試験
試験
勇司と久信は二人で訓練の合間を縫い、特局の食堂へと来ていた。そこで勇司は傷だらけになった口内を気遣っておかゆを頼み、久信は胃薬をコーヒーで流し込む。
「なあ久信、このままじゃ身体が持たないぞ。今日だけで五回、いや十二回は逝きかけたな。」
「それはそれは、羨ましくない情報ですね。そうは言っている私自身も、ジワジワと生命の炎が消えようとしているのを感じていますよ。内臓が活動しすぎで熱さを感じています。」
二人は頼んだ物を飲み込み空にすると、貴重な休憩時間八分の終わりが迫ってくる。
「よしっ、逃げよう。遠く田舎で鶏なんかを飼ってカミさんと自給自足するんだ。」
「まず勇司さんは彼女を作ることから始めましょう。ちなみに近所の小学生は恋愛対象から外してくださいね。最近ご近所の五年生の女の子から告白されたらしいですが。」
「なっ、なぜそれを?最初から入れとらんわっ!まあ、とりあえず訓練終わってから考える事にするよ。」
「それがいいですね。無駄口で体力使うわけにもいきませんし、では行きましょう。」
二人は少し重い足取りながらも訓練室に戻り、再び命の危機感じつつもなんとか耐えていくのであった。
そして訓練期間であった一ヶ月も終え、訓練室には達成感に満ち溢れている二人が立っている。その姿はこの一ヶ月で変わった様子はないが、中身はようやく0班に染まろうとしていた。
「長かったな。何度河原らしき所から爺ちゃんにおいでおいでされた事やら。危なく手を取り合うとこだったぞ。」
「たしかあなたのお爺様はどちらとも健在だったはずですが。勝手に亡きものにするとお父様に蜂の巣にされますよ。」
「大丈夫だ。その前に爺ちゃんにボッコボコにされるからな。たしか爺ちゃんの特技は【雷落とし】だったはずだ。拳骨と一緒に感電までするらしいぞ。」
「それは是非とも特局にスカウトしたい要員ですね。年齢制限は上にはないはずですし。」
そこにゆっくりと上下皮の服に身を包み、少し長めの髪をオールバックにした細身の男が、見た目にそぐわない重量感のある足取りで歩いてくる。この男こそが0班の班長、安斎 慎介 特技【サイボーグ】であった。
「今日の相手は俺だ。最終試験みたいなもんだから手加減は必要ない。不合格なら元の班に戻ってもらうぞ。」
その言葉に勇司は一瞬、戻りたいという気持ちが頭にちらついてくるのであった。




