回復
回復
二人は追撃し更なる深手を与えようとするが足が止まり、思わず後退していく。目も耳も潰され、片足も使い物にならなくなっているはずの宮原に近付くのは危険だと、頭と身体が全力で警報を鳴らしていた。
「これはあまりよくない兆候ですね。勇司さん、幼女の事など考えている場合ではないようですよ。」
「そんな余裕があったら素敵だよな。これはもうじき0班などに来ていただけたら幸いだけど、そうもうまく行かないか。」
ジッと動かず身体の回復を待つ宮原の周囲をゆっくり回りながら攻めるタイミングを図るが、一度躊躇した足はなかなか前に出ていかない。
「身体の浅い傷は既に回復し始めていますか、目も同様ですね。」
「じゃあ早くなんとかしなきゃ不味いなんてもんじゃないな。出来る事からコツコツとか。」
煙草入れを開けて中身を確認すると、茶色の煙草を取り出し火をつける。その味に不快感を激しく感じながらも、思い切り吸い込み吐き出した。
【茶煙】
吐き出された茶色の煙は宮原に纏わりつこうと浮遊していくが、軽く鼻を鳴らすと煙を避けるように片足だけで横に飛ぶ。
着地点に向かって久信が銃撃するが、四足で着地し更に跳ねるような動きで後ろに下がっていく。
「匂いには敏感ですね。勇司さんの特技は臭い過ぎですし、そして撃つタイミングも読まれましたか。」
「しょうがないだろ、煙草だぞこれ。・・・そういえばいいものがあったような。」
煙草入れを開け中から、水色の煙草を取り出し火をつけた。吸い込んだ煙からは爽やかな清涼感と一緒に、強すぎる清涼感が舌を襲ってくるが勇司は我慢と共に飲み込む。
【水色煙】
吐き出される水色の煙を勇司は自ら浴び、気味悪そうに見ていた久信にも有無を言わさず煙を浴びせかけた。
「勇司さん何するんです?撃ち抜いてから訴えますよ。」
「まず最初に撃つなよっ!この煙いい感じに御利益あるんだぞ。」
「御利益なんてどこにも・・・。」
久信の身体には夏の暑い時期の冷たいシャワーを浴びたような爽快感が訪れ、その効果は服にまで及び付いた臭いをかき消していた。
「これはもしや消臭効果ですか?相変わらず不可思議な特技を使いますね。この調子だと煙で幼女を作り出したとしても驚きませんよ。」
「誰がそんなもん作るかっ!とりあえずしばらく任せた、今は少しこの煙草のせいで少々気持ちが悪めだ。」
未だ身体の回復を待つ宮原は聴覚の回復を捨てその分を視覚に回し、嗅覚と周囲の空気の流れに最大限の注意を払っていたが、突然感じていた匂いが消える。
(どうした?雰囲気的に逃げたわけでもないみたいだが。目はもう少しってところか。)
その時宮原の身体に電流が走り、更に傷付いた脇腹に至近距離から銃撃を受ける。思わず銃撃の方向に拳を振るが、拳が空を切ると壊れた膝にさらに蹴りを入れられた。
しかし宮原は動じることなくその場に立ち、動く事なく久信の攻撃を待つ。スタン警棒とハンドガンで攻撃を加えるたびに、宮原は攻撃方向を読み反撃の爪を伸ばす。
少しずつ宮原の攻撃は正確さを増し、久信は攻撃の機会を失っていくとロングコートに爪が当たり傷が増えていく。
そしてついにハンドガンの弾が切れ、スタン警棒が爪により破壊されると宮原はゆっくり目を開けた。
「こっからはこっちの番だよな。」
目から血を流し、舌なめずりをしながら笑みを浮かべる宮原の残った目は、確実に久信を捉えているのであった。
イマイチこの話のいい締めが思いつかないまま書き連ねてています。なかなかに悩みどころです。




