シンクロ
シンクロ
二人は軽い耳打ちをすると一気に勝負に出ていく。まだ新しい肘関節に慣れない様子で腕を動かす田沼に対し、久信は軽く眼鏡に触れ、勇司は赤い煙草に火をつけた。
【思金神の眼鏡・譲渡】
【赤煙】
特技を使った瞬間から久信の顔から表情というものが消え、勇司は吸い込んだ煙を吐き出すのを耐えるかのように険しい表情を見せる。
二人は同時に前に出ると、少し様子の変わった二人を田沼は警戒し四本の腕を広げ、その場で待ち構えていた。
勇司が進むスピードに完璧と言える程動きをシンクロさせ、久信が同じ歩幅、タイミングを合わせる。
同時に迫る二人に四本の腕で一斉に田沼は打撃を打ち込むが、片方は躱されもう片方は手首を跳ね上がった反射神経によって掴まれると、これもまた同時に元々あった二本の腕に飛びつく。
二人の飛びつき腕ひしぎ逆十字で三人が一つの生き物のように絡み合うと、再び田沼の肘関節を狙っていた。
可動域が広がった肘を逆に曲げる事は叶わないが、二人は田沼の腕を伸ばした瞬間に身体ごと一気に捻りこむ。
手に何かが千切れる嫌な感触が伝わると同時に、二人は手と挟んでいた足を離し床に降り立っていく。痛覚を鈍くしている田沼は痛みに悶える事はないが、動かなくなった肘の回復に入る。
「今ですね。あの肩からの腕は本物の腕と連動しているようです。」
「はいはい、了解っと。」
赤い煙を身体から吐き出し効果を消すと、勇司は煙草入れから紫色の煙草を取り出し咥え、火をつけた。
【紫煙・麻痺】
吐き出された紫色の煙は田沼の鼻、口を狙い生き物のように動き吸い込まれていく。
腕の治癒の最中に送り込まれる紫煙は、田沼の筋肉をある程度弛緩させ一定の効果を見せる。
腕のガードも上がらず筋肉の弛緩する田沼に、久信が表情を消したまま動き出していた。
構えもせず田沼の目の前に立つ久信は、肥大化しているものの弛緩する筋肉を確認すると脱力状態から一気にトップスピードに身体を動かす。
筋肉に埋もれなんとか確認できる顎先へ右ストレートを打ち込むと身体を回し、左の回転肘打ち、その勢いのまま更に身体を回し右のハイキックまでの動作を一息に叩き込む。
激しく田沼の脳を揺らし意識を飛ばすと、特技によって異常成長していた身体は縮み、頭髪も抜け落ちながら床に倒れていくのであった。
特技を解除するとあちこちに走る身体の痛みに久信は少し表情を歪め、勇司は灰皿に紫煙を捨てる。すぐに二人はガチガチに田沼を拘束すると、全身に張っていた気をようやく緩めた。
「よくやく確保か。久信大丈夫か?」
「ええ、致命的な怪我はないですね。あなたこそ問題ないでしょうか?」
「うーん?煙草のせいで喉がイガイガして吐きそうなぐらいだな。まあ、いつも通りだよ。」
「では問題なしですね。それにしても竜胆さんはいったい?」
するとまるで容疑者を確保する時間が分かっていたかのように、廃工場内に竜胆と搬送班が入ってくる。
手帳をひらきながら、腕時計を見て竜胆は一人納得していた。
「予定より三分早いですね。いい傾向です、では次に向かいましょうか。」
ポカンとする勇司と久信を置いて、竜胆は工場から出ると車へと戻っていく。
「これはこの件だけじゃなく今日一日竜胆さんと一緒なのか?」
「そのようですね。おまけに確保する時間を予測されていたようです、ではあまり気乗りしませんが行きましょうか。」
二人は急いで後を追い、命の危機を感じる竜胆作成の殺人スケジュールをなんとかこなしていくのであった。
とりあえずこの事件は終了です。
次からまた新しい事件に入りますが、今から考えて行きます。とりあえず2日に一回くらいは更新したいなー。




