弁慶
弁慶
勇司は弱まっていく特技をかけ直すか悩みつつも久信の横に立つ。煙草入れを取り出し、中身を確認するが使えそうな煙草はそう多くは残ってはいない。久信は持っていたステッキを興味深そうに眺めている。
「頼んでいたものより電流が八倍程強いですね。さすが雪さんと開発班の共同開発といった所でしょうか。普段持ち歩くには少々ゴツすぎますが。」
「いいなーそれ、俺は煙草とライターしかないしな。それにしてもどうする?多少焦げてるみたいだが元気そうだぞ。」
全身にある傷を少しずつ癒しながら、未だ立ち続けゆっくり前に進んでくる保田は背からマスコットバットを二本取り出し、両手に持つと片足をつきながら引きずりながら歩く。
「やはり真正面からのぶつかり合いでは分が悪いようですね。ここからは勇司さんの流儀で攻めます。」
「俺の流儀?なんだそれっ、そんなもんあったか?」
凄まじいスピードで放り投げられてくるマスコットバットにステッキを差し出すと、巻き付かせるように優しく受け止めマスコットバットを勇司に手渡す。
「言うなればいつも通りってやつですよ。来ます、援護しますので頑張ってください。」
バットを振りかぶる保田に向かい、勇司は渡されたばかりのバットを投げつけ機先を制すと、乱雑に振られるバットを躱し懐に飛び込むと電流を当てられ未だ軽く引きずっている左足にローキックを入れる。更にインローを叩き込み、直ぐ様深い懐から脱出をはかるが、お返しとばかりに勇司の肩の弱さをあざ笑うかのようなスピードでバットが凄まじい回転をしながら飛んできた。
ステッキをライフルのように構え収納されていた引き金を下ろし、久信は呼吸を止め引き金をひく。
ステッキから発射された弾丸はマスコットバットを真ん中から破壊し、勇司の顔に木の破片が振り注ぐ。気にせず煙草入れから赤い煙草を取り出し、ターボライターで火をつけた。
【赤煙】
赤い煙を吐き出したい衝動に駆られながらも、我慢して飲み込み勇司は再び保田へと迫る。
合わせて突進する保田の左足に銃弾が撃ち込まれ、バランスを崩した所を左膝の真正面から勇司は蹴りを打つ。膝が壊れる音と共に、打った勇司の足首に痛見が走るが、更に慌てて伸ばしてくる右手を勇司は掴み、関節を極めながら後ろに回りこむと更に飛びつき、足の間で左手を挟み込むと倒れない保田の後ろで勇司は横になり宙に浮いていた。
赤煙の力で満身の力を込め、両腕を極め続けると久信がステッキの中程を回して外すとステッキを繋ぐワイヤーが出てくる。
「勇司さん、上出来です。」
ワイヤーを保田の首に回し、久信は真正面から一気に締め上げていく。赤黒い肌の顔が更に赤く染まり激しく暴れているが、二人は全身の力を込め逃さない。
そして勇司の手と足に抵抗の力が伝わらなくなると、保田の背から勇司は降りる。久信はワイヤーをステッキの中へと戻し、勇司に渡してくる。
「使って下さい。その足折れてはいませんが、歩くのは無理でしょう。まだ試作品ですがね。」
「こりゃあ悪いな。それにしても倒れないもんだな。」
保田は気道を塞がれ落とされたものの、未だ意識はないまま立ち続けていた。その顔は怒りに染まり今にも動き出しそうである。
「さすがは弁慶といった所ですね。足は良いとして、その額は大丈夫ですか?」
「立ったまま気絶とはよくやるよな。んっ、額?なんか濡れてるような・・・。」
勇司が自らの額を触って確認するとそこには木の破片が突き刺さり、血が噴き出している。気付くと同時に血圧は一気に下がり勇司はその場に倒れていくのであった。
久信は倒れていく勇司からステッキだけを見事に救出し、溜息をつく。
「はぁーっ、あなたに倒れられても迷惑なだけなのですがね。」
保田は立ったまま搬送班に運ばれて行き、勇司は医療班に運ばれていく。久信はステッキをつきながら離れていく車両を眺めながら呟く。
「さて、無事解決ですね。帰りますか。」
久信は一人黒いセダンに乗り込むと、特局へと何事も無かったかのように走らせていくのであった。
対弁慶戦なんか無駄に長かった。次はなんかテクニカルな容疑者を出していきたい。
なんか思い返すと脳筋ばかりのような・・・。
とりあえずここまで読んでいただき感謝です。




