百貨店
百貨店
黒いセダンは二台前を走るタクシーを静かに追跡していた。タクシーの後部座席には先程の見た記憶のある帽子を被った容疑者の後ろ姿が見え隠れしている。
「タクシーを強引に止めるわけにもいかないよな。まあ、気長に追いますかね。」
「ええ、慎重にお願いします。容疑者は江夏 朱実、29歳OL、特技は【パフューム】、香水使いといった所でしょうか。」
「道理でな、なかなかに甘ったるい香りだったぞ。どうやって捕まえる?」
「とりあえずタクシーを降りた場所にもよりますね。しばらくはこの状態を維持していきましょう。」
勇司の運転するセダンはタクシーと一定の距離を保ちつつ後をつけて行く。しばらく走ると一瞬タクシーが大きくふらつくがすぐに落ち着きを取り戻し、再び順調に前へと進んでいった。
そしていきなりタクシーはスピードを上げると、セダンとの距離を引き離していく。勇司は慌てず気付かれないように、ゆっくりスピードを上げながらタクシーを追いかけ、久信のナビで追いかける。
「そこを右ですね。曲がったらスピードを上げてください。」
「了解っと、なんか急に運転怪しくなってないか?」
「確かにそうですね。先程の大きく車線をはみ出た時に何かしましたか。」
「じゃあ多少気を付けたほうがいいな。」
更にスピードを増し進んでいくタクシーをセダンは距離を空けて追跡を続ける。
そしてタイヤを鳴らしながらタクシーは止まり江夏は一人タクシーから降りると、大勢の人が出入りを続ける大きな建物へと入っていった。
タクシーの後ろにセダンを停め二人はすぐに車から降りる。急いでタクシーの中を確認すると、運転手は意識を失い金銭が奪われた形跡があった。
「やられましたか、密室はあちらの独壇場ですしね。」
「それにしてもここ入っていったよな?ここで探すのはちょいと厳しくないか?」
二人の視線の先には、今も人の波がなかなか途切れない巨大な百貨店が鎮座している。
大勢のお客に紛れ、江夏の姿を完全に見失っていたが久信は特技を使いほんの少しの痕跡から追跡を始めていく。
「とりあえず中に行きます。ここの方に話は通した方がいいでしょうね。」
「だな。じゃあお話ししてから探しますかね。」
二人はインフォメーションセンターに行くと百貨店の支配人に話を通し、パニックを避けるため店内放送など行わず秘密裏に江夏の確保へとむかっていくのであった。




