紫煙
紫煙
勇司は戦車の上を歩き回り、急いで換気口を探し回るがそれらしきものは発見できない。慌てる勇司に下から声が掛けられる。
「全く持って時間がないですよ。何を探しているのかは知りませんが、すでに装填は済んでいるようですしタイムリミットは近いですね。」
「分かってるよ!穴が見当たらないんだから、あそこから吹き込むしかないのか・・・。」
勇司は煙草入れから紫色の煙草を取り出し、火をつける。その表情には諦めの色が強く出て、主砲に飛び付きぶら下がると発射口に顔を近づけていった。
【紫煙・麻痺】
吐き出された紫煙は発射口から吸い込まれるように戦車の内部へと侵入していく。恐る恐る再び発射口から内部を覗くが、何も出てくる気配はない。
念の為に紫煙が燃え尽きるまで、七回ほど煙を主砲から吹き込むと勇司はようやく戦車から降りることが許された。
戦車に近付き、昴が装甲をコンコンと叩くが何の反応も返ってこない。そこでようやく一息つくと、じっくり戦車の強固に補強されている乗降口のハッチに向き合い、何度となく特技を使い部品をバラし、ようやくハッチを開く事に成功する。
横で手榴弾を持ち、開くと同時に投げ込もうとしていた久信であったが、戦車内で全く人の動きがない事に気付くとすぐに中へと入り、主砲の発射ボタンに手を掛けようとしながらも、紫煙によって動きを止められた容疑者を確保するのであった。
上下を迷彩服に包み、顔までも迷彩柄でペイントを施した容疑者を、先程まで勇司をおんぶ紐に使用していた真銀煙の紐で縛りあげていく。
未だ容疑者の麻痺は解けることなく、大人しく搬送班へと引き渡されていった。
「なぜ、市街地で迷彩のペイントなのでしょう?逆に目立ちますね。一人で戦車を動かす特技はなかなかに脅威ですが。」
「まあ、自分の気分を盛り上げてるんだろ。とりあえず今回は反省点がてんこ盛りだ、酔いどめの薬を飲み忘れたのが痛かった気がするな。うんうん。」
一人反省する勇司であったが、未だに冷たい視線を送ってくる二人に気付き身を小さくしていた。すると昴が手招きして勇司を呼び寄せてくる。
「なあ、まだお前にはあたしの特技ちゃんと見せてなかったよな。ちょうどいい、ここで少し模擬戦でもやってみようか。お前体動かし足りないだろ。」
「いやいやいや、さっき見ましたよっ!あの戦車のハッチをごにゃごにゃしてたやつですよね。いやー、あれは凄かった。」
「ごちゃごちゃ言うなよ。じゃあ選ばしてやるよ、このままのあたしと、戦車に乗ったあたしどっちとがいい?選ばないと自動的に戦車だけどな。」
「・・・生身の方でお願いします。」
そして戦車をバックに勇司と昴は向かい合い、模擬戦が始まる事となる。審判をかって出た久信は表情は変わらないものの、どことなく楽しげであった。
「ではお二人共怪我などは出来るだけ避けて下さい。あくまでも出来るだけですが。それでは始めっ!」
ワイルドな肉食獣のような笑みを浮かべる昴は、先程とは全く違う様相で楽しそうに両手に革手袋をはめると、両腕を開き大きく構えている。
「素手でやるのは、お前とは初めてだな。それともう一つだけ教えてやるよ。あたしの特技にはさらにもう一つの面があるって事をなっ!」
銀色の煙草に火をつけた勇司にむかい、昴は一気に駆け出すのであった。
なんかこの事件無駄に長くなってしまいました。反省です。
ここまで読んでいただき感謝です。気分のむいた方は評価、感想、リクエストなどなどおまちしております。




