業務
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男達は祝杯をあげ複数の女達を連れ、上機嫌に工場へ戻ってきていた。
聞くに耐えない下品な会話を繰り広げながら、これから訪れるであろう自らの幸福を信じて疑わず工場の扉を開け照明を付けると、その目を疑う光景が飛び込んでくる。
数ヶ月かけて作った偽札が山と積まれ、その横には見覚えのない男二人が眩しそうに照明を眺めつつ立っていた。
「誰だっ!」
男達の一人が思わず大声を出すが、偽札の山の横に立つ勇司は困ったような顔を見せ、久信は表情一つ変えずにロングコートの中からIDカードを取り出し提示する。
「特局です。大人しく投降していただけませんか?」
「たしかにそうしてくれたら助かるよな。深夜だし、ご近所迷惑にならない。」
二人の会話を聞くと剣呑になる雰囲気を察し、ついてきた女性達は後退りを始め工場から逃げていくが、それを気に留める者はいない。
「投降してはいただけないようですね。仕方ありません、では勇司さんお願いします。」
「まあいいけどよ、なんか少しの罪悪感。」
偽札の山から札束一つを取り出し、ターボライターで火をつけると男達が目を見開き止めようとする中、燃える札束を投げ戻す。
あっという間に偽札の山に炎は燃え広がり、工場内に熱と焦げ臭い臭いが広がって行く中、全員が固唾を呑んで炎を見つめていた。
そして炎が鎮火した頃、無言の空間を打ち破り、男達が二人を取り囲んでいく。
「お前らっ、ここから生きて帰すなよっ!機材さえあればまた何度でも作れるっ!」
リーダー格と思われる男が叫んだ瞬間に久信は動き出していた。さり気なく一歩目を踏み出し、真っ直ぐ歩いていく。
あまりに自然な動作に男達は止めるタイミングを失い、久信は人の輪を抜けリーダー格の男の前に立つと、少しだけ軽い笑みを浮かべた。
「お疲れ様でした。」
軽く顎先に振った掌打によって脳を揺さぶり、一撃で昏倒させる。
リーダーが倒された事により、我に返った男達は久信に襲いかかろうとするが、金属の煙草入れが閉まる音と共に勇司は咥えた白い煙草に火をつけ、白い煙を吸い込むと一気に吐き出した。
【白煙・濃霧】
工場内を白い煙が広がり白い濃霧に包まれると、久信はロングコートの中から小型のナイフを取り出し照明のスイッチに投げ、工場内は再び暗闇に包まれていく。
暗闇と濃霧で皆の視界が塞がれる中、勇司と久信は動き出していた。
軽く眼鏡に触れ、久信は特技を使う。
【思金神の眼鏡】
悪条件の中でも久信の視界はすべてを捉え、独壇場とばかりに次々と確保していく。うめき声と打撃音が工場内を包み、視界を奪われた男達は慌ててバラバラに動くが、人が動く事によって生じる濃霧の動きを掴み勇司が攻撃を開始していた。
近くにいる容疑者から手当り次第にローキックを放ち、下段蹴りを打ち、水面蹴りを回し打つ。
男達の中には窃盗の際に役立つ身体能力を高める類の特技の持ち主が多数いたが、二人は暗闇と霧に紛れ次々と動き、工場内には行動不能にされた男達が倒れていくのであった。
再び工場内に明かりが灯った時には、二人以外に立っている者はいない。
うめき声を上げる容疑者達を縛り上げつつすぐに搬送班を呼ぶが、勇司は少し疑問に感じた事を口に出す。
「なあ、これって0班が動くような事件なのか?偽札はたしかに大事だけど。」
「気付くなんて珍しいですね。ここ事件は35班から回ってきた物です、全員が食あたりだそうで。」
すぐに到着した搬送班の作業を眺めながら、久信の返答を聞き勇司は納得の表情を浮かべる。
「0班に異動して分かった事は案外とそーゆうの多いよな、代打と下働きがほとんどだ。まあ、嫌いではないけど。」
「たしかにそうですね。0班が出ないといけないような凶悪事件ばかりが起こっても困りますし。」
「だな、帰って寝るか。」
二人は搬送班による素早い容疑者達の搬送作業を見送ると、軽く身体を回し報告のため特局に一度戻り、本日の業務を極々普通に終えるのであった。
予定よりだいぶ書くのが遅れました。
スマホの調子が悪い悪い。根性のあるスマホに買い換えたら、更新を早めていきます。




