待機時間
待機時間
その日26班は待機時間の真っ最中であり、26室内では少しゆったりした時間が流れている。元は所用でこの場を外しており、他の26班の面々は思い思いの過ごし方をしていた。
筋トレでパンプアップし更に身体を大きく見せる雄山、デスクに座り何やら夢中で粘土をいじる拓実、慣れない手つきで爪の手入れをする霰、皆を見つめる勇司を気味悪そうに見る久信などを眺めながら、勇司はデスクに頬杖をつき少し笑みを浮かべていた。
「勇司さん、何か悪いものでも食べましたか?道端に落ちているものは食べちゃ駄目だとあれ程言ったではないですか。我が家のカメですら、最近自分でご飯を瓶からちゃんと皿に移して食べる事を覚えたというのに。拾い食いは良くないですよ。」
「食っとらんわ!そしてなかなかに優秀なカメさんだな。なんつうかこの待機時間っつうのは平和でいいなと思ってただけだよ。」
久信も見渡し、周囲の平和な光景を見ると軽く頷く。
「たしかにそうですね。要請もなく、この時間が続くのは悪い事ではないですが、皆さんまとまりはないようですよ。」
雄山はあと一回あと一回と永遠の筋トレが続いており、拓実は作った粘土のカバが良い出来だったらしく恍惚の表情浮かべ、霰は爪に塗るベースコート液が溢れ、てんやわんやしている。
「まあ、それもこの班らしくていいじゃないか。噂に聞いたんだが、どこかの班で殉職者が出たんだろ。そんな話しを聞くとなおさらこの時間がいいよな。」
「確か15班の班長、鈴白さんでしたね。確か特技は【カミキリ虫】だったと記憶してます。職場が職場ですが、割り切れるものでもないですね。」
「そうだよな。とりあえず雄山に負けずに鍛えるのが近道か、だけど俺があれやったら逆に体壊しそうだな。」
そして何事もなく待機時間が過ぎ、元も26室に戻るとその日は解散となる。
しかし、この26班のメンバーで平和な待機時間を過ごすという勇司の希望は叶う事はなく、この日が最後となるのであった。
三章最後の事件のスタートです。少しばかり長くなりそうですがお付き合いしていただければ幸いです。




