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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第三章 異動
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心の壁

心の壁


火の海の中へと飛び込んだ二人と一体ではあるが、最初の扉の前でいきなり途方にくれている。三人は会議を行っているが、勇司に読唇術の覚えはなく会議は難航どころか、完全に座礁していた。


「東華さん、何かいい手段はありませんか?」


何やら小さく呟く東華の口元を勇司はじっくり見つめてみる。


(えとえと、カマ飯の中にマヨネーズだと?どういう意味だ、こりゃ?)


「俺はカマ飯には鶏と栗とかが好きですよ。これはわっぱ飯だったか?」


東華は意味が分からなかったのか、きょとんとした表情を浮かべながら、首を横にふっていた。

すると粘土人形が身振り手振りのオーバーアクションで、何かを伝えてくる。


「粘土君なんだい?えーとっ、くるぶしから虹が出て、コンプライアンスがサプライズにチェーンデスマッチだって?」


粘土人形は違う違うと手を左右にふっているが、勇司には惜しくも伝わっていないようだ。伝えることを諦めた粘土人形は一歩前に出て二人を下がらせると、ない袖をめくるような動作を見せ、残った腕を扉へと伸ばした。


周りに張られた透明の壁から粘土人形の腕が出てきて、周りの熱によりバラバラと砂が落ち崩れ始める。素早くドアに手を伸ばし、ドアを開けると同時に腕は砂に戻り落ちていった。


「粘土くーんっ!」


勇司の叫び声は炎の燃える音にかき消され、粘土人形は無くなった両腕を見つめている。そして無くなった腕同士でポンッと叩く動作を見せると、失った腕がすぐに生え、ほんの少しだけ体のサイズを小さくしていた。何かを確かめるように両指を動かし、勇司と東華に綺麗なサムズアップを決めると先へと進んでいく。

勇司は小さく呟いた。


「じゃあ片手の時点でやれよな・・・。」



粘土人形は先頭を進み、様々な場所を覗き込んでいる。勇司と東華は後に続くと、粘土人形は防火扉に体当りし、そのまま開けると地下への階段に入った。すでに階段にも煙が充満しているようで、慎重に降りていくが煙の中でも勇司の視力は衰えることなく先を見渡す。


(これは初めて気付いた我が特技。もしや天職は消防士だったのか?それよりも何かというか誰かが倒れてるな。)


「東華さん、ここ多分熱くないですよね?俺と粘土君の壁を一回外してください。粘土君行くぞっ!」


東華は頷き壁を解除すると、粘土人形と勇司は走り寄っていく。そこには制服を着た警備員が倒れており、苦悶の表情を浮かべながら意識を失っていた。


「これは定番でいくと一酸化炭素中毒か?そうなると俺も不味いじゃないか。」


雰囲気にあてられ勇司は何かしら呼吸が苦しくなってきた気がするが、あくまでも気の問題であり勘違いであった。


(あれっ?これすらも大丈夫なのか。やっぱり消防士に転職するしかないなこりゃ。)


粘土人形が警備員を担ぎ、再び壁に包まれると先へ進んでいく。すると粘土人形に代わって先頭を歩く勇司は、再び倒れている人影を発見し走り寄る。


「これは駄目か。つうか火災関係ないな、これ切り傷だよな。」


倒れてる白衣の人物の首元には、一直線に深い傷がつけられており、多量の血液が流れ出した跡があった。

その時粘土人形に担がれていた警備員が、意識を取り戻す。


「・・・今まで何を?早くいかないと主任がっ!」


少し暴れると警備員を粘土人形は肩から降ろすと、警備員の視界に血にまみれた白衣の人物が目に入った。


「主任・・・。」


走り寄ろうとし、透明な壁から出ようとする警備員を粘土人形が止めている。そして白衣の人物を見ていた勇司が話し掛けた。


「警備員さん、特局の者です。この方は?」


「研究主任の巻さんです。巻さんは何者かが侵入してきた時も一人毅然とした態度でおられました。しかし他の研究員は怯えてあちらの言いなりに、私もすぐに気絶させられてしまって。」


周囲を見渡すが他に人影はなく、警備員によると保管してあった様々な新薬も見当たらないらしい。


未だ足取りの定まらない警備員と、主任の遺体を粘土人形は担ぎ、ラボの出入り口を目指して上へと戻っていく。少しずつではあるが火災は鎮火に向かっているようで建物内には消防士の姿があり、逃げ遅れた人がいないかの確認が進んでいる。


外に出ると待っていた救急隊に警備員を渡し、すでに捜査にあたっていた警察に遺体を渡す。


そして全員はワンボックスに戻ると、ここで捜査を切り上げ特局へと戻る事となった。


「なあ親父、色々と腑に落ちねえな。」


「何がだ?捜査はこれからだろ。まあ、色々と出てきそうだな。しばらくは警察に任せて何かあったらまた呼ばれるだろ。」


勇司はハンドルを握りながら、ラボの様子を思い出し様々な考えが頭の中を巡っている。


「なんつうかな、この事件あの脱獄された時に似てないか?」


「確かにな。その行方不明の研究者三名が連れ出される所を誰も目撃していないし、似てるっちゃ似てるか。それよりも問題は盗まれた新薬のほうだな。」


元の言葉にラボの中で東華が撮った写真をずっと見ていた久信が続く。


「そうですね。この写真を見る限り、今回の容疑者は新薬だけでなく、データも全て持っていったようです。しっかりとした目的があったとしか思えませんね。」



そしてワンボックスは特局へと戻ると、捜査終了と同時に解散となることになった。東華は笑みを浮かべながら、皆を見つめている。


「東華ちゃん、今回はありがとな、またよろしく。そっちでも何かあったら26班を指名してくれ。」


そして元は東華に軽く頭を下げ、残りの仕事を済ませに去っていく。そして久信、雄山、拓実は何やら口を動かすと、東華は微笑み何も聞こえない呟きを返すと、三人は帰っていった。


その場には三人が残され、無言の空間が包んでいる。

言葉で別れを告げる事を諦めた勇司は、足を踏み出し東華に近付いていく。そして目の前まで行き右手を差し出すと、おずおずと東華も右手を差し出すがその時、東華の特技が発動する。


【心の壁】


勇司は吹き飛ばされ地面を転がっていく様子を、驚きながら霰と東華は見つめている。

東華の心の壁は一日では、勇司に開く事はなかったようである。




何か非常に内容を脳みそから絞り出しにくい話でした。おかしなところ等あれば指摘などなどをお願いします。

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