痕跡
痕跡
ワンボックスが順調に進んでいくと、徐々に回りは木々に囲まれてきている。既に道路の舗装もなくなり、砂利道を走っているがワンボックスの優秀なスプリングは衝撃を吸収し、あまり不快感を感じる事なく進んでいた。
しかし前方に道と呼べるものがなくなり、ワンボックスは止まるとエンジンを止めた。
「ここからは歩きだな。そこまで遠くはないはずだ、行くぞ。勇司前に出ろ。」
勇司を先頭に六人は歩きだす。元から渡されたナタを片手に勇司は道を切り開いていくが、慣れないナタに悪戦苦闘するものの、案外とあっさり予定の場所に到着する。
「本当に近いんだな。なんかイメージだともっと山奥だと思ってたよ。」
「しいたけ栽培農家の方が発見されたそうです。そこまで人里離れた場所というわけでもないですね。」
六人が到着した場所が本藤兄弟が発見された場所であり、まだ生々しい血のあとがべったりと草木に残されている。
「なんでこんな場所なんすかね?確かに山の中っすけど死体隠すわけでもないって意味ないっすよね。」
「確かにそうだよなー。こんなとこで何してたんだろうな?」
雄山と勇司の会話をよそに、久信は周囲を歩きながら見落としがないよう慎重に見渡していく。地面を見るが、すでに警察によって捜査された後であり無数の足跡が見てとれる。更に見回し、他の痕跡を探していった。
「あのお二方が無傷でやられたとは考えにくいのですが・・・。ありましたね、二人を倒した後こちらへと行ったわけですか。」
久信は背丈の高い草木に少しだけついた血液を発見するが、その先に血のあとはすぐになくなり足跡すらのこっていない。
「さすが狼ですね、ほとんど痕跡もありませんか。もう少しだけ追ってみますか。」
久信は戻り、元に伝えると勇司と二人で藪の中へと足を踏み入れ、先へ先へと進んでいく。
「勇司さんお供のお礼です、これをどうぞ。」
投げられた球状の物は、コントロールよく口元に飛んできて、思わず勇司は口を開くと見事に飛び込んでくる。そのまま咀嚼し飲み込もうとするが、独特過ぎる風味になかなか喉を通っていかない。
「なんだこれ?クセが強いにも程があるだろ。嫌いっちゃ嫌いだな。」
「そうですか?チーズから切り剥がしたカビを寄せ集め上新粉、お湯、砂糖と混ぜ合わせお団子にしたカビダンゴなのですがこれは失敗ですね。」
勇司は後味の悪さに顔をしかめながらも、気になる味わいになぜか心がもう一つもう一つと求めている。しかし体は求めていないらしく、持ってきたペットボトルの水を全て飲み切り、未だカビの独特な口の中の臭いが全く取れていない。
「こりゃあ、あと引く最低な味だな。なかなかにたちが悪い。」
「それは申し訳ありませんでした。それにしても少し妙ですね、普通であればとっくに痕跡など消えているはずなのですが。もしや誘われていますか?」
二人は警戒しながら周りを見渡すが、怪しい気配は感じられず鳥の鳴き声と、うっすらカビの臭いが辺りを包んでいる。
「なんもないか。どうする?一旦戻るか?」
「一応連絡だけして、まだ痕跡を追いましょう。これ以上時間が経つともう追えないと思いますしね。」
そして無線でワンボックスに戻っている元に連絡を入れると、二人はわずかに残る痕跡を追いながらさらに山の奥へと入っていくであった。




