逃走
逃走
特局の地下にある0班の訓練室では人型のサンドバッグ相手に鋭い打撃音が響いていた。
ローキックから下段後ろ回し蹴りに繋ぎ、インローで締める。この動作を左右で繰り返し、砂袋が弾ける感触を楽しみながら訓練に励み、それはセットされたタイマーが鳴る12分後まで続けられた。
「ふーっ、こうイマイチ威力に欠けるな。この前辰雄さんが訓練してた時、下段一発で両足吹き飛んでたよな。」
汗を吹きジャケットを着ると、ポケットの中の携帯が鳴りメールの着信を知らせる。
「んっ?久信か、珍しいな。」
その文面は一言であり、少し首を傾げる内容であった。
『脱出準備を』
イマイチ掴みかねる内容に、持っていたマグボトルを開き少しぬるくなったコーヒーを飲み一息つくと、訓練室の扉が開き久信が入ってきた。
「何優雅な時間過ごしてるんですか?顔面を撃ち抜きますよ。」
「っても何なんだよあのメール?火事か、もしや特局火事なのか?」
「あなたにとってはそれよりもよくない展開ですね。警察によって指名手配間近です、ここにも捜査の手が入るとの事ですので、出入り口から防犯カメラにしっかり写ってここから出て下さい。」
真顔で語る久信の話に最初は冗談半分で聞いていたが、これはすぐ指示に従ったほうがいいと判断する。
「よく分からないけど、マジみたいだな。じゃあとりあえず逃げるか。何か他にあるか?」
「これは父からの情報と指示です。しばらく逃げろ、追手に怪我させるなだそうです。」
「局長からそんな指示が?じゃあとりあえずここから堂々と出て逃げろって事か。」
「ちなみに携帯は置いていったほうが賢明かと。あとはこれと、ちなみにこれは餞別です。」
久信から無線が渡され、さらにコインロッカーの物らしき鍵が渡される。
「ほうほう。とりあえずありがたく受け取っておくよ。よく分からないけど後は任せた。」
「ええ、急いだ方がいいかと。」
取るものも取らず勇司は身支度を済ませると、指示通りに防犯カメラに映る事を意識しながら正面玄関から出るが、そこにはサイレンをつけたセダンが二台とパトカーが二台止まり、特局へと向かう刑事、警官達とお互いが見つめ合う空間が生まれていた。
「まっずいっ、いやっ?特局に迷惑かけないで済んだから、ある意味正解か?」
勇司は一気に駆け出し、後ろから聞こえる怒号を無視してその場から脱出を図る。
追ってくる警官達を楽々と引き離し人混みに紛れると、勇司の逃亡生活が始まるのであった。
なんとなくの新事件です。ゆっくりとお話は進んでいきます。




