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特技の使い方 〜吸えない煙草〜  作者: cozy
吸えない煙草 第三章 異動
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火事場

火事場


勇司はワンボックスのハンドルを握りながら、助手席に座る霰と共に疎外感を感じていた。後部座席では五人による無言の会話が繰り広げられ、なぜか笑い声までもが無言で行われている。


「なあ霰、今読唇術って流行りなのか?」


「そうなのかな?あたし乗り遅れてるのかも。」


東華、久信は言うに及ばず元、雄山、拓実までもがお互いの口の動きを読み合っている姿をバックミラーで眺めながら、勇司は考えていた。


(なんだこの状況?まずなんで読唇術ができない方が少数派なんだよ。)


ワンボックスは苦労して来た道を戻りながら、車内では静かな盛り上がりを見せている。


「なんでお前らまで読唇術できるんだよ?特に親父っ!」


「そんなこと言われてもな、紳士のたしなみってやつだろ。こんなのは日常生活で身につけるもんだよ。」


元の言葉に納得できずにいると、さらに後ろから声が聞こえてきた。


「そうっすよー。自分は親父の付き人に出来る人がいて、たまに教えてくれたっす。」


「僕はクレイアニメ作る時に、口元の動きを調べてたらいつの間にか出来るようになってました。」


雄山と拓実の納得いく説明を聞き落ち着いて運転に戻るが、未だに続く五人の無言の会話が気になり、バックミラーをチラチラと覗き続けていた。すると横から袖を軽く引っ張られる。


「ねえねえ勇司くん、一緒に読唇術教室に通わない?」


「そりゃあいいな。そしたらみんなで無言パーティーができそうでいいよな。月謝次第ではあるけど。」


そして車内は静かなまま、ラボまで数百メートルという所に近付くと、向かっている先に火柱が上がり、黒い煙が立ち昇っていた。


「こりゃあなかなかに大惨事じゃねえか?」


「そうだねー、サイレンがいろんな所から聞こえてきてるかも。急がなくっちゃ。」


ワンボックスはサイレンを鳴らしながらラボの前に到着すると、すでに何台もの消防、救急関連の車が殺到しており騒然とした雰囲気に包まれている。ラボの職員達が火に包まれている建物を眺めながら、呆けたように立ち尽くしていた。

元はススに塗れた職員の肩を掴み、気をはっきり持たせるとすぐに消防士と共に、ラボの関係者の安否確認に入っていく。


「こりゃあ不味いぞ、明らかに人数が足りないらしい。中に取り残されてるのかどうかも分からないが、研究者が四人に、警備員が一人の姿が見えないそうだ。」


「それは明らかに不味いじゃねーか。どうするんだ?消防士ですら火の勢い強すぎて入れてないぞ。」


何台もの消防車による放水は行われているものの、火の勢いは弱まるどころか時折起こる爆発により、さらにその火の勢いを増していた。


「よし、やっぱり突入しかないか。この中に入るとなると、俺じゃ無理だな・・・。」


元はメンバーを見ながら悩み、選抜していく。




燃え続けるラボの正面入り口には東華、勇司、粘土人形が並び、中から感じる熱に思わず勇司と粘土人形は表情を浮かべていた。


「こりゃあ熱いな、粘土君よ。」


粘土人形は持たされていたペットボトルの水を体にかけ、乾燥を防ぎながら激しく頷いている。

しかし東華は一人涼しい顔をしながら特技を使う。


【心の壁】


勇司と粘土人形をドーム状の透明な壁が包み込むと、今まで感じていた熱すらあまり感じられなくなってくる。軽く叩いてみるが、その壁は薄いものの簡単には壊れそうにもない。そして火元へと近づいていく。


「凄いっすね、東華さん。じゃあぼちぼち行きますか。」


返事代わりに東華は涼し気な笑みを浮かべ、粘土人形は元気に手を上げて答える。

手を上げた途端に透明な壁の外側に出た粘土人形の手は焼け落ち、右手を失った粘土人形は慌てふためいていた。


スタートから躓き、前途多難な捜索になるなと感じながらも、二人と一体は燃え続けるラボへと進入していくのであった。




困った。なぜこの三人になったのだろう?主人公しか喋れないぞ・・・。

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