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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第三章 異動
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脱臼

脱臼


勇司の目の前の男は、厳つい顔をほころばせながら腕に力を込めている。勇司は思わず目を擦り確かめるが、勘違いではない。

只でさえ太かった腕が二倍程度にまで膨れ上がり、体のバランスがおかしな事になっている。


更に目を擦って再び確かめると、その腕は十分過ぎる程太いものの、元の体に戻っていた。


「なあ久信、見間違いって事はないよな?」


「ええ。雄山さんの特技が近いでしょうか。しかし先程のは雄山さんと比べても違いが大きいですね。」


「あれと戦うのは気が進まないな。俺の原付きのタイヤぐらいの腕してたぞ。」


「安心して下さい、勇司さんの原付きのタイヤより数センチ太かったですから。では頑張って下さい。」


向かい合い勇司は一応構えてみるが、立っているだけの村重の迫力に後退りしたくなる気持ちを抑えて、足を前に出す。


しかし出した足が自らの意思に背き軽く震えているが、下半身に持ち合わせている根性の五分の四をつぎ込むと下半身の震えは収まり、上半身は力が抜け落ち着いた立ち姿を見せる。

すると一部始終を眺めていた村重は、軽く驚いたような表情を浮かべていた。


「ほう。思っていたよりもやるが、まだ名前を覚えるほどでもないか。じゃあどっからでもいいぞ。」


煙草入れから白い煙草を取り出し、勇司は咥えると火をつけた。白い煙を吸い込み一気に村重に吐き出す。


【白煙】


白い煙は村重の顔面に吐き出され、そのまま顔の周囲に漂い続ける。さらに銀色の煙草を咥え、白煙の火種を咥えた煙草の先にくっつけ一息吸うと火が移りそのまま銀色の煙を吸い込んでいく。


【銀煙・連拳】


吐き出された銀色の煙は、勇司と同サイズのいくつもの拳になりながら村重の胴体に殺到していき、全てがヒットするがその体にダメージは全く与えられず拳は霧散していった。

そして顔の周りの白煙が消え去ると、村重の笑顔が再び見えてくる。


「まあまあ変わった特技でいまいち温い攻撃だな。これで終わりって言ったら少し怒るぞ?」


一瞬変わった村重の表情を敏感に感じ取り、すぐに銀煙をさらに吸い込み一気に吐き出した。


【銀煙・大拳】


先程と異なり吐き出された煙は一つにまとまり、バスケットボール程度のサイズの拳に形作られる。

一気に顔面目掛けて飛んでいく拳を、村重はまばたき一つせず顔面で受け止め太い首で衝撃を吸収し拳は消え去っていった。村重は首を軽く回し、楽しそうに何度か首の筋肉を伸び縮みさせると更に攻撃を催促するように促す。


「今のはまあまあだったな。だけど次にいこうか、これぐらいじゃ筋肉があったまりもしないぞ。」


攻撃に対し防御すらしない村重を見て、勇司は嫌々ながらも次の煙草に火をつけていく。


【真銀煙】


銀色に輝く煙を上空に吐き出し、その煙が雄山体に降りてくるとその煙を身体に纏わせていき、手には銀色に輝くグローブ、そして足にはレガース、更に肘当て膝当てまでもが装着さてていた。

勇司は走り出すと飛び込み、勢いの乗った右ストレートを顎先に叩き込む。見事に拳は狙った場所を捉えるが、村重の顔の位置は一切動かない。さらに顎との衝突に負けた真銀煙は煙に戻っていった。


驚く暇もなく残った左のグローブで牽制代わりのジャブを入れ、村重に踏み込むとローキックを太もも目掛けて打ち込もうとすると、村重が怖い笑みを見せる。


「そこを選択するのはよくないな。」


太ももに勇司のローキックが入る瞬間に、村重の太ももの筋肉が膨れ上がり迎え撃つ。真銀煙のレガースは砕け散り、勇司の蹴った足は弾き飛ばされ、勇司は着地しようとするが足に力が入らず尻から後ろに倒れ込んだ。

立とうとする勇司を久信が止める。


「これは完全に脱臼ですね。股関節が馬鹿になっているようなので、動かないほうがいいですよ。行くというなら止めませんが。」


勇司はなぜか村重に脇の下に手を入れられ、抱っこで椅子まで運ばれると大人しく座っている。村重は多少申し訳なさそうにしながらも笑い、謝罪していた。


そして久信が自分の出番とばかりに、ストレッチをしていると銀行の自動ドアが開く。


そこには髪の毛をぴっちり七三分けにしたスーツ姿の妙に姿勢のいい中年男性が、普通に銀行に入ってくるように三人を見ながら歩いてくるのであった。




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