思案
思案
久信は戦車の上でバランスを取りながら、進む先を見つめている。すでに料金所が近付き、戦車は進み続けて行くとETCのバーが開くが、惜しくもサイズの問題で料金所を破壊しながら戦車は市街地へと向かっていた。
降り掛かる破片を久信は特殊警棒で打ち払い、昴は背中にからう甲冑を盾にして身を守る。
「昴さん、このまま進むと戦車が走行するだけで相当な被害が出そうです。」
「じゃああたしの特技のもう一つの面を見せてやるよ。そのキャタピラの継ぎ目が見えるか?」
久信は流れていくキャタピラを見ながら小さく頷くと、昴はポケットの中から革の手袋を取り出し片手にはめた。
「ええ、確認はできますが、これを破壊するには手持ちでは爆薬などが足りませんね。」
「それなら問題ない。お前ならあたしの特技、だいたい予測ぐらいはついてるだろ。誘導してあたしの手を継ぎ目に当てな。」
「分かりました。もしやとは思ってましたが、やはりそのような特技ですか。」
「あたしの手そこそこ頑丈だけど、一発で決めてくれよっ。」
頼もしい笑みを浮かべる昴と今現在使い物にならない甲冑姿の勇司を見ながら、軽く眼鏡に触れ久信は特技を使う。
【思金神の眼鏡】
一気に視界が広がり、視覚で得られる情報量が膨れ上がっていく。慣れた様子で一度周囲の様子を伺い、二本の指を立てている昴の手を掴むと回り続けるキャタピラの継ぎ目にタイミングを合わせて触れさせた。
【ドライバー・オープン】
昴が特技を使った瞬間に継ぎ目からキャタピラが外れ、進もうとする車体がバランスを崩していく。更に移動し、もう片方のキャタピラも継ぎ目から外すと戦車は完全に走行不能に陥るのであった。
進む事ができなくなった戦車は昴のいい的であり、重機関銃が外され、様々な部品か分解されていく。しかし入念に補強された乗降口と主砲はドライバーを受け入れず、主砲はゆっくりと回り狙いを市街地へと向け始めていた。
「これは少し不味いってやつだな。無駄に頑丈に作りやがって。」
「この距離ですと人口密集地まで届きますか。勇司さんっ、出番ですよ。」
久信は容赦なく甲冑の上から特殊警棒で叩き付けると、勇司の意識は揺れが無くなったことも相まって徐々に覚醒していく。
「・・・うーんっ。釜飯と混ぜご飯と、かやくご飯だと俺は断然混ぜご飯派だな・・・。あれっ?」
更に昴は勇司を背中から落とすと、完全に勇司の意識は覚醒し勢い良く立ち上がった。
「揺れてないぞ、未だ戦車の上だが。いいなー、揺れてないってのは安定感のレベルが違うな。今日は何か不思議な事に混ぜご飯な気分だ、早く帰って食堂にいかねば。」
そこで勇司は四つの冷たい視線が向いている事に気付き、背中に汗が流れる。
「もしかしてまだ容疑者はこの中にいたりします?そして更にもしかしてですが、これ撃とうとかしてます?」
言葉を発する事なく頷く二人を見て、勇司は明らかに足を引っ張り続けていることに気付き、慌てて全身の甲冑を煙に戻すと煙草入れを取り出した。
「とりあえずここからは、お二人は戦車でも降りてお茶でも飲みに行ってきたらいかがでしょう?ここからは今までの分も含めて、私めに頑張らせて頂ければ幸いなのですが。」
二人はさらに大きく頷くと戦車の上から降り、勇司の様子を見守っている。勇司は良くなった体調を恨めしく思いながらも、今にも発射しそうな戦車の様子を見て、どうやって止めるか思案を開始するのであった。
いいぞ主人公、やっと出番がやってきたぞ。
お分かりとは思いますが、今回の事件は昴の紹介な回です。なので容疑者は手抜き感満載ですがご容赦を。
誤字脱字、感想、特技のリクエストなどなど
ありましたらおまちしております。




