ドライバー
ドライバー
勇司は近付いてくる昴を見ながら、吸い込んだ煙を勢い良く吐き出した。
【銀煙・ダーツ】
口から出た煙は何本ものダーツ状に形を変えながら、昴を狙い飛んでいくがネコ科の獣のようなしなやかな動きで翻弄し、跳ねるようにダーツを躱していく。
これまでの経験上、ここまではほぼほぼ予想済みの勇司はさらに煙を吸い込んでいた。
【銀煙・ダツ】
更に吐き出した銀色の煙は全長50センチほどの細長い魚へと形どられ、空中を舞っていく。ヒレを動かし空中を自在に高速で動くダツを見て、一瞬昴は驚いたものの鋭い顎を突き刺そうと突っ込んでくるダツをタイミングよく蹴り上げ、空中で霧散させていった。
「何一人で面白特技使ってるんだ?こっちも戦車でも使ってやろうか。」
「そんな事言われてもしょうがないですよ。こっちだって特技ドライバーと代われるものなら代わりたいですし、いいなドライバー。すっごい日常生活に役立ちそうだし。俺のなんて、なんの役にも立たないのに・・・。」
愚痴を長々と続け落ち込んでいく勇司に思わず昴は頭を下げる。
「よく分からないけどこっちが悪かった。何かすまん。」
「言われ慣れてる事なんで気にせず流して下さい。また機会があったら今度詳しい話でも、ではまた。」
その場から勇司は立ち去ろうとするが、惜しくも企みは成功することなく、昴が立ち塞がった。
「何、スッと帰ろうとしてるんだおいっ?模擬戦は続いてるんだぞ。」
「この作戦が通じないとは。昴さんには厳しかったか。」
「まずそんな作戦誰にも通じねえよっ!」
「とりあえず美優さんと、要さんには成功済みですよ。竜胆さんは気にせず最初に言われた予定時間きっちりにやられましたが。」
ため息を大きく一つ吐き、昴は少し抜けた気合いを入れ直していく。
「はぁーっ、勘弁してくれよな。とりあえず要のやつは軽く今度はねとくか。じゃあいくぞっ!」
再び走り出し昴は拳を固めていく。一足飛びに襲いかかり勇司に拳が降り掛かってくるが、勇司は次の煙草に火をつけていた。
【真銀煙・甲冑】
銀色に輝く煙を自らの体に吐き掛け、拳を受けて煙がはれると、甲冑姿の勇司が現れ肩口で拳を受け止めている。さらに連続で振り回される拳を甲冑の装甲で受け止め続け、隙を見計らうがその隙はいつまで経ってもやってこない。
さらに下から甲冑の煙草のために空けてある顎先を掠めるように足が跳ね上がってくるのをのけぞって躱すが、昴は跳ね上げた足を器用に折り畳み、その足でがら空きの勇司の腹に横蹴りを思い切り放つ。
吹き飛ばされてくる甲冑を避けながら、久信は特技を使い昴を観察していた。
(これは上手いですね、少し妙なほどに。戦い慣れしているのもあるでしょうが、それ以上に何かを感じます。・・・これですか、自らの体の操縦技術の向上を特技で行っているわけですね。)
背中から倒れている勇司に対し、さらに追い打ちをかけるように昴は迫り足を踏み降ろしてくるが、甲冑の防御力を頼りに受け身すら行わず煙草を取り出し火をつけていた。
【青煙】
青い煙を吸い込んだ瞬間に勇司の視界と思考が一気にクリアになると、落ちて来る足を最小限の動きで避け、後方へと転がり一気に立ち上がる。
再び向かい合う二人は同時に前に出ると、勇司はローキックを放ち、まともに太ももに入るが昴は気にせずゆっくり拳を前に出し、甲冑の胴体部分に拳を添えた。
昴は勇司の眼を見て、片方の広角を上げるとニヤリと笑う。
「乗り物酔いの訓練してやるよっ。準備はいいか?」
「・・・ノーなんですが、何か嫌な予感しかしないのですが。」
勇司の全身に悪寒が走り、甲冑に触れている拳が危険だと警鐘を鳴らしているが、それは少し遅かった。
【インパクトドライバー】
拳があたっている場所を支点に、勇司の体が横に勢い良く回り始める。頭を地面で打ちさらにえぐっていくが、その勢いは衰えることなく回り続けていた。
昴は笑顔を見せながら拳の先で回り続ける勇司をもて遊び、角度を変え頭の上で勇司を回すとボールを載せて伝統芸能をしたり、軽く地面に触れさせると、地面に模様を刻むなどしていく。
回転を徐々に収束させていき勇司を開放するが、ゆっくりと倒れるとすでに立ち上がるどころか体を動かす事さえできない。
ここで模擬戦は終了となり、昴の勝利が決まったのであった。
そして久信は倒れて動かなくなっている勇司を突っついている。
「これはしばらく無理なようです。しばらくというより、よく生きてましたね。」
「またかよ、しょうがねえなー。」
帰り道の戦車内では、狭い運転席で勇司を背負う昴が運転している。鼻孔をくすぐる女性の香りに、少しだけいい夢を見ながら特局へと戻る勇司であった。
なんとかこの事件終了。容疑者の名前も出てませんが。
ここまで読んでいただき感謝、感謝です。




