異動
異動
勇司と久信は二人で普段と少しだけ違う光景に戸惑っていた。手狭なはずの26室に余裕を感じ、軽いダンスくらいならば踊れそうである。
「久信、これは新しいイジメか?それとも、もしかして我らは首なのか?慣れ親しんだ机君がいないぞ。」
「たしかに私のデスクも見当たりませんね。これは一体?・・・勇司さん、もしかしてやってしまいましたか?だから言ったではないですか、幼女は駄目だと。まずするのであれば、人を巻き添えにするのはよくないですよ。」
「誰が何をしたっつうんだよっ!最近女性に触れたといえば、この前霰を攻撃を避ける際に腹の上に乗せたくらいだな。」
「単なるセクハラですね。こんな所で罪の告白されても困ります。」
苛立ってきている勇司を久信はあしらいながらも、二人は訳の分からない状況を掴みそこねていた。
そこに元を始めとする26班の面々が戻ってくると、所在なさげに立っている二人を見つける。
「二人共、とりあえず退院出来てよかったな。とりあえず元気そうで何よりだ。」
「おかえりー、もう退院出来たんだね。勇司くんも久信くんもありがとっ。」
「おつかれっす。お見舞いで持っていったプロテインが効いたっすね。」
「勇司先輩も久信先輩もおかえりなさい。」
皆の言葉から現状の説明が一切ない事に、勇司の不安が増してきていた。
「なあ親父、これは一体どうしたんだ?俺の居場所は一体?」
「ちなみに勇司さんはなぜ机が無いのかと言うことを言いたいようです。私のも見当たりませんが。」
元は一瞬首を捻りかけるが、すぐに意味を掴みポケットの中から二枚の紙を出し二人に渡す。
「んっ?何だこれ?」
その紙の一番上には辞令と書いてあり、二人の名前の後に0班への異動と書かれており、一番下には局長である勝義のサインと元のサイン、そして見慣れない名前のサインが書き込まれていた。
「辞令だ、よかったな。給料が心持ちあがるぞ。割に合わないが頑張れよ。」
二人は辞令に目を通していたが、勇司は難しい顔をしながら元に辞令を返す。
「悪いんだが親父、まだ何かと実力不足な予感がする。そしてこの26班が結構好きだし気に入ってるんだよ。だからこの話し丁重に断っといてくれ。」
皆の視線が話す勇司に集まっている中、勇司の頭に元からの拳骨が落ちてきて、乾いた音が26室内に響く。
「お前にそんな自由があるかバカ息子が。辞令だぞ、辞令。机ごともう0室に送ったから早くいけ。」
頭頂部を思わず押さえながら、勇司は呟いた。
「ですよねー。」
もちろん同じビル内と言う事もあり、送別会も行われることなく26班の面々に見送られ、二人は荷物もなく辞令片手に地下へと階段を降りていく。
「まさか0班とはな。予想外な異動だよ。結構26班お気になのは本当だったんだけどな。」
「私も気持ちは同意見ですが、あなたと一緒だとおもうと気持ち悪いので意見を変えていただきたいですね。そして異動は仕方ないですが、まさか0班とは驚きです。」
「やっぱりそうだよな。俺0班の皆さんと仲良くできる自信ないぞ、ファンキーな人多すぎるし。」
「勇司さんはファンキーなロリコンですのできっと大丈夫ですよ。心配なさらずとも、元々仲の良い人なんていないじゃないですか。」
「ロリコンちゃうわっ!そして皆様と仲良くしとるわっ!」
そして二人は階段から出て少し薄暗い廊下を歩くと、他の部屋とは明らかに造りが違う金属製の頑丈そうな扉の前に立ちドアノブに手を掛ける。
「じゃあ行くか。この階に来たのは久しぶりだな。特局初日に傘で刺された事を思い出すよ。あれっ?入る勇気が足りなくなってきたぞ。」
「そんなこと言わずにいきましょう。もちろん勇司さんからお先にどうぞ。」
二人は見た目どおりの重々しい音をたてる扉を開き、中へと入っていく。その先では二人のこれから先を暗示するかのような、呻き声が聞こえていり。勇司は危険を感じ、Uターンをしそうになる背中を久信に押され、0班としての第一歩を歩き始めるのであった。
【 第三章 異動編 完。】
無事第三章を完結させる事が出来ました。
なかなか無駄に長いお話しで、読んで下さった方お疲れ様です。
そしてすぐさま第四章に入ります。




