明をお願いします。なぜこんな事を?」
高そうなスーツに身を包み、頻りに様々な場所との連絡を取る勝義は、一度手を止めると久信を見る。
「ちゃんと話しといた方がいいか。今警察内部で怪しい動きが見られている、今回動いたのは特局に傾きつつある権力を警察に取り戻し、あわよくば特局を潰そうとしている一部の者達の仕業らしい。その動きに気付いた時にはすでに動かれていた。」
「となるとかなり上の人物ですね。噂ですとSATを再編成した新たな特技を使った犯罪のための特殊部隊を作るという話は聞いた事があります。話の流れだと噂は本当のようですね。」
「ああ。元々特局設立の時からあった考え方ではあるんだが、警察という組織に特別すぎる想いがある一派の仕業だな。」
二人はよく似た表情を突き合わせながら会話を続けるが、久信は一番の疑問をぶつける。
「それにしてもなぜ勇司さんなのでしょうか?」
「0班は一応特局の顔みたいなものだ。親も特局勤めの0班員が、事件を起こしたら特局の存在を揺るがす可能性もある。
そして言い方が悪いが他の0班員に何かするにはなかなかハードルが高い。」
「要はちょうどいいターゲットになったという事ですか。その話ですと、私の方がターゲットに狙われそうですが。」
「それは相手方も考えただろうが、お前はAFC関連などでアリバイのない時間を確定させるのが難しいからな。すでに情報班は動いているから、情報が集まり次第0班も動いてもらうことになるだろう。」
「分かりました。勇司さんが捕まるまでに解決せねばならないという事ですね。捕まった場合は強引な手段に出られてしまう可能性もあるというより、捕まえる時点で強引な手段を使われる可能性もありますね。では、こちらはこちらで動き始めます。」
局長室から出ていこうとする久信に、勝義が少し優しい声色で質問した。
「最近どうだ?」
「それなりに楽しく過ごしています。」
軽い笑顔を見せ、出ていく久信の後ろ姿を見送ると勝義は再び仕事に戻り、久信は情報班へと向かうのであった。
なんかイマイチ親子の会話っぽくならないな。
とりあえずいろいろと悩みどころな一話でした。




